第67話 領主7
意識が少しずつはっきりとしてくる。
目を開けようとすると誰かがキスをしてくる。目覚めのキスなのかなと思っていると舌が入ってきて、口の中を蹂躙してくる。
いや、目覚めのキスにしてはハードじゃない。目を覚ますとタイミングを逃してしまったので、ことが終わるのを待つことにする。
‥‥長い!
いくらなんでも長くない?
もう体感で10分は経過したような感じだ。
さすがに唇が痛くなってきた。
それにしても、こんな情熱的なキスをしてくるのは誰だろう。
本命は明日香だけど、大穴で緋莉かな。
これでコルベルトだったら舌を噛み切ってやる。
俺は思い切って目を開ける。
するとキスをしている相手と目が合ってしまう。
シャール「やっと目を覚ましてくれた‥。私の初めてのキスなんですからね。」
頬を赤らめいるが、目からは涙が溢れ出す。
俺はそっと抱きしめる。
イチロー「体調はどう?調子悪くない?」
シャール「体調はイチロー様のおかげで、すっかり良くなりました。」
イチロー「メイドさんの件は、間に合わなくてごめんね。」
シャール「イチロー様が悪いわけでは、ありません。」
シャールが体を震わせて泣いている。
そらからシャールが落ち着くまで、頭を撫で続けた。
シャール「アユルは私が物心つく頃からそばに居てくれたメイドでした‥。とても優しくて綺麗な私のあこがれの女性でした。
それがいつの間にか、入れ替わっているとは‥。全然気が付きませんでした。ずっと一緒にいたのに気がつかないなんて‥。」
止まっていた涙がまた溢れ出す。
イチロー「これからどうするの?」
シャール「アユルの仇を取ります。お姉様も危ないので、急ではありますが今から王都に戻ります。」
まだ14歳なのにしっかりしてるよね。
本当は一緒に行ってあげたいけど、ここからは俺のやることではない‥。
俺が辛そうな顔をしていると、シャールがキスをしてくる。
シャール「イチロー様、ここでお別れです。短い間でしたが、ありがとうございました。」
そう言うと、名残惜しそうに去っていく。
その後、明日香が部屋に入ってくる。
俺は両手を広げて、「おいで」と言う。
イチロー「ごめんね、心配かけて。それに嫌なこともさせてしまった‥。夫失格だね。」
明日香「心配したんだから‥。あんな事二度と御免だわ。」
明日香が俺の胸で泣きじゃくる。
イチロー「シャールに俺を起こすのを譲ってくれたんだね。」
明日香「べ、別に可哀想だとか思ったわけじゃないからね。ちょっと用事があったから席を外しただけ‥。」
俺は明日香の頭をヨシヨシする。
すると明日香は嬉しそうに目を細める。
イチロー「そろそろ家に帰ろう。ちょっと疲れたよ。」
明日香「早く帰ってゆっくりしましょう。」
俺は立ち上がって、コルベルトさんに挨拶しに向かう。
コルベルトさんはシャールと王都に向かった為、不在であった。
コルベルトさんの執事さんが用意くれた馬車に乗り、家に帰ることにした。
帰りの車内で、あることに気がつく。
イチロー「あっ」
レイペル「どうした?」
イチロー「冒険者ギルドに依頼達成の報告するの忘れてた。」
ゾン「それなら既にすませている。」
イチロー「あれ、冒険者カードも採取した薬草とか全部収納してたはずだけど‥。」
ニーナ「緋莉様と明日香様は、イチロー様の収納から自由に取り出せるみたいです。
羨ましい‥。」
何それ、初めて聞いたよ。
明日香「全部ではないけどね。何か厳重に管理された場所があって、そこだけは取り出せないんだよね。あそこって何が入ってるの?」
明日香がとんでもないとこを聞いてくる。
アソコって例の記念品があるところだ。
明日香に耳打ちする。
明日香「ば、馬鹿じゃないの?そんなのとって何に使うの?」
イチロー「観賞用?」
明日香「わ、私の見たら殺すから!!」
明日香が胸ぐらを掴んでくる。
ほんと可愛い嫁だよね。
イチローは家を目指すのであった。
イチロー「じゃないよ!!」
イチロー「何で普通にレイペルがいるの??」
レイペル「さすがに、その言い方は傷つくな‥。」
イチロー「俺がこの世界の人間じゃないから、嫁ぐのは無理っことになったよね?」
レイペル「いつ、誰が無理って言ったの?勝手に捏造してない?」
明日香「とりあえず帰って家族会議だわ。」
えー、今日は帰ってゆっくりしたいよ。
明日香「それは無理だわ。レイペル以外にも、そこの刀にも用があるからね‥。」
げっ、刀の事バレてる‥。
今更ながらに帰りたくないと思うのであった。そんなイチローを載せて馬車は進むのであった。
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