第四話 七帝とはなんぞや?

「それで、店主よ。話を元に戻してもいいかのぉ」


「誰が店主よ!私は魔王よ!」


 肩でゼェゼェと息をしながらブチギレている自称魔王様。


「今度はわしじゃな。わしの名はロラン・アーガイル。今は七帝の称号を持つ者よ」

 

 ケラケラと笑いながら改めて自己紹介をするロラン爺さん。というか七帝?


「爺さんのことはわかった。それで、七帝ってのはなんなんだ?」


「そうじゃのぉ。それについて説明しないとな。リアムにとっても大切な話だからな」

 

 俺にとっても大切な話?それはなぜなのだろうか?


 俺は疑問に思って首を傾げていると、爺さんが口を開く前にリルが話し始めた。


「まあ端的に言えばリアムがそこのボケ老人の後継者だからね」


「後継者?」


 そんなこと初耳だ。

 

 俺はキッと爺さんを睨む。すると、爺さんは軽く肩をすくめた。


「そう怖い顔をするでない。ただ言い忘れていただけのことじゃ」


 爺さんは『卵買い忘れちゃった!』くらい軽く言っているが、俺からしてみればその程度の軽い話ではない。なんせこれからの生き方がこれによって変わってくる可能性があるのだから。


「なぁ、爺さん。勿体ぶってないで早く教えてくれよ」


 爺さんはコホンッと軽く咳払いをしてから話し始める。


「まずそもそもの話、七帝というものを軽く説明しよう。七帝とはこの世界であらゆる分野に秀でた最強の魔導士にのみ与えられる称号だ。その中には氷帝、風帝、雷帝、地帝、聖帝、闇帝、そしてわしが賜った炎帝というものがある。基本はこの7つの称号じゃ。ここまではいいかのぉ」


 俺は少し気になったことがあったから挙手をする。すると、爺さんは「なんじゃ?」と問いかけてきたので、俺は遠慮なく質問させてもらう。


「その称号、七帝ってのは誰かの指示によって貰うのか?」


「それはないわ」


 答えたのは意外にも自称魔王様のリルだった。


「七帝ってのは古き神話の時代に定められた称号よ。それこそ、最初は何者かによって定められたそうだけど今は違う。今は七帝の称号を持つものがその目で直々に後継者を選ぶの。それで今回選ばれたのがリアムってわけ」


 なるほど、ここまではなんとなくわかった。


「それで、爺さんが俺を後継者に選んだってことは他の七帝の人たちも後継者を選んでるのか?」


「私が聞いた話だと炎帝、つまりそこのボケ老人以外の七帝はもう引き継ぎを完了してるらしいわよ」


「なに!?みんなもう引き継ぎが終わったのか!?」


 なんで爺さんが知らないんだよ。あんた仮にも炎帝の称号を持つ最強の魔導士なんだろ?


 俺ははぁっとため息を吐く。


「それで、他の七帝の人は引き継ぎが終わってるけど引き継ぐタイミングみたいなのはあるのか?」


「あぁ、それならあるぞ。七帝のうち最後に引き継ぎが完了してからちょうど五十年と決まっておる。まあ簡単に言えば最後に完了してから五十年後には次の後継者に引き継がなきゃいけないというわけじゃ」


「なるほどな、てことは前回の七帝の引き継ぎから五十年が経つのか?」


 爺さんはこの言葉に深く頷く。


「そうじゃ。じゃが、厳密に言えばそうとは言えない。期日まで後二年あるからのぉ」


「へぇ、てことは今代の七帝の後継は周りが少し早いってわけね。何か理由でもあるのかしら」


「あるならあるで、わしにも連絡のひとつくらいあるじゃろう。ないということはみんな七帝として持ち上げられることに疲れてしまったんじゃろうよ」


 本当にそうなのだろうか?まあそれは爺さんたちの話であって俺は別に関係ない。そもそも俺はまだ炎帝になったわけじゃないしな。


「で、ボケ老人のあんたもこれから引き継ぎしようってわけ?」


 爺さんは意外にも首を振った。


「さっきも言ったと思うが、ここにはリアムを強くするためにきた。いわば修行の場として選んだのじゃ。別に引き継ぎのためにきたのではない。それに、まだ二年ある。此奴には教えることはまだまだあるのでな。今の状態で引き継ぎしてしまっては他の七帝に遅れをとってしまう。それでは炎帝の名に恥じてしまう」


「なるほどね、ここで二年鍛えてから引き継ごうってわけね」


「うむ、そういうことじゃ」


 まあ今の話を聞いていてなんとなくわかった。とりあえず俺はこれから修行三昧みたいだな。


「そうと決まれば早速修行じゃ!行くぞ、リアム!」


「ちょ、待てよ爺さん!」


 俺は慌てて爺さんの後ろをついて行き、この玉座の間を後にしたのだった。





「そう、そうなのね。ふっふふふふ。やっと、やっと解放されるわ」


 誰もいなくなった玉座の間では、怪しげな笑いが一段と大きく響き渡っていたのだった。




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