第61話 領主1
目を覚ますと最初に目に写ったのは、心配そうに俺を見つめる明日香の顔だった。
イチロー「いゃー変な夢見ちゃった。レイペルって全身鎧をつけた人に冒険者ギルドで出会って、男性だと思ってたら実は女性だったんだ。しかも綺麗な金髪だから、アソコも金髪かと思ったら生えてなかったって夢。俺、毎日搾られてるから欲求不満でもないのにね。妙にリアルで面白かったよ。」
俺は少し声を立てて笑った。
ん、何か部屋の空気が重くなったような‥。
明日香「あんた、それ夢じゃないわよ。」
イチロー「そんなテンプレ展開、漫画じゃあるまいし、ある訳ないじゃん。明日香も冗談言うんだね。」
俺は明日香の肩を軽く叩いた。
レイペル「やっぱり、見たんだ‥。すぐに殴って気絶させたから、もしかしたら見てないかと期待してたのに‥。」
イチロー「明日香、この人誰?こんな綺麗な人、知り合いにいたっけ?ヒラヒラのドレス着てるよ。まるでリアルお姫様だね。」
俺以外の全員が、ジト目で見てくる。
ニーナ「イチロー様、レイペル様はこの国のお姫様だそうです‥。ちなみに我々がいるこのお部屋は、ご領主様のお屋敷の中にあります。」
俺がイマイチ状況を把握できないでいるとゾンが感情を殺した声で説明してくる。
ゾン「旦那がやらかしたせいで、みんなこの部屋に監禁されてるんだ。」
明日香「あんた分かってるの?未婚のお姫様のぴーーを見たのよ。良くて禁固刑、悪くて死罪かも‥。」
イチロー「あれは事故だよ。ぴーー見たぐらいで死ぬとかあんまりだ!」
明日香「王族のぴーーよ!そもそも王族は基本的に肌を晒すのはご法度よ。それをぴーーを見るとか‥。」
レイペル「いい加減しなさい!!当事者の目の前でぴーーぴーー、うるさい!!」
俺と明日香は土下座をして、謝る。
するとドアがノックされる。
メイド「コルベルト様が、お会いになりたいとのことです。御同行願います。」
イチロー「俺、レイペル様に殴られて傷が痛むので無理かな‥。」
メイド「イチロー様は必ず連れて来いとのことですので、ご了承下さい。」
俺は諦めてついて行くとにした。
みんなで向かおうとすると、メイドさんに止められる。
メイド「イチロー様とレイペル様のお二人だけです。他の方はこの部屋でお待ち下さい。」
明日香が殺気を出そうとする。
イチロー「大丈夫だから、大人しく待ってて。」
俺が手を上げて制する。
明日香「わかった。危ないと判断したら行くからね!」
イチロー「頼りにしてるよ。」
俺が明日香の頭を撫でると、嬉しそうに目を細める。
メイド「イチロー様、武器はこの部屋に置いていって下さいませ。」
たしかに、武器をもっては領主様には会えないよね。俺は刀を机に置く。
部屋を出ようとすると、刀が俺の体に引っ付いてくる。
メイドさんが目を見開いて驚いている。
ヤバイな、このままもって行くわけにはいかないし‥。
しょうがない、俺は刀に小声で話しかける。
イチロー「大人しくしないと、二度と血をあげないよ。」
すると刀がひとりでに机に移動した。
いや、それホラーだから。
メイドさんの後ろについて、長い廊下を歩く。さて、どうしたものか‥。腕一本で済めばいいけど。
巨大な扉の前に立つ。
この扉の向こうには、きっと怒り狂った領主様がいるのかなぁ‥。
いや、あえて冷静を装った領主様がいるのか‥。
さぁ、鬼が出るか蛇が出るか。
扉が開けられる。
一歩前に出る。
ん?眉間の数センチ先に剣先が突き立てられていた。
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