第7話 蒼太の部屋にて



 他の作品も含めて、連日の暑さで脳がオーバーヒートを起こし、全くかけずにおりました。

 遅くなってしまい申し訳ございません。



 ―――――――――――――――





 その日の夜。

 俺は部屋のベッドで横になってゴロゴロしながら、TVを楽しんでいる。


 ・・・いや、言い直そう。


 ゴロゴロしながらTVを楽しみたい!


 しかし・・・


 俺の目には・・・


 視界一杯に広がるアリスの顔が・・・


 むしろ、アリスの顔以外見えません・・・


 なぜならゴロゴロする俺の真正面に、俺と向き合う形でアリスも横になっているからだ。


 しかも、俺の首に両腕を回し、抜け出す事も不可能な状態で・・・


「あの・・・アリスさん?・・・TVが見えないんですが?」

「うん、そうだね!アリスもお兄ちゃんしか見えないから、おあいこだよね♪」


 ・・・なんのおあいこじゃあああああ!!


 しかも部屋に来るなり、すぐに俺の事をお兄ちゃんと呼び始めるし。


 どんだけ、俺を兄として好きなんだよ・・・

 つーか、兄として見ているなら男性として見るんじゃねえよ・・・


 兄妹としての正しい付き合い方をしようよ・・・シクシク。


 そんな俺の嘆きとは裏腹に、アリスは少しだけむくれながら呟く。


「これはね、お兄ちゃんに対する罰なんだよ?」

「はっ?罰ってなんだよ?」


「だってお兄ちゃん、今日の浮気がひどかったから・・・だから、今はアリスだけを見ないといけないの」

「・・・・・」


 いや、浮気ってなんじゃああああ!!


 浮気どころか、俺に彼女はいないんですけどぉ!?

 アリスは彼女じゃないんですけどぉ!?


 つーか・・・


「いや、浮気も何もないだろが!そもそも、何の事を言ってんだよ!?」

「え~?今日、さやにべったりだったでしょ」


「それの事かよ!そもそも、お前は俺に彼女出来てもいいって言ったじゃん!?」

「うん、出来るものならね~♪」


「しかも、さやかなら大目に見るって言ったじゃん!?」

「大目に見るとは言ったけど、ベタベタしていいとは言ってないよね?さやとは彼女ではないのにベタベタしたんだから、これはアリスに対する浮気だよね?」


 ・・・・・


 もう何?

 その謎理論・・・


 そもそも、アリスとは付き合ってないの!

 だから浮気にはなりません!!


 ってか、俺がアリス以外の彼女が欲しいって言ってアリスもそれを了承しているのに、他の女性と接触したら浮気とか言われて怒られるとか・・・


 理不尽にもほどがあるだろうが!!


 しかも、アリスも俺と付き合ってないのに、ベタベタしてくるだろうが!!


「それとこれとは別だよ?」


 って、俺の心を読むんじゃねえ!!


 しかも、何でいつもそれとこれを別にすんじゃい!

 それもこれも同じじゃい!


「別じゃない!全く同じ事だ!・・・だから、アリス理論で言うならば、アリスも俺にベタベタするのはダメだろう!」

「何言ってるの?お兄ちゃん・・・アリスは適用外に決まってるでしょ?」


「何でだよ!何だよ、その自分ルールは!」

「え?だって、お兄ちゃんとアリスは結婚するんだから、もう付き合うとか関係ないよね♪」


「なんじゃそりゃああああ!!違う!俺達は結婚しないの!」

「ああ、うん、そうだよね」


 お、珍しく俺の話を聞いて理解してくれたのか?


「わかってくれたか?」

「うん・・・だって、すでに結婚してるんだもんね♪」


 全然わかってなかったあああああ!!


「い、いや、結婚してねえだろが!まだ結婚出来る歳じゃねえよ!」

「うん、だからそれは法律が悪いからでしょ?アリスとお兄ちゃんにはすでに心の繋がりが・・・すなわち、それってもうすでに結婚してるって事だよね♪」


 またサラッと法律が悪い事にしちゃったよ!この娘!

 なんて恐ろしい娘!


 い、いや、それ以上に・・・


「確かに心の繋がりは否定しない!しかし・・・しかしだな!それが結婚とイコールな訳ないだろが!」

「またまた~、お兄ちゃんったら照れちゃってぇ♪」


「照れてねえっての!」

「うふっ、ワタワタするお兄ちゃん、本当にかわいい~♪」


 そう言ってアリスは俺に頬ずりしてくる。


 もうダメだ・・・

 やはりアリスに、俺の言葉は通じないらしい・・・


 そしてアリスの頬ずりは素直に受け入れてしまう俺・・・

 ちょっと気持ちいい・・・


 じゃねえ!!


 いや、気持ちいいのは間違いないが、そういう事じゃない!


 受け入れてんじゃねえよ!

 このままだと、アリスと一直線にゴールインじゃん!


 さすがにそれだけは阻止せねばならん!


 そう思った俺は、アリスをべりッと引き剥がす。


「いいか!?何度も言うが、俺は妹であるアリス陽奈とは付き合わないし結婚もしないの!」


 俺はアリスの目を見て力強く告げる。


「・・・う~ん、そっかぁ」


 そんな俺を見たアリスは、少し落ち込んだように顔を下に向けた。


 ・・・あれ?

 言い過ぎた??


 と、アリスに同情するものではないんですよ・・・


 だってさ・・・


 アリスは顔を上げると、ニコッとして・・・


「じゃあ、お兄ちゃん?・・・お兄ちゃんの言い分はわかったから・・・とりあえず、チューしよっ♪」


 と訳の分からない事を言ってくるからだ!


 しかも本当に、俺に顔を近づけてくるし。


「いや、全くわかってねえ!!そして何でだよ!!」


 俺の話を理解してくれないのはいつもの事だが・・・


 それが何で、チューすることに繋がるんだよ!!

 意味が分かんなさすぎだし、脈絡がねえよ!!


 俺は徐々に迫ってくるアリスの頭に手をやり、押し返そうとするが・・・


 ・・・くっ!

 思いのほか力強い!!


 アリスのこんな細い体のどこに、こんな力があるんだよ!!


 俺が結構本気で押し返そうとしてるのに全然押し返せない。


 頑張って抵抗する俺に向かってアリスは・・・


「んもう!お兄ちゃん、今更だよ?」

「い、今更って何がだよ!」


「前世では散々チューしたでしょ?回数で言うと5ま・・・」

「いや!やめて!回数は言わないでぇ!!」


 だから!それ、俺知らないから!!

 俺の中ではキスの経験0ですから!!


 ・・・


 自分で言っていてむなしい・・・

 そして悲しい・・・


 なんで俺はそんな悲しい事を力説しないといけないんだよ・・・


 てか、マジで・・・

 俺の記憶にないのにそんなにされてるとかさ・・・


 俺の知らない所でムスコも大人になっていたらしいし・・・


 もうやばすぎだろ・・・


 だがしかし!!

 今世では色々と純潔を保っているのだ!


 それを易々と奪われてなるものか!!


 ・・・

 ある意味、それも虚しい・・・


 アリス以外に、俺には誰もいないって証明しているようなものじゃん・・・


 考えてみると前世から含めて、妹以外の女性と一緒に居た記憶がほぼない・・・


 まあ、中にはアリスによって遠ざかっていった女子も居た事が判明したわけだが・・・


 っていうか、それってもしかして前世から??


 ・・・・・


 うん、やめよう。

 前世の事をほじくり返すのは・・・


 考えれば考える程、虚しくなるし・・・


 アリスに聞かされてからの前世の事は、ある意味でトラウマだし・・・


 つーかさ・・・


「おい、アリス!いい加減諦めろぉおおお!」


 俺が思考にふけっている中でも、アリスとの攻防が続いていたのである。

 しかもこんな時だけ、アリスの異常な力が発揮されている為、徐々に顔が近づいてきているのだ!


「ププッ、諦めるのはお兄ちゃんだよぉ♪」


 そう言いながらアリスの顔が目前にまで迫ってくる。


 くっ!

 こうなったら仕方がない!


 俺は顔を反らしながら、アリスの頭を押さえていた手を離す。


 すると、アリスは勢い余って俺の顔を通り越す。

 そこで俺は、アリスを思いっきり抱きしめた。


 ふふっ!どうだ!


 これでアリスと顔を向かい合わせにならず、チューを迫られる事はないだろう!


「ふぅ、危なかった・・・」

「ちょっ!お兄ちゃん!?」


 アリスが俺の耳元で何か騒いでいるが、聞こえません!


 そして思いっきり抱きしめながら、さっきと同じようにアリスに頬ずりする。


「んっ・・・お兄ちゃん・・・」


 これは仕方がない事なんだ。

 アリスと頬ずりをしたくてしているわけじゃないんだ!


 アリスの気を反らすために・・・

 気を反らすために・・・


 ああ、気持ちいい・・・

 幸せだぁ・・・


 って、ちげえ!!

 確かに前世でも妹にこんな事をしょっちゅうしていたけどさ!


 今は兄妹じゃない他人の身体じゃん!

 こんな事してたらやばすぎだろが俺!


 そうは思うものの・・・

 正直抱きしめている体の柔らかさと、アリスの頬のもっちりすべすべ感がやめられなく・・・


「って、お兄ちゃん!?誤魔化されないからね!あっ、でも、お兄ちゃんのほっぺも気持ちいいから、これはこれで・・・」


 俺がトリップしかけている中で、俺の耳元でアリスが何か喚いている。


「でも、でも・・・今は、お兄ちゃんとのチューチャンス!だから泣く泣く諦めるの、アリス!」


 と、アリスは1人何かわけのわからない事を言っている。


「いや、チューチャンスって何だよ!!そんなチャンスはねえよ!俺は拒否ってるだろが!」


 アリスの言葉で、さすがに俺も我を取り戻す。


 だって意味わかんねえじゃん!?

 チャンスだった要素がどこにもねえし、そもそも俺はするなんて一言も言ってねえ!


 しかもそんな事を言われたら、尚更俺はアリスを離すわけにはいかんのだ!


 そう思って俺は、更にアリスを抱きしめ頬を押し付ける。


 何度も言うように、これは仕方の無い事なんだ!

 俺がアリスとチューしないためには、こうするしかないんだ!


 ・・・ああ、気持ちいい。


 い、いや、だから!そんな事はあるけど、ないんだよ!!


「んっ・・・って、お兄ちゃん!?・・・むぅ~、こうなったらぁ」


 アリスは俺の耳元で唸ったと思いきや・・・


「はむっ!」

「あひゃん!!」


 俺の耳たぶを口で甘噛みしやがった。

 それだけならまだしも、更にペロペロと舐めやがったのだ!


 おかげで変な声が漏れたじゃねえかよ!!


「ムフフッ、ふぉにぃひゃんおにいちゃんが・・・ハムハムッ・・・ふぁりゅいんどぁわるいんだ・・・ペチャペチャッ・・・ふぁらふぇからね~」

「ふぉおおおおおお!」


 耳たぶを更に口の奥に押し込み、かつペロペロしながら喋んじゃねえ!!


 何言っているのかわからんし、咥えられ舐められた気持ちよさに加え、喋った振動が直で耳たぶに伝わって、変な声が出ちまうじゃねえかよ!!


 しかも、耳を舐めるぺちゃぺちゃという音と、アリスの息遣いが直で耳に聞こえて艶めかしいんだよ!!


 だめだ!もう無理だ!

 もうこれ以上はさすがに、色んな意味で限界だ!!


 そう思った俺は無理矢理体を起こすと、抱きしめていたアリスをペイッとベッドに投げ捨てる。


 そしてアリスから俺の貞操を守るために、一目散に部屋から逃げるのであった・・・


「あ~ん、お兄ちゃ~ん!!」


 という声が部屋から聞こえてくるが、俺は知ったこっちゃないのである・・・


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