第22話 家探し1
ゾンさんの紹介で不動産屋へ向かう。異世界にも不動産屋あるんだ、驚きだ。まぁ、ないと好き勝手に作ったりしてカオス状態になるだろうね。
街の中央近くへ歩いて行くと家のマークのある看板が見えてきた。中央にあるという事は不動産業って儲かるのかな、何処の世界も同じだね。
店の中に入るとカウンターが複数見えた、さて誰に声をかけようかな‥。嫁がどんどん増えていっている、この状況で女性は避けた方がいいだろう。ということで男性の従業員に声をかけた。
年は40歳ぐらいで、眼鏡をかけた真面目そうな人を選んだ。それにしても、あまり文明が発達していないのに眼鏡はあるんだと驚かされる。
「いらっしゃませ、何か御用でしょうか?」
言葉は丁寧だし、相手を見下したような感じでもないようだ。
「この街で家を探しているのですが、いくつか条件があるので、貸家と持家の両方を探したいのですが、大丈夫でしょうか?」
「もちろん大丈夫ですよ。たまに条件もなく探しにくる人がいて、なかなか物件が絞れなくて時間だけかかる時もありますので‥。」
この人なかなか丁寧で話しやすい。
「とりあえず奥様たちの条件も聞きたいので、まずはあちらの個室に移動しましょう。」
「えっ?まだ自己紹介もしていないのにそこまで分かるんですか?」
「ゾン様からの紹介のイチロー様ですよね?ゾン様から紹介にあたり、詳しく伺っておりますので、ご安心下さい。」とニッコリ笑った。
「まだ名乗ってもないのによく分かりますね?」
「身体的特徴を聞いておりましたが、イチロー様と雪花様のお召し物が珍しいのですぐにわかりましたよ。正直にいえば、ゾン様に紹介される前から冒険者ギルドでのやり取りなど、いろいろな情報を集めていましたので。」
今度もニッコリと笑う。
不動産屋さん、コワ!えっ、いろいろバレてるの?というかそんな情報集める必要あるのかなぁ。
「物件が売り出される前から情報を集めて、他社に取られる前に交渉を進めるのがプロですので。もちろん、物件以外のありとあらゆる情報を集めておく事も忘れません。ささいな情報でも何かに役に立つこともありますので‥」
もうこの人、情報屋だよね?お金渡したらいろいろ教えてくれそう。
「集めた情報を売ることはありませんので、誤解のないように。」
心に思ったことが読まれている?
「ご心配なされなくても、相手の心を読んだり、増しては鑑定するような力はございません。イチロー様は少々お顔に出やすいようでしたので‥」
この人は敵に回したらダメな人だ。絶対仲良くしよう。
「バウさん、あまり私の旦那様をいじめないでくれないか?」
「申し訳ございません。あまりに素直な方でしたので‥」
「イチロー様も顔に出し過ぎですよ。もっとどっしり構えて下さい。」イリスに注意された。
とりあえず、細かい条件は後にして、大前提の条件を伝えることにした。
「予算は抜きにして、まずは広い物件が欲しいです。あと敷地内で畑を作りたいので、許可がもらえるところ。出来れば治安が良いところで、なるべく高い壁があると助かります。」
「家はあった方がいいでしょうか?」
「特にこだわりはないけど、最初の条件をクリアしてくれるなら建物はなくてもいいです?」
そうですかと頷くと、バウさんは物件の書いてある紙をめくっていく。
「商業地区の端なので治安は良いのですが、横に墓地があるのと、住んでいた貴族様が敗戦の責任を取らされお取りつぶしにされた縁起の悪い物件があるのですが‥。
すでにその時から100年は立っていますから建物は朽ちてると思います。壁については薄気味悪いと、もともとあった柵を壊して目隠しにしていますので高さは十分です。」
「何で100年もほっといたんですか?勿体なくないですか?」
「イチロー様は、あまりこの国のことに詳しくないようですので、お教えしますね。実はこの街は500年前まで王都だったのです。なので街の広さは私の知る限り他国を含めて一番だと思います。その後、内乱などあり、今の王都に遷都された訳です。街自体土地が余っている状態ですのでそこまでこだわる必要がない訳です。後は討伐が面倒なスライムが大量に住みついていて、何度も冒険者が挑戦しましたが、失敗しています。上級冒険者なら可能だと思いますが、下手に燃やしたりして、火事を起こすと逆に迷惑料を請求される恐れがあるので、そのまま放置されてきました。」
「ちなみに買い取るとして土地代は、おいくらですか?」
「燃やしたりせずに、周りに迷惑をかけずに綺麗にして、住んで頂けるのでしたら、本当は逆にお金を払いたいのですが、1Gでどうですか?あの土地が綺麗になるのであれば、あの物件のせいで開発が進まないあの地区を弊社が独占出来ますから‥」
バウさんから黒いオーラが出てきた。
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