ホブゴブリンの里
スピードが上がり段々とカエデスプラッターが現実味をおびてくる。
近づく岩がオープン! とかすることもなく普通にドンと直立した岩があるだけ。
前に乗るバンズに耳打ちをする。
「バンズ! これ、本当に大丈夫なん?」
「大丈夫」
自信満々な返事が帰ってくるけど、本当?
岩にぶつかる目前で我慢できず目を閉じる。閉じる寸前にダリアとバンズの上げた手首が光ったように見えた。
「カエデさん、もう大丈夫ですよ」
ダリアに優しく声をかけられる。
ユキのスピードも落ちたので、片目ずつゆっくり開ける。
目の前に広がるのは先ほどいた草原とは全く別の場所だ。ここが、ホブゴブリンの里?
一番最初に目に入ってくるのは、そびえ立つ大きな巨樹。立派な木だ。上の方は見えないが、所々斑点があり少し枯れているような気がする。
「大きな木だね」
「はい、長老様が生まれる以前からこの地にある木で『精霊の木』と呼ばれています。里の隠匿もあの木のおかげです」
また色々マジカルなことね。慣れたよ。しかし、長老より年寄りってことは樹齢900歳以上の木か。
後ろを振り返り入ってきた場所を確認する。プヨっとした空中の場所を触ると水面のように波打ち、先程までいた草原が水鏡に映し出される。
「何これ、凄い」
越えられるのかと一本踏み出すが、頭をぶつけ進むことはできない。
「カエデさん、ここはホブゴブリンの鍵がないと通れないです」
さっき二人が腕を上げて光っていた奴か。凄いセキュリティじゃね?
本来ならホブゴブリンも迷いの森で暮らすのは、主に悪戯妖精のせいで不憫らしいが、先祖代々のこの安全な土地から離れたくはないようだ。
「悪戯妖精はいますが、おかげで魔物や人が少なく快適なんですよ」
あんな、とんでも妖精でも持ちつ持たれつなのかもしれない。
妖精で思い出したけど、左肩の黒い玉はしっかりついてきている。鼠ボールに追いかけられた時もユキに服をビリビリに裂かれた時も……どうやら本当に居座るようだ。
「村は精霊の木の樹下の位置にあります」
「うん。じゃあ、行こうか」
ユキたちに乗って進むとすぐにホブゴブリンの村が見えてきた。巨樹の浮き出る根を上手く利用した村には無数の土が盛り上がりドーム型の形をしている。あれがダリアの言っていた『家』か。
ドーム型の土には窓や煙突が付いており煙が出てきている。
念のために双眼鏡を除くと、たくさんのホブゴブリンが行き交う姿が見えた。みんな結構小さい。
「お前! ホブゴブリンか!?」
たくさんの木材を背負った中年ホブゴブリンが現れダリアに駆け寄る。
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