第62話 領主2


お父さん、お母さん、ピンチです。

ほんの数センチ先に剣が突き立てられてます。


コルベルト「何か申し開きはある?」

イチロー「何もございません。」


コルベルト「冒険者になりたいと家を飛び出したかと思ったら、怪我人を連れて戻ってくるし‥。」

顔は笑っているが、目が笑ってない。


コルベルト「本当はこのまま帰すつもりだったけど、部屋の会話を聴かせてもらったよ‥。」

ごくりと生唾を飲む。


コルベルト「レイペルは、僕の妹でね。僕がこの地に領主として赴任したら、早々に王位を捨て、着いてきたんだよ。その後、ここの騎士団で腕を磨き、今日から冒険者を始めたんだ。」


コルベルトさんがニッコリ笑う。

その笑顔が怖いんですけど。


イチロー「すいません、レイペル様の事を男と思っていたので、鎧を綺麗にしてあげようと近づきました。ただ、レイペル様の心に傷を負わせたのは事実。首を差し上げたいのですが、妻と子供が待っていますので、腕一本で許してもらえないでしょうか?」

俺は左腕を前に突き出す。


コルベルト「本気かい?」

イチロー「はい。」


コルベルトが剣を振り上げる。

そして、剣を俺の左腕に振り下ろす。

思わず、目を閉じる。

なかなか左腕に痛みがしないので、ちょっとずつ目を開ける。

剣は左腕の上で止まっていた。


レイペルが怺え切れなかったのかクスクスと笑いだす。

コルベルトは声を裏返して笑っている。


俺はこの2人に騙されたようだ。


その後、別の部屋に移動して、自己紹介を始める。


コルベルト「では、私から始めるよ。このスタットの領主でコルベルトだ。先程は騙して悪かったな。」

コルベルトがニヤリと笑う。


イチロー「本当に肝を冷やしました。生きた心地がしませんでした‥。」


レイペル「私は兄様‥、コルベルト様の妹で、レイペルといいます。これでも一応は女性ですので。」

レイペルは舌をペロッとだす。

うん、今のは可愛い、どストライクだった。


イチロー「Dランク冒険者のイチローと言います。この街に来て1ヶ月ぐらいになります。レイペル様とは今日、パーティーを組ませて頂きました。」


お互いの自己紹介が済み、他愛のない談笑が続く。


イチロー「それにしても、未婚の女性の肌を見ただけで、死罪になるというのは冗談が過ぎますよね。」


コルベルト「それは冗談じゃないよ。」

にこやかな表情だが、目は笑ってない。


コルベルト「まぁ、レイペルはもう王族ではないから、死罪は大袈裟だけどね。レイペルはどうしたい?」


レイペル「イチロー様には、身体の隅々を見られてしまいました。その責任を取って頂きたいと思います。」


イチロー「責任とは?」


コルベルト「口を封じるか、結婚かな?」

軽い口調で、とんでもないことを言い出す。


イチロー「レイペル様はそれでいいのですか?」


レイペル「あなたには全部見られたのですよ?今さら他に嫁げるとお思いですか?」

レイペルが涙目で訴えかける。


コルベルト「僕は君の事、結構気にいっているんだよね。出来れば殺したくないかな。」

お兄さんが脅してきた。


イチロー「私には8人も妻がいますよ。そんな男の元へ嫁げますか?」


コルベルト「8人が9人になっても問題なさそうだけど。」


神様、ごめんなさい。

僕は秘密をバラします、許して下さい。


『別に構わんよ。』


イチロー「コルベルト様、レイペル様、実は私はこの世界の人間ではありません。」

2人が目を見開く。


コルベルト「詳しく聴かせてくれ。」


俺はコルベルトとレイペルに、この世界に来た経緯などを説明した。能力などについたは、はぐらかした。


レイペル「部屋に残られてる方は奥様ですか?」


イチロー「はい。全員妻になります。」


レイペル「お話がしたいのですが、イチロー様は此処でお待ちいただいても宜しいでしょうか?」


イチロー「待つのは良いのですが、何を話したいのですか?」


レイペル「それは、秘密です。」


そう言うと、レイペルさんとコルベルトさんがいなくなった。


えっ、俺1人で待つの?


イチローは1人で待つ事になった。

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