ガーク家 2

 ショーン以外の全員がテーブルに揃ったところで、食事が始まる。

 早速芋を確保しているバンズを横目に、グリルしたロングバードを大口開けて食べる。

 やっぱりこの鳥、美味い。ターキーも十分美味しかったけど、こっちの方の鳥がより好み。


「ローザさん、美味しいです」

「ありがとう。お口に合って良かったわ」


 双子もモリモリと食べている。

 みんなの食べる姿に圧倒されたのか、トーワが驚いた顔をしている。そんなトーワの皿に肉と野菜を取り分けながらローザが微笑みながら言う。


「みんな、育ち盛りなのね。家の子たちは、二人とも少食なのよ」

「その分、俺が大食いだけどな」


 ガークがそう付け足すと、子供たちから笑いが起こった。


「あれだえ〜」

「ん? ギンちゃん、この生のセロリみたいなのが欲しいの?」


 肉の隣にあったセロリを肩に乗せると、ギンがその上に座り根を張る。

 ギンが見えないであろうトーワには、なんで野菜を肩に乗せているのかと首を傾げながら聞かれる。


「んー」

「トーワ、カエデの行動は理解不能だから、聞いても無駄だぞ。それより、もっと肉を食べろ」


 トーワに答えなくていいのは助かったけど、なんか軽くディスられた気がする。とりあえず、歯を見せて笑う。

 夕食も終了。ローザがショーンに食事を運んでいく間、散らかったテーブルの後片付けを全員でする。

 台所は狭いが、綺麗に整理されてる。皿を洗い終わったミロに皿の置き場所を質問される。


「カエデ、この大皿、どこに片付けるの?」

「分からない。ガーク、どこに置けばいい?」

「俺も分からない」

「これはね、ここだよ」


 トーワが指差した棚にミロが大皿を入れる。ガークは、片付け作業には全く役に立たなかった。

 片付けが終了し、再び子供たちが遊び始める。


「林檎酒、もっと飲むか?」

「うん。これは、どこかで買えるの?」

「いや、ローザの手作りだ」

「ガーク、やっぱり人は顔じゃないね」

「おい! お前、一言多いんだよ! 何を悟った顔をしてやがる!」


 美人の奥さんに可愛い子供たち。何この幸せの見せつけ。

 林檎酒を飲みすぎたのか、トイレに行きたくなった。ガーク家のトイレは裏の離れにあるらしいので、一人で向かう。

 トイレに行く途中、灯りの漏れる部屋を通り過ぎるとローザと少年の声がした。この部屋は、息子のショーンか。楽しそうに話しているが…..子供の咳は酷く、息をする度に苦しそうな喘鳴ぜんめいがドアの外からでも聞こえる。


「ショーン、我慢しなくていいのよ。今日は、ポーションを飲みなさい」

「ううん。本当にぼく大丈夫だから、ゴホッゴホッ。でもトーワと新しい友達と遊びたかったな。会うのもダメなの?」

「ポーション飲むなら少しだけ良いわよ」

「ポーション苦いから飲みたくない」


 ポーションは苦いのか。

 部屋から出てきたローザと鉢合わせる。


「あら? カエデちゃん、どうしたの?」

「林檎酒飲みすぎて、離れに向かってた。それ、水差し?」


 ポーションは子供には苦いから、水と共に飲むと説明を受ける。

 ローザの魔力量は少ないらしく、調理で使った魔力分で、今は水が出せないため水を汲みに行くところとも言われた。


「水なら任せて」

「カエデちゃんは、魔力に余裕があるのね。そうよね、冒険者だもね」


 実際のマジカルパワーはゼロだけどね。もちろん水差しは、不思議水で満タンにする。

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