お持ち帰り

 おはようございます。

 今日は、こちらの世界に飛ばされて一ヶ月が経つ。戻り方、というか未だにここがどこか分かってない。分かっているのは森という事、アグレッシブな動物や魔物がいる事、不思議な水の湖や膜があって魔石があるくらいだ。

 朝食を食べて、果物や食べ物を取りに行く。ゴブリンが一週間以上来ていないので、今日は膜の外に採取に行く。軽装にバックパック、アイスピックと短剣それから白骨遺体から借りているヘルメットをかぶる。

 膜から出て十五分ほど歩いた所に、初めて見るベリーがあった。ラズベリーより小ぶりだね。食べてみると、甘いが苦い…微妙だけど持ち帰ろう。お! 近くにはブラックベリーか? 実が青く赤いのも少しあるがまだ時期ではないのだろう。



ガサガサ


ん? ゴブリンか?


 出てきたのは白い狐? こちらを見てサッと逃げる。アグレッシブ動物じゃ無いのか? この森ににきて初めてかも知れない。いや、お掃除ゴキちゃんズも私に対してはアグレッシブでは無いが…彼らに遭遇すると別に意味で緊張するので…

 白い狐を見た位置から更に二十分歩くと動物の死骸があった。その上にはチェリーだろうか? 赤い実があるのだが…チェリーを食べて死んだのか? 死骸の近くに行く、これはさっきの白い狐か? いやさっきの個体より大きい。

 ん? まだ生きているの? 温かい。口の周りにはチェリーの汁がある。この実は毒なの? その辺のフルーツをポイポイと口の中に入れていたのは迂闊だったな。今まで毒に当たらなかったのがラッキーだったのか?


ガサガサガサ


 さっき遭遇した白い狐か…襲っては来ないが辺りをウロウロしながら鳴いている。



「キューイン」



 意識がないのが母狐で、こいつは小狐かな? うーん。この毒が何かも分からないが襲って来ない動物は貴重なので助けることにする。

 どうするか…困った時の不思議水だね。母狐の口を開けて不思議水を飲ませる。

 口くっさ!

 効いているのか分からないけど、ここにいてもその内ゴブリンに襲われそう。狐を抱っこしてログハウスに向かう。ううう。なかなかの重さに獣臭さ。


「キューイン、キュキュキュ」

「お前もちゃんとついて来てね」


 帰り道は角兎が出たが、小狐が一瞬で首元に噛み付いて仕留めていた。


「何? 持って行きたいの?」


 ズルズルと角兎を引きずる小狐。仕方ないので代わりに角兎の耳部分を持ち上げログハウスに向かう。小狐は何故かドヤ顔だ。こっちは荷物増えて辛い。

 膜の近くまで帰ってきた。そういえば、この二匹って膜の中に入れるのかな? 考えてなかったよ。ま! 入ってみよう。


 膜の前に到着した。

 母狐を抱えたまま膜を通る。ん? 普通に通れたな。足元には小狐がいる。あれ? 小狐も普通に通れたの?

 前はキノコも通れてたみたいだし…膜の基準は悪意や敵意なの?

 分からないけど、母狐が重いので急いでログハウスに戻る。



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