第8話 衝撃の事実・・・




 午前の授業が終わり、現在は昼休み。

 昼飯を食うため、俺達は中庭に来ていた。


 いつも大体、アリスと亮とさやかの4人で食っている。


 のはいいのだが・・・


「はい、蒼ちゃん!あ~んして♪」


 いつも通り、アリスは俺に寄り添って俺に飯を食わせようとしている。


 いや、先日の俺のさやかに対するアタックのせいで、いつも以上にベッタリくっ付いている。


「だああああ!!自分で食べられるっての!」

「そんなに遠慮しなくてもいいんだよ?」


「遠慮じゃねえって!しかも、頼むから人前ではやめてくれよ!」

「ふふっ、そうやって焦る姿も・・・かわい~♪」


 やはり、アリスには俺の言葉は通じないようだ。

 俺が何を言っても、寝耳に水である。


「・・・いつもだけど、俺達は何を見せられてるんだろうなぁ」

「ほんとね・・・何で、これで付き合ってないと言い張れるんだろうね」


 俺達のやり取りを見ている・・・いや、見せられている亮とさやかが溜息を吐く。


「でも、こうして見ていると、ちょっと思い出して懐かしく感じるのよね・・・」

「ん?何をだ?」


「・・・ううん、何でもないわ」

「そ、そうか・・・でも、俺にも懐かしく感じる部分はあるんだよな」


「へぇ、亮くんもなんだ?」

「ああ」


 俺とアリスをそっちのけにして、さやかと亮が話し合っている。


 こんな光景に懐かしさも何もないだろが・・・

 つーか、2人だけで話し合ってないで助けてくれや!!


「そんな事はいいから、何とかしてくれよ!」

「いや、無理だろ?」

「うん、私達に2人の仲を引き裂く力は持ってないの・・・力及ばず、ごめんなさい・・・シクシク」


 おい、亮!即答かよ!

 せめて少しくらい考える努力をしやがれ!


 そして、さやかも泣き真似すんな!

 最初から助ける気ねえだろ!?


 さやかは(俺が勝手に)腕組んだ仲だろが!


「んふふ~。ほらほら、2人には私達が深い仲だってわかってるんだよ?もう色々と諦めて、素直に事実を受け入れて認めちゃおうよ♪」

「いや、素直も何も、そんな事実はありませんからぁ!」


 ある意味、確かに深い仲かもしれないけど・・・


 俺達は付き合ってないの!


 だって中身だけとはいえ、実妹とは交際出来ません!!


 ・・・・・


 とはいえ・・・

 こんなにすり寄られると、抱きしめたく・・・


 ・・・・・


 ちがああああああう!!

 違うだろ俺!煩悩を振り払え!


 アリスは妹、アリスは妹、アリスは妹・・・


 そして、そう!!


 俺はさやかだ!

 さやかと深い仲にならなければならないんだ!


「さ、さやか!俺はさやかに・・・」


 俺はアリスを引き剥がして、さやかの隣に行こうとするのだが・・・

 アリスが俺の腕を掴む力が強くて引き剥がせない・・・


 しかも・・・


「うう・・・ごめんね・・・私にはアリスから蒼太くんを引き剥がすなんてことは・・・シクシク」


 と、泣き真似を続けるさやかには、最初から俺を助けてくれる気はないらしい。


 ちっくしょお!!

 せめて助ける素振りくらいしてくれよ!!


 亮も我関せずを貫き通してるしよ!!


 誰も助けてくれないらしい・・・

 悲しい・・・


 仕方がないので自力でアリスから抜け出そうとしていると・・・


「恥ずかしがりやだから照れてるんだよね、智ちゃん・・・・は♪」


 と、アリスは楽しそうに呟いた。


 恥ずかしがってるわけじゃねえし!

 照れてるわけでもねえよ!!


 ・・・って、ちょっと待て!

 今、何て言った!?


 ・・・智ちゃん!?


「ちょっ、おいっ!」


 マジかよ!

 よりにもよって、2人の前で俺の前世の名前を出すなや!


 俺達の関係が、更に意味深になるじゃねえかよ!!

 俺を別の名で呼ぶなんて、何プレイしてんだって思われんじゃんかよ!!


「えっ?あっ!」


 アリスも俺の前世の名前を言ってしまった事に気が付いたらしく、しまったという顔をしている。


 そんな中・・・


『えっ!?』


 亮とさやかが驚きの声をあげ、びっくりした顔をしていた。


 ほら・・・

 言わんこっちゃない・・・


 こいつら呼び名を変えて喜んでる変態じゃね?とか思われたかもしれないだろが・・・


 と、俺は愕然としていたのだが、2人が驚いていた理由は違ったらしい。


「ね、ねえ・・・前々から、もしかしてとは思っていたんだけど・・・もしかして、もしかして・・・智樹と陽奈なの?」

『えっ!?』


 今度は俺とアリスが驚く事になった。


 え?はっ!?

 な、なんで、さやかが俺達の前世の名前を知ってんの!?


 俺とアリスは、あまりの驚きに何も言えずに固まっていると・・・


「私、私よ!」

「うん、さやだよね?」

「ああ、さやかだろ?何言ってんの?」


 さやかも気が動転して、訳の分からない事を言い始めた。


 ・・・と思ったのだが、次のさやかの言葉で俺達は更に言葉を失う。


「ち、違うの、そうじゃなくて・・・私は坂本綾香なのよ!」

『・・・・・』


 ・・・え?


 ちょ、ちょっと待って・・・


 さやかが言った名前って・・・


「ま、マジで・・・?」

「ええ、マジよ」


 ・・・・・


 坂本綾香・・・


 それは・・・


 俺の・・・


 前世の母さんの名前じゃねえかあああああ!!


 マジかよ・・・マジなのかよ!!

 驚き過ぎてもう、マジかよしか言葉が出てこねえ・・・


 驚愕の事実に、俺とアリスが茫然として固まっていると・・・


「えっ?さやかは・・・母さん・・・母さんなのか!?」


 俺達が困惑している中、亮がそう言いだした。


 はっ?

 こいつ何言ってんの?


 と、思っていたら・・・


「お、俺だよ!坂本正樹だよ!」


 っはあああああああ!?


 さやかに続いて・・・


 今度は・・・


 俺の・・・


 前世の親父の名前じゃねえかよ!!


 ・・・・・


 ちょ、ちょっと・・・

 ちょっと待て!!


 えっ?えっ?

 マジで理解が追い付かない・・・


「えっ!?亮くんはお父さんだったの?」

「ああ、そうだよ!」


 さやかは目を潤ませながら、亮にそう問い掛ける。

 そして亮は目に少しだけ涙を貯めながら、力強く頷く。


 え~と・・・


 ちょっと、理解する時間をください・・・


 さやかは前世の母さん・・・

 亮は前世の親父・・・


 ・・・・・・


 だああああああああ!!


 マジかよ!マジかよ!?

 どうなってんだよ!これ!


 俺があまりの事に、現実を受け入れられない中。


「よかった!母さん、また会えたんだな!」

「ええ、あなたと再び出会えるなんて!」

「うう~・・・ほ、本当に・・・お父さんとお母さん・・・なんだよね・・・?」


 亮とさやかは目に涙を貯めながら、手を取り合って喜んでいる。

 しかも陽奈まですんなり現実を受け入れて、目に涙を溜めている始末。


「ああ、そうだよ!間違いなく陽奈の父さんだ!」

「ええ、私も間違いなく陽奈の母よ!」

「うわぁ~ん、よかったよぉ!また出会えるとは思わなかったよぉ!」


 3人で抱き合いながら泣いている。


 ・・・・・


 取り残される俺・・・


 ・・・いや、だって仕方ないじゃん!


 理解が追い付かないじゃん?

 頭の処理が追い付くわけないじゃん?


 普通はそうじゃん!?


 そりゃあさ・・・


 俺だって両親と再び出会えたのは嬉しいよ?

 嬉しいに決まってんじゃん!!


 ・・・でもさぁ。


 まさか、家族そろって前世の記憶を持ちながら、なおかつ同い年に生まれ変わるとかさ・・・


 嬉しい以上に、困惑の方が強すぎて現状を受け入れる余裕がない・・・


 むしろ、何で3人は何も違和感もなく受け入れてんの!?


 まだ、アリス陽奈は元々歳が近かったから受け入れやすかったが、歳が離れていたはずの親父さやか母さんまで同じ歳なんて、もう違和感しかないじゃん・・・


 前世と外見が違う上に、同い年・・・

 どうみても喜劇にしか見えんのよ・・・


 そう考えて、俺は黙って3人を見つめる事しか出来なかったのである。



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