5 新橋

 悠二は渡る。川幅一千メートルの河にかかった橋の上では、人々は所在なさげに身を対岸へと送っていく。自転車を走らせているものは、もはや地にも接していないので、何か大きな風がこの橋を横から撫ぜれば、花びらのような軽さで消し飛ぶのだろう。そう悠二は思うが、戯言に過ぎないことは重ねて理解している。橋に足を踏み入れ、渡り終えるまでのあいだに、どれだけのことができるか、彼にはそれだけが問題であった。

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