ロワーの街へ
「それでは街へ出発します」
早朝、ホテル洞窟をチェックアウト。洞窟は、別の賊がまた住み着くと面倒なので、石の魔石で出した岩を積み重ねて入り口を塞ぐ。
洞窟を後に街に向け、出発。
カイが先頭を率いて案内、オスカーとコリンは列の真ん中、私とユキ達が列の最後尾だ。十六人での移動。大勢の移動に加えて怪我人がいる。休憩を定期的に入れる事を考えると街に着くのは…夕方くらい?
コリンの指導のもと、荷物は移動に支障がない量で、それぞれが使いやすい武器を所持した。後方にいる双子のミラとミロは、興味深々に森を歩いている。
「村の裏の森とは全然違う」
「これ何?」
「あ! 知らない物は、触らない方がいいよ」
ツタウルシっぽい植物から離れるミロ。見かけは高校生くらいだけど、まだ幼いのかもしれない。
「ゴブリンだ!」
前方からカイの声がする。ユキが走り出してゴブリンを一掃する。
ゴブリン君、久しぶり。ログハウス周辺のゴブリンともゴブリンライダーとも種類が違うようで、こちらのは、細くマッチョで耳も長い。交戦的なのは同じだけど。
倒したゴブリンは耳を削げば、お金が貰えるらしい。駆除代。魔石はなし。
その後もゴブリンやウルフ…魔物ではないけど、蛇や虻の襲撃にもあった。森の生き物は、ひたすら人間嫌いとしか思えない。
顔の周りをハエがウロつく。ペシペシと払ってもしつこい。
パチン
手のひらを見ると、ハエは潰れておらず、二匹になっていた。最悪。異世界マジカルハエだ。知らない物は触るなと双子に注意した大人の面子台無し…
結局二匹のハエには、それから数十分付き纏われた…潰したくても増える可能性があるので、グッと我慢して無視した。ゴキちゃんズ元気かな。
出発して五時間。何度も休憩を取りながら歩いた。エディともう一人の幼い子は交代で抱っこして道を進む。
「飯にするか?」
「時間的にも丁度いいね」
昼休憩を取る。出る前に準備した穀物の入った…饅頭みたいなのを頂く。味は、モチモチして美味しい。スープばっかりだったので、小麦粉が嬉しい。
「これ、美味しい」
「おやきだよ」
おやき…確かにこれは、おやきだ。勇者キヨシが広めたらしい。キヨシ…やるじゃん。おやきをお代わりする。
この移動で恥ずかしいのが、トイレ。私はユキがいるから、やろうと思えば、色んなところでしーしー出来る。だが、他は小休憩時にお互い周りを警戒して見張りながら用を足す。見られながらのしーしー。羞恥プレイ…
「どこ行くの?」
「エディ…ちょっと、お花を摘みに~」
「お花ないよ」
「じゃあ、草摘み」
エディは、『何の草?』と聞いてくるが、誤魔化して頭を撫でる。ほら、あっちでお姉さんが呼んでるよ。エディもキジ撃ちの時間だよ。
不思議水のおかげだろうけど、長距離を歩いているのに、みんなの疲労は酷くない。一人以外は…
「オスカー。大丈夫?」
「ああ…」
汗が酷い。今日は野営などできない。今のペースなら…街まで後二、三時間と予想する。
再び歩き始めて一時間、森を抜ける。やっとで…やっとで…
森を抜けた先には、丘が多い。丘の上から、要塞都市が見える。ロワーの街だ。
「文明だよ…あんなに近くに」
「カエデ、ここから街までまだ暫く時間がかかる」
街は見えているのに…あそこまで一時間半ほどかかるそうだ…
結局、二時間以上かかり…夕方前にロワーの街に到着した。
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