団子青尻ガール
パタパタと扇ぐ音で目が覚める。
目の前には、ダリアの母親が心配そうにうちわで私の顔を扇いでいる
額に上にはギンが乗っており、こちらを覗き込んでいる。
「冷たっ」
首の周りに巻かれたタオルは、冷たい。タオル、凍ってる?
「目が覚めましたか? 湯加減が少し人族には熱かったみたいね。大丈夫かしら?」
「うん。大丈夫。久しぶりだったから、長湯しすぎたみたい」
起き上がるとタオル一枚の姿。左肩の黒い玉はまだ健在。風呂に入っている時に湯船に沈めてみたけどれ、ダメージはゼロのようだ。
不思議水を飲み体調を整える。確かに風呂は熱めだった。倒れている間にダリアが髪を乾かしてくれたようだ。
「カエデさん、これは私の服なんだけど、着てみてくれないかしら」
「いいの? ありがとう」
ホブゴブリンの正装? ダリアたちが着ている服より華やかで豪華じゃん。
色々破れたり、引き裂かれたり……私の今持っている服は、ほとんどが古い。ヨレヨレ穴あきは当たり前、そろそろ真剣に新調したい。
「綺麗な服あるだえ~これだえ~」
「ギンちゃん、それオジブリーフ……履かないからしまって」
一応、ログハウスから持ってきたオジブリーフが今の服の中で一番綺麗な服だという事実。誰か助けて!
「それじゃ、こっちの部屋で着替えましょうか?」
ダリアの母親に案内された部屋は、服を作る作業部屋のような場所だった。
渡された服は、黄色と白の刺繍の入った鮮やかな赤の生地。南米のどこかの国の民族衣装を連想させるような服だ。
見た目と反して着心地は良い。なんの毛?
「やはり、少し丈が短いわね」
「短いとダメなの」
「そんなことはないわよ。まだ子供だから大丈夫よ」
「う、うん」
ダリアの母親は350歳だそうだ。まぁ、その年齢から見れば、私なんか未熟な青尻ガールだろうけど……。
フェルナンドといい、ホブゴブリンといい……子供扱いをどうにかして欲しい。私、アラサーアダルトなんだけどな。
「髪も結いましょうか?」
ダリアの母親、楽しそうだな。断る理由もないし、髪を結って貰う。
結われた髪はツインテール団子。これ、完全に子供認定されてるじゃん。
服の最終調整をするダリアの母親を眺める。見た目は20代で薄緑の肌はプルプル。ホブゴブリン恐るべし。
「できたわ。どうかしら? 鏡があるから確認してちょうだい」
「ん。ありがとう」
壁掛けの小さな鏡に写るのは起き上がり人形のような姿の自分。
(これは、酷い)
なんだろう? 色が似合わないのか、シルエットが似合わないのか……ツインテール団子が似合わないのか。でも、生地は凄く良いし動きやすい。
ギンも、いつのまにかダリアの母親に借りた赤い小さ布を巻いてる。
「ギンちゃんも正装してるの?」
「赤い布だえ~」
せっかくだから、黒い玉にも赤い布をかけると吸収されてしまう。あげたんじゃないんだけど! ダリアの母親は布はたくさんあるから気にしなくて良いと言ったけど、『布返せ』と黒い玉ツンツンと突く。私の絵は吐き出したくせに、布は返さないつもりらしい。
準備もできたので作業部屋から出て、椅子に座って待つ。
「僕たちも準備できたよ」
風呂から上がってポンチョのようなものに着替えたバンズ。それから、私と似た格好のダリアが部屋から出てくる。
二人とも凄く可愛い。なんで、ここまで違うんだ?
「長老様の所へ行く準備はできたようだな」
ダリアたちの父親は特に正装することもなく、先程と同じ格好だ。
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