紅葉な楓
ログハウスに戻ってきた。
ユキとうどんは扉の前で丸くなっている。
はぁ。今日は最悪だ。転がったせいで服がボロボロだ。靴も片方ない。猪狩りするつもりが、逆に猪に狩られる方になってしまった。紅葉狩りならぬ楓狩りだ。フフ
…
くだらない事考える余裕はあるみたい。
今は何時? 衝撃でも壊れなかった腕時計を見る。時間は22:15。ここに来て一番の夜更かしですよ。やったね。
ははは。と乾いた笑いがログハウスに響く。
本来なら風呂の準備をして身体の汚れを落として、他の怪我の確認をすべきなんだけど…
ポン
部長の叔父さんの高そうなスコッチウイスキーのコルク栓を抜く。今日は祝いだ。そう…死んでいな…生きている祝いだ。
なみなみと何かの景品であろうコップに繊細な模様のガラス瓶に入った高級スコッチを注ぐ。独特な匂いがフワッと香る。
「かんぱーい」
ぐっと一気飲みをする。
「かぁーーー」
こんな、ショットみたいな飲み方では味も何も分からない。今度はカップの半分ほど注いで、チビチビ飲む。芳醇でコクのある味のスコッチウイスキーだよ。飲み方はオンザロックが好きなんだけど、氷がないのでニートで飲む。寒くなったら氷が出来るかもね。いや、それ程寒くなったら私が困る。
コップ2杯分を飲んだら目がトロンとなる。そういえば、ここにきてからお酒は殆ど飲んでなかった。鏡に写った自分の顔を見る。
「楓の紅葉でーす! ん? 紅葉な楓?」
珍しく、顔が真っ赤になっている。オデコは黄色い。転んだ時に頭を打ったのはここか。顔も泥だらけだし、髪についた血は固まっている。やっぱりお風呂入るべきだった。
「ユキちゃん! うどんちゃん!」
ユキに抱きつこうとするが、サッと避けられる。酷い…仕方ないので、うどんをモフモフする。しつこくモフりすぎたのか、うどんに前足で顔を抑えられる。
ぷーんだ。酔っ払いはめんどくさいんですよーだ。うどんの側にゴロンと仰向けになる。目の前には、満天の星が広がっている。星座とか興味なかったが、これだけはっきり星が見えれば名前を付けたくなるのも分かる。
「ユキちゃ~ん。あの辺の星はお稲荷さんに似てるから、ユキちゃん座にしようよ~」
「ヴゥー」
凄いめんどくさそうな顔をするユキ。偶に言葉が通じてるんじゃないかと思う。最近独り言が増えてきたので、それを理解されていたら恥ずかしい。
外は大分肌寒い。冬が近づいている。いつまで食べ物を集める事が出来るか分からない。あんな、車みたいな猪は誤算だ。あれが彷徨く間は膜の外は危険だ。どっか行ってくれないかな? 絶対まだその辺に居るだろうな…
そんな事を考えていたら、徐々に眠くなり、いつの間にか意識を手放していた。
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