なんだと!?
ダリアとバンズの兄だろう、がっしりした体型のホブゴブリンが二人に駆け寄り抱き上げ抱擁する。
「無事で良かった」
「兄さん、苦しいよ」
バンズが嬉しそうに笑いながら言う。仲の良い家族じゃん。
ダリアたちの兄がこちらに気づき、二人を下ろして素早く私の方へと駆け寄ってくる。
「人族の子、俺の妹と弟を助けてくれたこと感謝する」
「初めまして、カエデでグフォ——」
自己紹介の途中で兄ホブゴブリンに抱き上げられ足が床から浮く。慌てて降りようとするが、兄ホブゴブリンの腕にがっしり掴まれ身動きがとれない。抱擁の力が段々と強くなる。
あ、ちょっと何すんの、コイツ。
ギンがカステラから降りて、ダリアたちの兄をジッと見つめるが何も起きない。
ああ、兄ホブゴブリンに悪意が全くないのか。これは純粋に感謝の気持ちでの抱擁なのか。感謝は分かったけど、この馬鹿力、こっちは苦しいし。悪意なくとも迷惑には変わりない。
兄ホブゴブリンの顔面を殴ろうかと思ったら、ダリアたちの父親がゴツンと兄の頭をグーで殴る。
「ホブゴブリン、やめろ。人族は脆いと前に教えただろう」
「そうだった。すまない。つい、興奮してな。カエデと言ったか? 怪我はないか」
兄ホブゴブリンが腕を緩めて、無事に下ろしてもらう。
「普通に痛かったし」
「本当に申し訳ない」
シュンとした兄ホブゴブリンがバンズにそっくりで、つい、許してしまう。悪気はなかったし、今回だけね。
「次回は顔面パンチだから」
「き、気をつけるとしよう。紹介が遅れたが俺は二人の兄のホブゴブリンだ」
「……うん。よろしく」
父ホブゴブリンが真面目な顔になりダリアとバンズに尋ねる。
「それで、何があったんだ? 近場で木の実や薬草の採取をしていただけだろう?」
ダリアたちは、自分たちに起きた事を詳細と共に両親と兄に伝える。
父ホブゴブリンが、ハデカラットの話になると難しい顔をしながら兄ホブゴブリンと顔を合わせる。
「ふむ。やはり、その妖精の力が増しているのか……長老様に報告だな。今から向かう」
「あなた、カエデさんは?」
「先に報告に行く。申し訳ないが、後ほどカエデさんも一緒に長老様に会ってもらわねばならないことになると思う。外部者は全員そう言う決まりなのでな」
「それは構わないけど、服装、こんな感じなんだけど、大丈夫?」
流石にこの格好は私でも大丈夫じゃないと思う。オールヨレヨレで所々穴が空いていて埃だらけ、髪もボサボサだ。ダメじゃん。
「長老様は気にしないだろうが、気になるのであれば、風呂があるので入るといい」
風呂だと!?
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