第63話 領主3


ニーナ「イチロー様、大丈夫でしょうか‥。」


明日香「そもそもイチローが、お姫様を覗いたのが悪いのよ。まぁ、死罪にはならないと思うけど‥。ゾンは領主と面識ないの?」


ゾン「領主は最近代わったようで、新しい領主とは面識がないんだ。力に慣れなくてすまない。」

ゾンが頭を下げる。


明日香「頭を上げて。私も言い方がわるかったわ。ごめんなさい。」


ニーナ「無事だといいのですが‥。」

ニーナの狐耳がピクリと動く。


ニーナ「誰か来ます。イチロー様の足音ではないようです。」


明日香「あたな、イチローの足音の区別がつくの?」


ニーナ「はい、もちろん他の皆様の足音もわかります。ただ緋莉様、ステア様は足音がしないので‥。ステア様は匂いで何とかわかるのですが、緋莉様は匂いすらしませんので‥。」


扉がノックされ、コルベルトとレイペルが入ってくる。

2人とも走ってきたのか、少し息を切らしている。


コルベルト「待たせてすまない。少しイチローの事を聞きたいのだが、いいか?」

明日香達が誰?って顔をしている。

コルベルトがそれを察して紹介を始める。


コルベルト「すまない。慌てていたので紹介が遅れた。このスタットの領主をしているコルベルトだ。」


レイペル「私は領主の妹のレイペルです。」


明日香「それで聞きたいことって何でしょうか?」


コルベルト「イチローが言うには、自分が神様にこの世界に連れて来てもらった別世界の人間だと。」


明日香「本当ですよ。私もイチローの能力で呼び出された、別世界の者です。人間ではなく、この世界の精霊に近いですが‥。」

コルベルトとレイペルが驚いた顔をする。


明日香「イチローは本人に自覚はありませんが、使徒です。」

明日香の言葉にコルベルトが唾を飲む。


明日香「神様と自由に会話が出来るようです。本人はことの重大さがわかってませんが‥。」


レイペル「御信託ではなく、会話をするなんて‥。聖女を超えている。」


明日香「イチローには相手の未来が見える力がありました。こちらのニーナがその力で救われています。」

ニーナが頷く。


コルベルトが何かに気がつく。

コルベルト「ありましたって事は、今はないって事?」


明日香「神様にその力を封印させています。まぁ、使うとかなり身体を酷使するみたいですが‥。」


コルベルト「イチロー様には何か目的があるのですか?」


明日香「様付けはやめてあげて。絶対に嫌がるから‥。」

明日香が一呼吸置いて話をはじめる。


明日香「前世では、人を庇って死んで、そのご褒美にこの世界に連れてきてもらったようです。神様には自由に生きていいと言われたようで、本人は家族とゆっくりとした暮らしがしたいようです。ただ家族がどんどん増えて、のんびりとした暮らしとかけ離れていってるけど‥。まぁ、ハーレムを目指していたみたいだから問題はないでしょう。」

明日香がクスリと笑う。


コルベルト「話が大きすぎる‥。とりあえず王に知らせないと‥。」


緋莉「駄目。」

いきなり緋莉が何もない空間から現れて話し出す。

これにはコルベルトもレイペルも冷や汗をながす。


緋莉「イチは目立ちたくない。そっとして。」


明日香「この方は、神様近い存在です。」


緋莉「イチの妻。」

緋莉が無表情にピースする。


明日香「ちなみにこの方が本気をだしたら

この世界を滅ぼすことが可能です。」

コルベルトが息を呑む。


レイペル「兄様、イチロー様のことはそっとしておくことしか出来ません。ただ、私はイチロー様の事を聞く前に嫁ぐ事を決めていましたので、そのまま嫁ごうと思います。兄様もイチロー様と仲良くした方が良いと思うます。」


緋莉「嫁の件は保留。領主はイチの友達になってやって。」


レイペル「保留ですか?」


明日香「嫁会議の承認が必要だわ。」


コルベルト「嫁ぐ件はまかせるよ。とりあえずイチローのところに戻らないと。そろそろ退屈しているだろうからね。」


緋莉「帰る。」

そう言うと緋莉が消える。


みんなでイチローのいる部屋に移動する。

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