第3話 ろくでなし

 王都についてから早三日僕は初めてお母様に連れられてお母様の親戚の家に呼ばれた。


「ロクーデ伯爵ご無沙汰しておりました」

「お~お~、メリア殿お久しぶりですな、それにコレがあの・・・・」


 お世辞にもダンディとは呼べない豚のような体のロクーデ伯爵は母に抱かれる僕を見て明らかに嫌そうな顔で僕の事をコレと言った。


「メリア、ショックだっただろうね。1年も気を病み部屋に籠ってしまったと聞いているよ」

「え、ええ.....でももう大丈夫です。私はこの子を愛していますから」


 母は僕を見て微笑む。


「お~なんと健気な....ツヴァイ殿はほんとにいい嫁を持った者だ...」


 ロクーデ伯爵はいやらしい顔で母を見ている。


「だ~だ~~」

「お~よしよし、儂に抱かれたいのか」


 僕は抱かれたくはなかったがロクーデ伯爵の腹に抱きついた。


「お~なかなか可愛いの~」

「う~~~....ふう」

「ぎゃあ。こやつ糞をしよったな」


 いつの間にかズボンを脱ぎロクーデ伯爵の腹に運をつけてやったら真っ赤になって怒りだし、しまいには出来損ないがと罵ってくれた。本性を出したロクーデ伯爵はすぐに服を着替えに部屋に入っていった。


「ふふ、ありがとうね。でももうしちゃダメよ」

「だ~う~」

「坊ちゃまはお母様想いなのですね」


 ロクーデ伯爵は終始、母の胸や体を舐めまわすように眺めていた、その行為はシリカさん達にも及び僕は我慢ができなかった。印象を悪くするのは致し方ないと判断しました。





 王都に来てから早一か月。


 僕たちは何不自由なく暮らせていますが父ツヴァイの街の住人はやっぱりまだ城外にテントで暮らしている。何度か母と見舞いに行ったのだが街にはちょっとずつ移動できているようでこれだけは時間に任せるしかないと思う。


 僕はその見舞いに行った時にちょっと気になった事があったので森に高速で入っていきイノシシと熊を仕留めてみました。のして人に見つけてもらえる範囲に放置して避難民の人達に食べてもらおうと思ってね。そうすると避難民の人達は計画通りに熊とイノシシを見つけてくれて避難民に少し笑顔が戻ったように見えた。


「ん、ジーニ様はいい子」

「ダ?」


 ララさんは僕の頭を撫でて褒めてくれた。僕は何のことと言ったように首を傾げている。その後も何度か同じような事をすると毎回ララさんに見られていたようで毎回暖かい目で撫でられた。


「ん~、ジーニ様」

「ダア?」


 珍しくララさんが僕を抱き上げて話しかけてきた。


「私は戦争孤児だったんです。シリカさんに助けてもらってツヴァイ様のメイドになる事ができました。ここに避難している人も同じ....誰かが助けてあげないと」


 いつも自己主張をしないララさんが自分の意見をはっきりと話ている。僕は珍しい物を見るかのような目で見ていると少しずつララさんの頬が赤くなっていき僕を抱き上げたまま手で自分の顔を隠している。うむ、可愛い~...。


「ん、ジーニ様...メっ!」


 僕を降ろして赤くなった顔で僕を叱るララさん、僕の顔をみて何か思ったのかな?。確かに可愛いな~と思ってニヤニヤしてたけどさ。


 そんなこんなで僕は3メートルの熊を仕留められるほどになっております。それを知っているのはララさんだけだ。さすがに母やシリカさんに知られたら怒られそうだもの。


 そして一歳で熊を仕留めた僕のステータスです。


アステリア・ジーニ


 LV 1


 HP 5 [300倍(秘匿)1500]

 MP 3 [300倍(秘匿)900]


 STR6 [300倍(秘匿)1800]

 VIT5 [300倍(秘匿)1500]

 DEX7 [300倍(秘匿)2100]

 AGI5 [300倍(秘匿)1500]

 INT4 [300倍(秘匿)1200]

 MND3 [300倍(秘匿)900]


 スキル [神眼(秘匿)][超早熟][超大器晩成][匍匐の達人][格闘の基礎]


 称号 [小さくても力持ち][ハイハイ世界記録][一歳で熊を仕留めた]


 えっと~ステータスがだんだん凄くなってきました。思いのほか早熟がいい仕事し過ぎています。今までは家をハイハイして経験値もらっていたのですが最近は獣を狩っていたせいで一気にレベルが上がってステータスにつぎ込む事でこんなことになってしまいました。


 スキルも格闘の基礎とか言う格闘術入門のようなスキルですがその通りです、これが上がりきると格闘術になってそこから更にあげると[格闘術極]になるそうです。ただ熊の足にタックルしただけなんだけどね、その時熊は自分の足が折れるのを感じたとか何とか...。


 まあそう言う事で一歳で熊を仕留めてしまい称号もゲットしてしまいました。称号の効果は素手での攻撃力2倍です....倍が多くてすいません。


 とまあこんな感じで避難民達を保護しつつ暮らしていました。







「私見たんです、いつも水汲みする川で赤ん坊が熊を引きずっているのを」

「ああ、おらも見た、おらの場合はイノシシだったぞ」


 避難民達が一つの小屋に集まり何やら話し合っていた。その内容は最近多いい動物達の新鮮な死体の話だった。


「あの赤ん坊はジーニ様だよな」

「え?ツヴァイ様のご子息の?」

「ああ、綺麗な服着てるのに加護なしのピアスをしていたのを見たんだ」

「ジーニ様...」


 ジーニはしっかりと善行を見られていた。だが流石に赤ん坊が熊やイノシシを倒せるのか?などと話していると一人の子供がジーニの話を始めた。


「私、ジーニ様の馬車に近づいちゃったんだ、それで兵士のおじさんに怒られちゃった。でもその時ジーニ様が庇ってくれたんだよ」

「は~やっぱり赤ん坊なのに聡明なんだな~言葉を話したのか?」

「ううん違うよ、兵士のおじちゃんの頭に乗って顔をぺしぺしって」

「・・・馬車のすぐそばだったのか?」

「えっと、馬車の横でちょっと離れてたよ」

「ジーニ様って1歳だよな....」


 報告をした子供以外の避難民達が腕を組んで俯く。なんでみんな不思議がっているのかというとどう考えても1歳の赤ん坊が馬車の高さとはいえそこから兵士の頭に乗るのはジャンプをしなくてはいけないわけで...。それ自体はそれほど凄くないのかもしれないが少なくとも兵士の頭にたどり着いたという確実な真実に驚愕しているのだった。


「やっぱり熊とイノシシを仕留めてきたのも・・・」


 自分達が出した結論なのだが避難民達は首を傾げる。そして更に凄い事が分かった。


「・・・あの熊、グリズリーベアっていうBランクの魔物だったってよ」

「「「「「・・・・・」」」」」


 避難民達はその話を聞かなかった事にして解散したのだった。


「Bランクってな~に」


 そんな子供の疑問が小屋に木霊した。


 大人達はみんな知っている。魔物にはランクが設定されている、それは冒険者達に依頼するうえで必要となるランク。F,E,D,C,B,A,Sランクと存在するのだが人里に降りるような魔物はせいぜいBランク。AやSとなると神を彷彿とさせる体躯の魔物が報告されているが退治された報告はない。なのでBランクを一人で倒すと言うのはすでにA~Sクラスなのだ。


 大人達は子供の疑問には答えずにそのまま自分の小屋に帰っていった。ジーニの事は語られないと言う暗黙のルールが生まれた瞬間だった。


 



「ジーニ様今日もアステリアの皆さんの所にいくんですか?」

「ダーダー」


 僕が扉を猫のように掻いているとシリカさんが気づいてくれた。シリカさんはすぐに僕を抱き上げてみんなの所へ歩き出した。


 王都ではこのピアスをしているだけで目を引くようでシリカさんをまじまじと見てきている。本当は僕を見ているのだけどどうしてもシリカさんに迷惑が掛かってします。


「いいんですよ、ジーニ様。私は他者にどう思われようとジーニ様の味方ですから」

「うにゅ」


 泣いてなんかいないやい目にゴミが入ったのさ。僕は目をごしごしと擦り誤魔化す。シリカさんはそんな僕を見て微笑んでくれた。


 そのまま城門に向かう様に歩いていると建物の脇からガラの悪い男達が声をかけてきた。


「よう、お姉ちゃん御使いかい?そんな出来損ない捨ててこっちで遊ばないかい?」

「いい体してんな~」


 ガラの悪い男達は4人でシリカさんを囲む。むむむ、ここは私が!!


「待て!」


「誰だ!」


 声のする方を向きながらガラの悪い男達は声を荒らげる。そこにはローズさんが一人で立っていた。


「一人の女性を取り囲んで!それでも男か!」

「うるせい、そういうお前もいい体してるじゃねえか。まざりたいのか?」


 リーダー格の男がローズに近づき舐めまわすようにローズを見だした。するとみるみるローズの顔色が悪くなる。


「おい!、こいつ[薔薇]の....」

「もう遅い!!!」


 青ざめてローズに気付きそうだった男以外の男が宙に舞った。ローズが帯刀していなかった為命は助かったが男達の棒は役目を終えたようだ。


「おい!、お前!」

「はぁいぃぃぃ!」

「ゴミはどうするか知っているか?」

「ゴミは捨てます!」

「違うだろぅ!ゴミは燃やすんだ!」

「はぁいぃぃ!!」

「持っていけ!!!」


 生き残った男は残りの3人の男を器用に持ち高速でいなくなった。ローズさん怖い、汚物は消毒ってリアルで初めて聞いたよ、鼻息荒くローズさんは息をはいている。息を整えるとシリカさんと僕に向かって笑顔を向けて話し出した。


「シリカ、久しぶりだな」

「ええ、ローズも相変わらずね」


 あれ?二人共知り合いなのか?。僕が首を傾げているとシリカさんが笑う。


「ふふ、実は私達幼馴染なんですよ」

「ダウ?」

「シリカ、そんな赤子に話してもわからんだろ?」

「ローズ、ジーニ様は聡明な方なのよ。みんなの話していることがわかるの」


 シリカさんの説明にローズはそうなのかと首を傾げている。しかしローズさんの私服は何ともボーイッシュだな。ジーパンのような長ズボンに白いシャツで今にも雨が降ってほしい感じの服だ....ぐふふ。


「うお、何か寒気が」

「大丈夫?・・・ローズは今日非番なの?」

「ああ、皆が休め休めとうるさかったのでな。仕方なくだ」

「相変わらずね。ローズはいい人いないの?」

「は~?今男どもを蹴散らした私に言う?。相変わらずはシリカだろ」


 男と女ならば最高の幼馴染なんだろうなという感じの雰囲気が漂う。シリカさんもずっとアステリア家にいると思っていたけどちゃんと交流していたんだなと少し安心した。僕なんかにずっと付きっきりで自分の時間が無いと思っていたため僕は少し優しく微笑む。


「しかし、静かな子だな。こんなに騒いでも泣かないのか?」

「ええ、ジーニ様は生まれた時しか泣いていないわ」

「・・・・それっておかしいだろ?子供と言えば一日に最低3回は泣くんじゃないか?」

「ダウ?」


 二人に首を傾げて見られると僕は困ったように同じ方向に首を傾げる。確かに僕は生まれた時とピアスを開けられた時しか泣いていないような気がする。子供らしくない子だ事。


「ジーニ様は特別なんです」

「加護なしでもこんなに可愛いんじゃシリカも特別って言うよな」


 ローズ様お目が高い、そうでぇすわたくし可愛いんでっす。もっと褒めてもよろしくてよ~。


 ローズさんは特別加護なしの事を嫌っているわけではないようで[薔薇]の中にも加護なしを入れているそうだ。


 加護なしと行っても特別何かが出来ないとかではない。ただ多忙な神が判子を押すのを忘れただけだと僕は思っている。だが実際には経験値の溜まりが悪くて魔法関係がうまく使えないと言うものだ。完全に魔法が使えないというわけではないのでそれほど忌み嫌う意味はなさそうなんだけどね。


「それで?シリカ達はどこに?」

「あ~そうでした。私達はアステリアの人達の所へ」

「そうか、アステリアの人達は外なんだっけかな」

「ダーダー」


 ローズさんは僕の手を取り頷く。ローズさんもついてくるようで3人で城門の外に向かう。


 避難小屋に着くと僕たちに気付いたアステリアの人達に囲まれる。


「いらっしゃいジーニ様それにシリカ様」

「え?ローズ様まで・・・」


 近づいてローズさんにやっと気付いた人達は少し後さるとすぐに喜びが広がっていった。


「今日は大変豪華なお客様が一緒で。今日もいいイノシシが取れましたのでご飯を一緒に食べましょう」


 イノシシという言葉にシリカさんは僕を見たけど僕は口笛を吹く真似をして誤魔化すとシリカさんは僕の頬をつつき笑みをうかべた。


 実は僕がアステリアの人達の為に熊やイノシシを狩っている事をララさんにバラされてしまった。ララさん的には褒めてほしいという事でみんなに知らせてくれたのだがお母様とシリカさんにとっては危険なことをしてという心配が勝ってしまったようだ。


「イノシシ?アステリアの人達は逞しいな。ここらへんのイノシシと言ったらグレートボアとブラックボアしかいないはずだ。それを狩れるという事はBランク冒険者相当だな。ぜひ私の団に入ってほしい人材だな」

「「「・・・・」」」


 ローズの言葉にその場にいた人達は沈黙してしまった。そう言えば僕が狩っていた熊とかイノシシって魔物だったのか?この瞬間に初めて知った、確かに動物とは思えない体躯をしていたな~正にアニメに出てきそう大きさだもんね。

 

「ん?どうしたんだ?」

「・・・ああ~いえ、[薔薇]の方々には敵いませんよ。ささこちらでどうぞ」

「そうか?、ではありがたく、いただこうかな」


 この日はローズさんとアステリアの人達と一緒にご飯を食べて終わった。ローズさんは誰が狩ったのかと騒いでいたけどね。


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