バーストの蜜汁

 銀級の冒険者タグを待つ間、マルゲリータの依頼を聞くだけ聞くことにする。


「カエデさん、お茶の追加を入れますね」

「あ、はい」

「子供たちにもこのお茶気に入ってくれたのね。預かっている子たちと聞いたけど、とても行儀が良いのね」


 マルゲリータがお茶を注ぎながら、ダリアたちに向けてにっこりと笑顔を見せる。

 ダリアとバンズは照れ笑いで答えてるけど、騙されちゃダメだから。この笑顔の背後にあるギラつき、飢えた成金並みだから。

 マルゲリータが机から依頼書を取り出し、こちらへ渡してくる。本題だ。渡された依頼書を一目見て即座に答える。


「お断りします」

「即答なのですね。理由を聞いてもいいかしら?」

「絶対ヤダよ。テロリストじゃん」

「てろ、りすと? とはスライムのことかしら?」

「無差別に爆発して酸をぶちまける生物の討伐依頼など速攻でお断りです」


 ノーノーノー。

 依頼書をマルゲリータに突き返す。

 マルゲリータが、スライム討伐一匹銀貨2枚で交渉しようとするが、頑固として拒否。たとえ金貨100枚積まれても……いやいや、やらないって。

 あのテロリストスライムのいる死の森で彷徨った五日間は軽いトラウマだし。絶対はんたーい!


「そこまで頑なに拒否するなら、仕方ないわね」

「他の銀級に頼めばいい話じゃ?」


 マルゲリータが言うには、現在、ここのギルドは銀級不足らしい。

 大きな街じゃないし、そうだろうけど……そんなの知らない。昨日、銀級になってた人たちいたじゃん。


「残念ながら、みなさん、別の依頼をお受けになったのですよ」

「この依頼、その人たちにも提示したの?」

「当然ですよ。ですが、みなさん、即座に別の依頼を受けてしまったので、断られてしまったのですよ」


 マルゲリータの困ってるアピールがワザとらしいし、そんなこと言われても行かないし。他の銀級も完全にこの依頼が嫌だから別の依頼受けてるだけじゃん!


「これ、ずっと溜まってたスライム依頼でしょ? なんで今更、急に討伐依頼?」


 マルゲリータが言うには、原因は魔石不足。スライムの紫の魔石——こちらでは、源の魔石と呼ばれる魔石の種類で魔道具の加工を筆頭にエネルギー的扱いされている魔石だそうだ。

 今度は、自分がギラついた表情口角が上がるのが分かった。


「ギルド長。魔石ひとつ銀貨2枚でって話はまだ有効?」

「有効ですよ。行っていただけるのかしら?」

「いや、行かないけど」


 ギンから45個、源の魔石と言われるスライムから取った紫色の魔石を手の上に出す。トラウマ五日間狩ったスライムの魔石だ。

 マルゲリータの上品な顔から出たとは思えないほど低い声が聞こえる。


「は?」

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