掃除屋
言葉を失った。
何故ならそこには犬の残骸を引きずる…多分私よりサイズの大きいゴキブリがいたからだ。
いや、蜘蛛かもしれない。もう一度双眼鏡を覗く。くそっ。ゴキブリだ。しかもチラチラひょっこり顔を見せて犬の残骸をサササと回収して行く。
待て待て。落ち着けカエデ! あんな図体のデカいのと何で今まで遭遇しなかったんだ? アレとは何があっても戦いたくない。
しかも対でいるな。もう一匹は小さめで動きが速すぎて目で追うのがやっとだ。田舎の野良ゴキブリのようだ。家の中にいるの茶色だけど、田舎の外にいるゴキブリは黒く大きくて速い。対になってるのも同じだしね。ゴキブリ殺した後に目線を感じて振り向くともう一匹のお友達がこちらを見てるんだよ。
観察している間に二匹分の犬が引きずられていった。とりあえずそのまま放置して、明日まで様子を見てみるか。ゴキブリも膜の中には入れないよね? ね?
とりあえず夕食の兎の丸焼きを食べる。結構ジューシーに仕上がった。肉ばっかりなので野菜も食べたい。チンゲンサイ早く育たないかな。
寝る前に今日のゴキブリについて考える。あんなに動きが速いならクロスボウで狙うのはまず無理だね。直接勝負とかは…無理だな。ゴブリンでさえ触りたくないのに毎日触れ合ってんだ。更にゴキブリを追加などしたくない。異世界モフモフ天国はどこに行ったんでしょうかね?
カサっ
ビクッと跳ね起きる。ヘッドライトをつけて辺りを見まわす。何だ…日めくりカレンダーの紙が落ちたのか。このカレンダーも去年のだし、今では火付材としか使っていない。破って何枚かテーブルに置いていたものが落ちたらしい。変な虫の事を考えるから要らない妄想をしてしまう。さっさと早く寝よ。
朝になった。時間は五時か…起きる時間がドンドン早くなっている。まぁ二十時前に寝てる日多いしね。たっぷり九時間睡眠!
朝食は昨日の兎の丸焼きをスープにした。味は可もなく不可もなくかな。昼の分もありそうだ。
ログハウスの屋根に上がり、昨日の犬の残骸付近を双眼鏡で見る。おお! 一匹もいない。ゴキーズが全部持って行ったみたいだ。
昼ごはんを食べて木材の採取をしていたら、またゴブリンに遭遇した。始末した後に魔石だけ取って転がした。
干し肉をつまみながらログハウスの上からゴブリンの残骸を観察。来た来た。昨日の二匹っぽいな。またチラチラ辺りを警戒してる。獲物を引きずる迄にかなり時間が掛かっている事から高い警戒心があるのかもしれない。ゴブリンの死骸も明日には消えてそうだな。彼らがいればもう穴を掘って残骸処理をしなくても大丈夫? 穴掘るの地味に辛いんだよね。
彼らは森の掃除屋かもしれない。お掃除ゴキちゃんと名付けよう。
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