第20話 どうしてこうなった


あの後、ゾンさんは何も言わなくなり、じっと俺の顔を見ている。とりあえずほっといてもよさそうなので、話を進める。


さて、どっちから話を進めるかなぉ。

ニーナさんにするか、カレンさんにするか‥。カレンさんのは話が重そうなので、ニーナからにするか。まずは、ニーナさんに話しかける。


「兎にも角にも、ニーナさんが無事で良かった。俺は何もしてないけど、カレンさんから話を聞いて心配してたんだ。」

「その件ですが、全てカレン様より話を聞きました。イチロー様がお力を使ってくれたとか?」

っておい!何で話しちゃうの?俺の力の事は秘密じゃないの?


「そんなに心配しなくても大丈夫です、誰にも話しません。」

よし、誤魔化そう。

「とりあえず、今後はどうするの?マツカゼに戻るとか?」俺がそういうとニーナさんが泣き出しそうな顔をした。

うっ、その顔はズルいよ、そんな顔をされたら俺が出来る事といえば‥。


「ニーナさんが嫌じゃなければ、俺と一緒に来る?まだ、住む家もないし、苦労かけると思うけど‥。」ニーナさんが泣きながら抱きついてきた。

「それはプロポーズととっていいですか?」

「出来れば、付き合ってみてから考えるのはどうかな?」

「イチロー様、この国では結婚の約束もせずに付き合うことはありません。だからそんなに軽々しく好きになったりしません。その代わり好きになったら命懸けです。」

まぁ、日本も昔はそんな感じだったと聞いた事があるけど‥。この世界がそのルールなら従うしかないか。

「俺なんかでいいの?」

「イチロー様がいいです!出来れば永遠の誓いもしたいのですが、よろしいですか?」

でた、またこの流れかぁ。もう受け入れるって決めたから仕方がないかぁ。

俺は諦めて、頷いた。キスされると思い待ち構えていると、首筋に痛みが。ニーナさん?何してくれてるの??

「イチロー様も同じように、私の首筋を噛んで下さい、血がてるぐらいです。その後、その血を舐めて下さい。」ニーナさんは俺の首筋を舐めながら言ってきた。

血が出るぐらい噛むって、難しくない?そんな事やったことないよ。

とりあえず噛んでみる。

「もっと強くです!」

強くって言われても‥こんな感じかな。

「もっとです!!」

どうなっても知らないよ。

さらに力をこめると口の中に血の味がしてきた。後は舐めるんだったっけ。

ニーナさんの傷口を舐める。

「嬉しい、これで一生離れませんから!」

こうして3人目の嫁さんをゲットした。


さて、次はカレンさんの番だね。

正直事情を聞くとスローライフがおくれなくなりそうな気がするんだけど‥。


「カレンさん、貴方はどこの誰でしょうか?本国だの、暗部だの、騎士団だのギルドの受付嬢の力では到底出来ないことを可能にするということは、どこぞの国の王族ですよね?予想ではエルフの国でしょうが‥」

「イチロー様、ハーフエルフについてはどう思っておいででしょうか?」

「ハーフだのダークだのとくに気にしてませんが‥。」

「イチロー様なら、そう答えると思ってました。」


カレンさんは微笑みながら、胸に手を当てた。すると体が光だし、少し気の強そうな人間のキャリアウーマンから可愛らしいエルフの女の子に変化した。ゾンさんに比べて耳が少し短いような気がする。たぶんそれがハーフエルフの特徴なんだろう。

何か普通じゃないオーラが出まくりだよ。キラキラしているというか。


「それでは、改めて自己紹介します。この国の南に接する国、ザユドの第八王女のイリス・コーニング・ザユド と言います。今後は、イリスとお呼び下さい。」


やっぱり王女だったか。どうしよう、そんな子と結婚したら、何かとゴタゴタに巻き込まれたりするのかなぁ‥。


「すみません、第八王女と言っても人間である母との間に生まれてますので、王位はありませんのでご心配は無用ですよ。」


「ちなみにいかに王位がなかろうと王女様がどこの誰とも分からない俺なんかと結婚しても問題にならないの?」

「全然問題ないですよ。私が好きになった人と結婚して文句を言うものはいませんし、言わせません!」

この子、カッケー。ヒーローみたいだし、惚れてしまうよ。

「何で俺なんかを好きになったの?出会ってすぐに襲ってきたよね?あの時言ってたけど、俺に力があるからなの?」

「たしかにイチロー様の力は凄いと思いますが、そんなことより人を見た目で判断しないところや、優しいとこですかね。あと自分に正直なところとか‥。ニーナさんを助ける時の一生懸命さとか。先程のゾンさんへの言葉とか。あとは「すみません、もう結構です。」」

さすがにこんなに褒められると恥ずかしいよ。


「もしかしてゾンさんも何処かの王族とかですか?」

「そんな訳ないだろ、私は一般人だ。生まれはエルフの国なんだが、突然変異で肌が黒くなり、エルフの国で迫害されて‥。いろいろな国を転々としているうちにこの国にきたんだ。途中、戦争に巻き込まれて家族が全員死んで、私も目を失ったりした‥。」

「すいません、嫌なことを思い出させて‥。」

「もう何百年も前の話しだ。気にするな。」

うわぁー、何か男前な人だなぁ。

「それで、ゾンさんはどうされますか?3人も嫁さんがいて、まだ家もない甲斐性なしですが付いてきてくれますか?」

「わ、わたしも仲間に入れて欲しい。お前の優しさを知ってしまったから、もう1人は嫌だ。お願いだから結婚して!」

ギャップが凄い、破壊力満点だなぁ。

「こんな俺で良ければ、ついてきて下さい。」

「はい!!」

ゾンさんが号泣しながら答えてくれた。


こうして4人目の嫁さんをゲットした。

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