名付けは直感

 長老石が『終わりに近い』なんて爆弾発言を落としてから語ること5分以上。


(早く核心の話に入ってくれないかな)


 お年寄りってなんでこんなに話が長いん? 


【聞いているか?】

「聞いてるって」


 長老石が本題に入らずに語り始めて更に数分経過。やっと本題に入る。


【妖精はいつ消えるか分からないが、長く生きればある程度の死期を予想できる】

「そんなことできるんだ」

【然程時間はない。あと十数年ほどだ】


(結構時間あるし。妖精のスケールで言うところの『然程』ってこと?)


【先程の小さな揺れは、私の力が弱くなったのをいいことに鼠をけしかけている奴がいるので払っているだけだ】

「あ! もしかして、あの銀髪のクソ妖精のこと?」

【あれは他の妖精を取り込んで力をつけている。何故か我らホブゴブリンを嫌う。妖精には珍しく、己をミールと呼びこちらを攻撃している】


 ミール……確か閉じ込めた下級妖精が口にしていた名前。

 このミールと名乗る妖精に、ホブゴブリンの村はかれこれ数十年攻撃されているらしい。

 ハデカラットをけしかける戦略は、最近から始まったらしい。

 ダリアとバンズもハデカラットが増えたことは気づいていたが、ここまで長老石が攻撃されていたことは初めて知ったらしい。

 ダリアの父親は、ハデカラット攻撃の話を聞いても驚いた様子がないので、件の話は知っていたみたいだけど。


「大変じゃん。どうするの?」

【我々は争いを好まない。特に妖精同士の争いは極力避けたい】


 そんな甘いこと言っても無理じゃね? 攻撃されているのだから。

 今までは長老石の力が強く村を結界(?)で守れていたそうだ。だが、ハデカラットが毎日のように攻撃してくるので、徐々に長老の結界も落ちてきているらしい。


「そのミールって妖精は、ホブゴブリンが嫌いってだけでそこまで執拗に攻撃してるん? 何か他に目的があるんじゃない?」

【あれはここの住処が欲しいのであろう】


 長老石が言うには、ホブゴブリンの住まうこの空間はなんと、ダンジョンらしい。

 マジカルな話が多すぎて頭痛がする。


「ダンジョンねぇ……」


 ダンジョンと言う言葉に反応したのか、肩に乗る黒い玉がクルリと回転した。

 黒い玉を凝視しながらもう一度『ダンジョン』と呟くと再び回り反応する。


「黒玉、ダンジョンが好きなん?」


 黒い玉に話しかけたが無反応。うーん。なんだったんだろう?

 再び語りに入った長老石をスルーし過ぎたか、頭に大声が響く。


【聞いているか?】

「聞いてなかった。長老石、なんて言ったの?」

【私の名前はホブゴブリンだ】

「……うん」


 堂々と言われても、ホブゴブリンの名前はどれも同じイントネーションに聞こえるから困る。


【うむ。そうか、キヨシもホブゴブリンの名前の区別ができていなかった。勝手に名前をつけられたが……その名で呼ぶと良い】

「やっぱり? なんて呼ばれていたの?」

【イシゾウだ】

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