第十八話 再び依頼へ

 そして迎えた次の日、俺とリルとシルヴァは並んで依頼者の張り出されている掲示板の前に来ていた。朝早いということもあり、昨日みたいに報酬が内容に釣り合っていない依頼ばかりではなかった。やはり昨日は昼過ぎに行ったからあれだけ内容の悪い依頼しか残っていなかったのだろう。


 そして、今日の朝にシルヴァは冒険者登録したのだが、結果から言えばやはり例外に当てはまっていた。そのためSランクからのスタートになった。それを見たリルはまた文句を垂れていたが、そこは無視した。受付嬢も受付嬢で俺とシルヴァが一時的とはいえ、パーティーを組むと聞き、少しだけ興奮気味だった。なんでも七帝同士でパーティーを組むのは前代未聞なんだとか。過去に強大な敵を相手に何度か共闘することもあったそうなのだが、やはりパーティーを一緒に組むとなると、史上初らしい。まあ俺もシルヴァもそこには別に興味はないからリルの文句と一緒にスルーさせてもらった。


「それで、昨日は全然いい依頼がなかったのに今日は逆にいい依頼が何件もあって選び辛いわね」


 リルは腰に手を当てて依頼書を流し見しながら唸り声を上げていた。


「いい依頼が多くて悩むのはいいことなんじゃないか?昨日みたいに嫌な依頼ばかりで悩むよりはさ」


「それはそうだけどー」


 俺はチラリと隣で先ほどからダンマリを決め込んでいるシルヴァを見る。シルヴァは無表情で張り出された依頼を見ていた。やはりまだシルヴァが何を考えているのかわからない。正直言ってこの少女が本当に七帝なのかも疑っている。なんていうか放っておけないというか、目を離すと何をするか心配だ。


「なぁ、シルヴァ。そっちでいい依頼とか見つけたか?」


 俺がそう問いかけると、シルヴァはある一点を指さした。


「ん、これなんでどう?リルのランクにもあってるから受けられる」


「あたしのランクが低くて悪かったわね」


「別にそうは言ってないだろ。それで、どれだ?」


 俺はシルヴァが指さす方向を見る。



『       依頼書        』


《推定受注ランク》Eランク以上


殺戮蜘蛛キラースパイダー七頭の討伐


報酬 7000ゴールド


失敗のペナルティ なし


依頼条件 Cランク以上の冒険者を1人以上

     含むパーティーのみ受注可能



「これは、七頭で7000ゴールドか。一頭あたり1000ゴールド。穴兎五頭の討伐が1000ゴールドだとするとかなり破格の報酬だよな」


「確かにそうね。けどこの依頼条件ってのが気になるわね。一応私たちのパーティーは私以外がSランク冒険者だから条件はクリアしているわ。それでもなんで条件があるのかが気になるわね」


「受付の人に聞けばいい。それで解決」


「それはそうだけど、まあいいわ。これを受けましょうか」


 リルは一つ頷くと依頼書を掲示板から剥がす。それを受付まで持って行き、受注をしてもらう。


 獣人族の受付嬢は、大きなハンコをバンっと依頼書に押す。


「これで受注は完了になります。殺戮蜘蛛キラースパイダーが生息している場所はこの街の西門を出て森の中にある洞窟になります。くれぐれも気をつけてくださいね」


「わかった、それと一つ質問なんだがいいか?」


 俺は依頼者の一箇所を指して受付嬢に問いかける。


「ここの依頼条件ってところなんだが。どうしてこの依頼にはこれがあるんだ?」


 受付嬢は『あぁ、このことですね』と言ってから説明を始める。


「もともとこの依頼はEランク以上の依頼。つまり最低ランクの依頼だったんです。ですがEランクの人のみで構成されたパーティーだとあまりにも失敗が多かったので、この依頼にはこういった条件を付けさせてもらいました。この依頼だけでなく、他の依頼にも同じように失敗が続いた場合はこうやって条件を新たに提示しているのです」


 説明を聞いた俺を含めた3人は同時に何度か頷いていた。


 まあ確かにそうだと思った。失敗続きの依頼を同じ条件で張り出せばまた失敗する。そんなことバカでもわかる。それの対処としてこういった処置がされるのだろう。なるほど、理にかなっている。


「よし、謎も解けたことだし早速西門まで行くか!」


 俺がそういうと、2人はコクリと頷いた。


 それから俺たちはギルドを出て、西門を目指したのだった。


 この時の俺たちはまだ知らなかった。西門とは逆、東門から勇者一行が今まさに街に入ろうとしていることを。





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突然ですが、今回の話の補足をさせて戴きます。冒頭部分にあった『七帝同士でパーティーを組むのは前代未聞』というものがありました。その件についてですが、七帝の性格上プライドが高い、または自己中だったり面倒くさがり屋が多かったりといったさまざまな理由により、七帝同士でのパーティーを組めていなかったのです。

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