第15話:起死回生(3)
◇
その頃、麗奈は指のタトゥーが点滅する感覚で目が覚めた。
体を
そればかりか、着ていたズボンはおろか、下着さえ脱がされているではないか。
「やっと起きたか。これから楽しくなるぞ」
ホブはそういうと、ヨダレを垂らし卑猥な笑みを浮かべた。
「ちょっとほどきなさい! 医者にこんなことして、ただで済むと思ってるの?」
身動きの取れない麗奈が、精一杯の抵抗をする。
「俺は知ってるんだ、人間の女はこういう無理やりが好きなんだろ? みんな気が狂って逝きまくってたんだ。お前みたいな変わった女は、もう股濡らしてるんじゃないか?」
「何いってるの! こんなムードがないのは大っきらいよ。大体、あんた鏡見たことあるの? あんたみたいな清潔感ない男、全くタイプじゃないわ」
「ほう、そうなのか。でも最後には、お前も気がふれて、よがるんだろうな。ひっひっひ」
「馬鹿じゃないの? 人間は耐えられない苦痛から身を守るために気が狂うだけよ。ほんとは痛いだけだから、勘違いもほどほどにしなさい!」
「まあ、何とでも言え。それじゃあ、始めるぞ。俺のガキをいっぱい産ませてやる!」
辺りは死体しかなく、広い室内は静まり返っていた。
ホブがゆっくりと、腰布をほどく音がする。
なす術もなく、その瞬間を待つ残酷な時間であった。
真っ裸になったホブが、麗奈の足に触れ、覆いかぶさってくる。
ホブの口からは、腐った肉のような匂いと、強烈な体臭がした。
その瞬間、麗奈の全身に鳥肌がたち、嫌悪感から吐き気をもよおす。
「嫌ぁぁぁ、誰か助けてー!」
この部屋は重い扉で閉じられ、闘技場を見渡せる小窓すらもない。
10m近くの分厚い壁が、外に音を漏らすことはないだろう。
助けが来ないことは知りつつも、麗奈は必死に助けを呼ぶ。
その時、指の点滅が止ったような感覚があった。
もう光は消えてしまったのだろうか。
何故だか麗奈には、それが人生の終わりのように感じられた。
「じゃあ、一気に挿入するか。ぎゃはははは」
下卑た笑いを浮かべながら、ついにホブのモノが麗奈の中に入ってくる。
と、その時であった!
「俺は、無理やり女を手籠めにする輩が、一番嫌いなんだ!」
突然、どこかで聞いたことのある声がした。
ホブの後ろにはかすかな人影が見える。
その人影が近づくと、そこには全身血で染まった敬吾の姿があった。
「敬吾!!」
麗奈は、嬉しさと驚きで涙ぐみながら、大声でそう叫ぶ。
ホブは驚き、とっさに後ろを振り返った。
「お前は俺が殺したはず!? 心臓も止まったし、内蔵だって引きずり出したのに、なぜ……」
ホブは、亡霊でも見るように敬吾をながめ、固まっている。
麗奈は職業がら、即座に敬吾の全身をチェックした。
なんと、敬吾は全身血だらけにも係らず、体中どこにも傷がないのである。
さらに、潰されたはずの片目は麗奈同様、サファイアのように青く輝いていた。
「そういやお前には、やられた礼をしないといけなかったな」
おだやかに話す敬吾の言葉に、底知れぬ恐ろしさを感じる。
「だまれ! 俺がもう一度殺してやるまでよ!」
ホブはそう言うと、地面に転がる
一瞬、敬吾の姿が視界から消える。
次の瞬間、敬吾はホブの横に立ち、匕首を取り上げていた。
そして、その刀身を指でぐにゃぐにゃに曲げると、にぎり飯をこねるかのように、鉄をボール状に丸めてしまったのである。
「俺は、もうひとつ嫌いなものがあるんだ。それは、丸腰の人間に武器をかざして優位に立とうとする奴だ」
敬吾はそう言うと、丸めた鉄塊をおもむろに床へ落とした。
「だがまあ……、生き返ったばかりで機嫌がいいんだ。見逃してやるから、パンツを穿いてとっとと失せろ」
「しゃらくせー! お前は地獄へ戻りやがれ!」
そう言うや否や、ホブは皮水筒から何かの液体を口に含み、敬吾の顔目がけて毒切りを吐いた。
同時に火切り石で火を放つと、以前のように敬吾の上半身を燃え上がらせる。
「勝った! これで最後だ!」
ホブは手元にあった石製のメスで、敬吾の腹を切り裂いた。
しかし驚くことに、切りつけた腹部がファスナーを閉めるように、切った先から閉じていく。
よく見ると、上半身も焼けた皮膚が回復しながら燃えていた。
炎が鎮まると、やけど一つない綺麗な顔をした敬吾が言う。
「お前は、この先もずっと害を与える存在だろう。やはり、ここで死ぬべきだな」
そう言った途端、鼓膜を突き抜けるほどの
飛ばされた頭部は、絵の具の中身を叩きつけたように壁で潰れ、断片すらものこらない。
殴られた本人ですら見えなかっただろうが、敬吾のジャブが音速を超え、小鬼の顔に直撃したのである。
「敬吾~~~~~!!」
下半身裸の麗奈が敬吾に抱き着き、熱いキスをした。
敬吾は赤面し、くるりと背を向けこう呟く。
「こ、こっち向いてるから、その……下着とか履いたほうがいいと……思うぞ……」
「あら、ごめんなさい、そうだったわ」
そう言うと、麗奈が服を着はじめた。
「ところで、縛られてたと思ったんだが、どうやって縄を解いたんだ?」
壁を向いたままの敬吾が質問する。
「それが、分からないんだけど、起き上がろうとしたら、勝手にブチブチ切れたのよ」
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敬吾復活! 麗奈も能力に目覚めた。
そして、キラの死闘の行方は!?
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