第2話 この世界は

 あの事件から一か月、父が王城からアステリアの街に帰ってきました。


 執事のセバスと話したあと物凄いスピードで母の所に駆けこんでいき喜びの声が屋敷中に響いた。


「ジーニ!、お前はどうして....しかし残念なことにこのピアスは外せないのだ」


 父、ツヴァイは首を横に振った。魔法のピアスで落伍者の印をつけるのはこの国の法律。一度付けたら外す事はできないらしい。凶悪な魔法がかかってるねまったく。


「ダ~ダ~」

「お?大丈夫なのか?」

「ダ~ダ~」


 僕は首を横や縦に振り大丈夫だと父を慰める。父は初めて僕を抱きしめた。とても暖かく優しい抱擁に僕は涙があふれた。母も近寄り僕と父を抱きしめて泣いてくれた。


 不本意ながらあの強盗のおかげで母を元気にできた。ちなみにあの強盗達は犯罪奴隷となって鉱山で働いているそうだ。まあしょうがないよね。







 父と母と仲良くなってしばらくするとシリカさんが僕につきっきりになってしまった。


 どうにも目を離すとどこかに行ってしまうのではないかと思っているようだ。まだ1歳なのでそんな気はないが...。


「坊ちゃま、坊ちゃま、ジーニ様~」


 少し隠れるとこんな感じで名前を呼ぶ、目なんか涙を溜めて今にも零れ落ちそうだ。


「ダ~ア~」

「坊ちゃま!」


 シリカさんは僕を見つけるとすぐに抱き上げて椅子で一緒に昼寝をする。


「まあまあ、シリカはジーニが大好きなのね」

「ダ~」

「ふふ、いいわよ。私はあなたをすきにできる資格はないもの」

「ブ~」

「え?そんなことないって?ふふ、いいのよ。本当に許してくれた時で」


 僕は本当に母を許していたのだが母は自分が許せなかったようで頷かなかった。母はシリカさんに毛布をかけてあげると父の書斎に入っていった。


 そんな平和な日々が半年くらい続き僕ら家族は楽しく暮らしていた。


 そしてそれは起こった。







「メリア、すぐにジーニを連れて王都に避難するんだ」

「でも、あなた....」


 戦争が起こりこの街が最前線になるらしく。英雄伯の地位は武力によるもの、その為領土は敵国と隣り合わせ、いつかはこうなる定めだった。僕たちは離れ離れになってしまうようだ。僕ら家族と街の住人は王都に避難する為街道を行く。


 貴族の馬車に乗り僕らは先頭を行く。後方には馬車に乗れずに家財を持って歩く人達子供やお年寄りは荷馬車に乗せられ荷物と一緒に街道で王都に向かう。


「お母さんお腹すいた」

「あと少しで村に着くから待ってね」

「今お腹すいたの~」

「あと少しよ」


 そんな声が聞こえて僕は貴族の馬車から顔を出して見ると子供がこちらに手を振ったので僕も手を振ると子供が馬車から降りて近寄ってきた。よく見るとその子の耳にも僕と同じピアスを付けていた。


「コラ、お前。薄汚いてで馬車に触るな」

「ひ」


 僕の乗っている馬車に触ったとたんに兵士に怒られている。流石に怒り過ぎなので僕は窓から飛び出して兵士の頭にのっかる。


「な、なんだ!」

「ダ~ダ」


 頭から兵士の顔をペシペシと叩き窘める。兵士はすぐに僕を抱き上げて嫌そうな顔をするが身分が違い過ぎるため何も言わずに馬車に戻した。


 子供はお辞儀をして自分の馬車に戻って行った。可愛い女の子だったが服は汚れている、街は裕福ではないのがわかる。父は差別の強い人ではなかった。僕が生きているのがその証拠、それなのに民が飢えているという事は王都のせいなのだろうか。まあ行ってみればわかるだろう。


 ちなみに僕が本当は有能なのを知っているのは執事のセバスとシリカさんとララさん、あとは両親だけ、父の目が疑われることを嫌ったのだろう。自分の子供の事もわからないのかってね。


 僕の今のステータスはこんな感じだ


アステリア・ジーニ


 LV 1


 HP 5 [100倍(秘匿)500]

 MP 3 [100倍(秘匿)300]


 STR6 [100倍(秘匿)600]

 VIT5 [100倍(秘匿)500]

 DEX7 [100倍(秘匿)700]

 AGI5 [100倍(秘匿)500]

 INT4 [100倍(秘匿)400]

 MND3 [100倍(秘匿)300]


 スキル [神眼(秘匿)][超早熟][超大器晩成][匍匐の達人]


 称号 [小さくても力持ち][匍匐(ハイハイ)世界記録]


 とまあ少し頑張っちゃった。[匍匐の達人]は匍匐時の速度が3倍です僕のしているのはハイハイなんですが適応されちゃっています、更に早くなっちゃった。それに伴ってハイハイ世界記録を樹立しました。おめでとうそしてありがとう。


 ベテラン冒険者と同じくらいの強さですはい。


 ちなみに一般的な冒険者のステータスはこんな感じ。


冒険者(一般人)



 戦士

 LV 20


 HP 120

 MP 30


 STR100

 VIT120

 DEX100

 AGI70

 INT50

 MND40


 このステータスに天性のスキルや努力によるスキルで底上げされて行きます。これは戦士のステータスなのでご注意ください。







「伝令~」


 先頭で率いている街のギルドから派遣された傭兵団の団長に伝令をもった騎兵が走る。


 伝令を受け取った団長の女が仲間を連れて後方に走っていくその速度は馬に乗った仲間よりも早く僕は驚いた。


「綺麗なお方だ。あれがSランク冒険者で[薔薇]を率いるローズ様か~」


 白銀の鎧で赤い髪をポニーテールにしていて僕は見とれてしまった。[薔薇]とか言っていたけどそういうチーム名みたいなのを登録できるのかな?。





 ローズが後方に着き惨状を目の辺りにして打ち震える。


「何だこれは、どういうことだ」


 ローズは怒り、目の前の光景を否定している。


 一緒に避難していた住人達が盗賊に襲われていた。後ろにも団員がいたのだが多勢に無勢、盗賊達にやられて金品を奪われてしまったようだ。


「子供や女達は....連れて行かれたのか」


 女子供の死体が無い事に少しホッとしながらも怒りで震えるローズはすぐに盗賊を追跡しようとするが団員に止められた。


「ローズ団長!、ダメですよ。団長は皆を王都へ」

「だが....」

「お前はもう、団長なのだ。俺が行くからお前は王都へ皆を連れて行け」


 黒い鎧を着たガタイのいい男がローズの代わりに盗賊を追跡するようだ。


「わかった任せるぞガルド」


 ローズはすぐに先頭に戻る。僕はどうしようかな。


 神眼で見ていた僕はどうしようか悩む。赤ん坊という体躯は油断を誘えるが相手は盗賊、強いと分かったら容赦はないだろう。


「ブ~」


 僕はうなだれる。


「どうしたんですか、ジーニ様」

「ん、どうやら最後尾の住人が襲われたようです」

「それは本当なの?ララ」


 ララさんのスキルは神眼の下位のスキルという事が分かった千里眼という名前で効果も少し範囲が低くなる程度でレアスキルの類いだ。


「ララは馬車の上で警戒」

「シリカはジーニを抱きしめていて」


 母が僕がどこかに行ってしまうと読んでシリカさんで拘束する。こんなことされたら動けないよ...。


 胸に挟まれて身悶える僕はそれはそれは情けない顔になっているだろう、某有名な幼稚園児のように。


「敵襲~」

「盾持ち前へ」


 森に差し掛かったころララさんの敵を見つけた合図で敵を迎え撃つ。民を後方に避難させて森の中の盗賊を討伐していく。数はかなりの物だが不意をつけなかった事で戸惑いが見えた。これによりかなり形勢は有利に動いた。


 そしてしばらくしたらローズさんが帰ってきたので少し森が無くなってしまったが盗賊を一掃できた。ローズの剣戟は一振りで森を切り裂き軽く20メートルは伐採されているだろう。その時に盗賊の生き残りからアジトを聞き出すことができて[薔薇]の団員達がガルドと合流して討伐に向かった。


 ララさんが馬車の中に戻るとすぐに本を広げて読み始めた。本の題名は[親友とは]と書いてありどんな内容なのか気になって覗こうとすると隠された。ララさんは親友がほしいのかな?。


「ブー」

「ん、ダメ」


 ララさんは頑なに内容を見せない、何回か攻防を繰り広げたがまたシリカさんの胸で拘束され僕は動きを止めた。


「ん、ジーニ様はエッチ」


 ララさんはそういいながら自分の胸を見てため息をついていた。そして僕はララさんから不本意な称号をもらってしまったがシリカさんの攻撃からは逃げられない・・・だって男の子だもん。


 




 王都へは村を2つ経由してやっと着いた。約一週間かかりみんな疲れ切っていた。


 王都につくと僕ら家族は父の屋敷に入るのだが一緒に避難してきた人達は身寄りのある者はよかったのだがない人達は王都の壁の外に借りのテントのような布で出来た小屋で過ごすようだ。よく見るとみんな僕と同じようなピアスをしている、大人も子供もだ。シリカさんが少し前に話していたのだがお父様はなるべく加護なしの人達にも仕事を斡旋したりもしていてそれを聞いてやってきた人達も多くいたようだ。できればあの人達を守ってあげたいな。


 身分による差別の強い世界で平民は虐げられないようにするにはどうしたものか...と思っていると。


「あ~ローズ様のようになりたいな」「ローズ様は平民の希望だ」「俺も強くなってローズ様のように」


 王都を通るローズさんに対してみんな尊敬の眼差しを向ける。いい服を着ているものからボロボロの服をしている者まですべての人の視線を集めるローズ、今は白馬に乗っていて実に王子という言葉がぴったりだが女の方です。


「だ~う~」


 そうか、僕も強くなってみんなの見本になれるような人物になれば差別や奴隷制度をなくせるのかもしれない...。


 僕はこの時世界を変えると決意した。

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