松葉杖

 お互いの秘密ごとはそのまま、オスカーにベッドから立ってもらう。やっぱり、こちらの人は大きい。私が見上げる身長だから、180cmはあるだろう。

 オスカーは、自力で立つ事は可能のようだ。歩くのは、どうだろう?


「痛みはない?」

「大丈夫だ」

「わー!」


 数歩進んだオスカーが、バランスを崩して倒れてくる。もちろん受け止めることなんて出来ず共倒れする。アニメとかだったら、うっかりラッキーキスなんてあるんだろうが、現実はそんな可愛いもんじゃない。オスカーの胸部分で顔が圧迫されて苦しい。退けよ! 

 オスカーの脇腹をパンチする。痛そうにオスカーが横へ捌ける。


「殴らなくても良いであろう!」

「息が出来なかったし!」


 ここまで来て、胸板に押し殺される予定はない。しかし、親指がないって大変。オスカー、リハビリしないと歩けないだろうな…ここで、そんな時間はない。

 うーん。そうだ、松葉杖を作ろう! 凝った松葉杖じゃない。数時間持てば良い。F字型のだったら作ることが出来る。


「何をしているのだ?」

「少し測らせてください。何、股を隠してるの?」

「い、いや」


 変な空気になったけど、脇の下までの長さを測る。ログハウスのメジャーあってよかった。さて、先ずは、地面から脇下まで測る。142cmっと。次は、手の位置が来るところだから股下辺りか。えーと…90cm…脚長いね。羨ましい。自分の脚を測る。72.45cm…くっ。世の中は、平等じゃない。でも、これでも私の自慢の鶏の足なのだ。細くて筋肉質って意味でのね!


「終わりました。これで杖を作ります」

「面倒を掛ける。この礼は、必ず」

「それじゃ、期待しておくね」


 オスカーが苦笑いをしながら、腹を押さえる。パンチか? 不思議水をコップに注いで部屋を出る。


 松葉杖の素材はどうしようかな…クイーンのこのSM拷問器具って木じゃね? 特に、このはりつけ台とか使えそう。二つもあるし。これ対面させてプレイしてたの? ぐぇー。拭き掃除くらいしておこう。

 はりつけ台を、風の魔石を使いながら切って、分解する。ちょうどいい長さの棒が二本。それから、グリップ部分と脇当て部分の木も見つかる。はりつけ台、優秀じゃん! 

 測った通りの位置に杭で木を打ち付ける。こんなもんだね。

 見かけは不恰好だけど、機能的には大丈夫よね? 数時間くらい、壊れずに頑張ってよね。

 気づいたら、双子が夕食を持ってきた。没頭しすぎたかも…


「オスカー。杖できたよ。試用して調節する事があったら教えて」

「いや。短時間で凄い出来だ。これで、俺も動く事ができる。感謝する。明日には出発か?」

「確認するけど、そうだね」


 他は既に準備ができている。はりつけ台の残りで、コリンの腕用の添え木も作った。腕の腫れも随分引いてる。不思議水…お宝もみんな好きな物を回収している。持てる範囲で、森を歩く事を考慮してコリンが指導したようだ。


 明日は、ホテル洞窟をチェックアウト。


 

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