第9話 愕然とする蒼太・・・




 実は友人達が、母親と父親の生まれ変わりだと判明。

 そして、俺にとっての更なる衝撃の事実に気づく・・・


 ・・・あれ?

 ちょっと待って!?


 今世の俺の友人関係・・・


 前世の身内しかいなくね!?


 ・・・

 いや、ちょっと待って!?


 ・・・

 マジで・・・?


 いや、おかしくね!?


 せっかく新しい友達や彼女なんかを作ろうとした、バラ色の高校生活を夢見ていたのに・・・


 現時点で、俺と特に仲の良い友人たちが・・・

 前世においての核家族・・・


 ・・・・・


 何これ・・・

 前世の家族に会えた喜び以上に、悲しみで泣きたい・・・


 シクシク・・・


 っていうか、極小単位で纏まり過ぎだろが!!

 今の友人が、前世の身内しかいねえってどういう事だよ!!


 ・・・

 違う!違うんだよ!!


 俺は幅広い友人が欲しかったんだよ!

 なのに、なんでこんなピンポイントで前世の家族だけで集まってんだよ!!


 ・・・・・


 ああ、そりゃ家族と会えた事、それ自体は嬉しいさ。

 もう会えないと思っていた家族全員が揃ったんだからな!


 神様にいくら感謝しても、し足りないくらいだ!


 でもさ・・・


 せめて、別の形で会わせてくれよ!


 友人は友人、家族は家族だろが!!

 気持ちとしては複雑すぎんだよ!!


「おい、智樹。お前も家族の再会を分かち合えよ」

「そうよ、智くん。せっかく、こうして家族が再び出会えたのだから」

「そうだよ、お兄ちゃん!お父さんとお母さんに、また出会えたのに嬉しくないの?」


 さっきも言ったが、嬉しいには嬉しい。

 それは間違いない。


 ・・・しかし、しかしだ!


「・・・だあああああ!!ちょっと待て!今の俺は智樹でもお兄ちゃんでもなく、蒼太なの!!他人なの!!」


 せめて、前世の呼び方だけはやめてくれ!

 前世の親父や母さん、陽奈の姿ではなく、今世の亮とさやかとアリスの姿で俺の前世の名前を呼ばれてもさ・・・


 違和感しかねえの!!

 嬉しさ半減なの!!


 つーか、何で3人共・・・

 何の違和感もなく普通に受け入れてんだよ・・・


 ・・・


 ・・・あれ?

 ていうかさぁ・・・


 俺の友人として、親父と母さんが一緒にいたという事は・・・


 今までの学校生活をずっと共にしてきた・・・

 という事は、親に俺の学校生活を全て見られていたという事だよな?


 なんか・・・

 常に授業参観でもされていたような気に・・・


 ・・・・・


 やべぇ!!

 余計な事考えちまったよ!!


 そうじゃん!

 前世の親に、俺の学校生活全部見られてんじゃん!!


 そう考えると、すげえ恥ずかしいんですけど!!


 家族と一緒に学校生活を送るって何なの!?


 なんか、ほんとに色んな意味で泣けてきた・・・


「ふふっ。でもそうかぁ・・・蒼太くんに言い寄られても、戸惑いはしても嫌な感じが全くしなかったのは中身が智くんだったからで、アリスともすぐに仲良くなれたのも陽奈だったからなのね」


「ああ、俺も蒼太やアリスちゃんに初めてあった時から、ずっと親近感を感じて不思議に思ってた。さやかに対する愛情も、蒼太やアリスちゃんに対する慈しみも間違いじゃなかったんだな」


「私も、蒼ちゃん以外の男子にアリスなんて呼ばれたくないのに、亮君に呼ばれても嫌悪感がなかったのは不思議だったよ」


 3人は互いに感じていた胸の内を吐露している。


「お兄ちゃんはどうなの?」


 さっきから、特に何も語っていなかった俺に、アリスが心配そうな目で見ながら聞いてきた。


「い、いや、まあ・・・そりゃあ、親父と母さんに再び会えた事は嬉しいし、亮やさやかとは不思議と何があっても大丈夫な気はしていたけど・・・」


 実際、前世では事故という突発的な出来事のせいで、誰とも最期の別れを出来ずに一緒に旅立ったというのは心残りではあったさ。


 それが、こうして出会えた事は本当に感謝しかない。


 ・・・


 でもさぁ・・・

 だからといって・・・


 俺の唯一の友人に家族を収束させるとか・・・

 マジで酷くね!?


 今まで友人だと思っていたら、実は前世の両親だっとかさ・・・

 どんな拷問だよ・・・


 そして、それ以外の友達がいない俺・・・


 悲しい・・・


「そっか、そっかぁ・・・じゃあ、何も問題はなかったのね」


 さやか母さんはそう言うと、俺にピトッと寄り添ってきた。


「ちょっと、お母さん!お兄ちゃんに引っ付きすぎ!」

「ええ?せっかく、こうして出会えたんだからいいじゃない」


「そうかもしれないけど、そうじゃなくて!・・・どう見ても、お母さんもお兄ちゃんを狙っている目をしてるよね!?」

「うん?生まれ変わって、血の繋がりが無いんだから何も問題ないわよね?」


「問題ありまくりでしょ!!」

「え?そう?」


 何これ・・・

 何のやりとりなの・・・?


 ってか、アリスよ・・・

 それ、俺が散々お前に言ってきた事じゃねえかよ!!


「それに、お母さんにはお父さんがいるでしょ!?」

「確かにお父さんの事は愛しているわ・・・いえ、愛していたわ・・・でも子供とお父さん、どちらをとるかと聞かれたら・・・母は間違いなく子供を選ぶのよ!」

「うう・・・そ、そんな・・・か、母さん・・・」


 アリス陽奈さやか母さんには愛する親父がいると説き伏せようとするが、さやか母さん親父より俺・蒼太智樹を取ると言い出す。

 その言葉に亮はショックを受けている。


 ・・・・・

 本当に、何これ??


 外見は同じ歳であるクラスメイトのこのやり取り・・・・


 はたから見たら、意味不明なコント・・・

 もしくは家族ごっこ!?


 どちらにしても、頭いかれているようにしか見えねえよ!


 っていうか、さやか母さんよ。

 それはどう考えても、家族愛としてだろが!


 異性に対しての愛情は、親父に向けろよ!

 子供に向けんなよ!


「それに、智くんも私に好意を抱いていたのよね?だったら両想いなんだし、何も問題はないわよね♪」


 あっ・・・

 言われて思い出した・・・


 やべぇ・・・

 確かに俺は・・・


 さやか(の中身)が母さんだと知らずに、猛アタックしてしまっていたじゃねえか!!


「・・・ぬおおおおおおおお!!」


 驚愕の現実に気づかされ、俺は身悶える。


 ちげえ!

 いや、違わなくはないけど、ちげえんだよ!!


 それは、さやかはさやかだと思っていたからなんだよ!

 さやかが母さんだったのなら、話が違ってくるんだよ!!


 俺はマザコンじゃねえの!

 シスコンかもしれないけど、マザコンではないの!


 そりゃあ、母さんの事が好きか嫌いかを聞かれれば、好きだと答えるさ!

 でも、それは嫌いじゃないという意味でだ!


 そして、もちろん家族としてだ!

 普通に、母親に対する感情なんだよ!


 だから、さやかが母さんだと分かった今、アリスシスコンさやかマザコンのどちらを取るかと言われたら、間違いなくアリスシスコンを取る!


 って、違うわ!!

 どっちも取らねえよ!!


 もう勘弁してくれ・・・


 なんで恋愛対象が、前世の身内しかいねえんだよ・・・

 おかしいじゃん・・・


 そんな俺の嘆きも空しく、以前の俺がさやかにくっついていたのとは逆にさやかにべったりとくっつかれ、それに対抗してアリスまでくっついてきて、俺を挟んでの攻防が繰り広げられていた。


 そして亮は泣いていた。


 そんな中、俺は放心状態と化していたのであった。


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