第16話:VS魔法少女
「えーい! しつこいしつこいしつこい!!」
黒ワンピの少女が癇癪を起こしたように無数の魔法弾を放ってくる。
ようし、そうだ、それでいい……。
「あーらよっとぉ!」
威力の弱い奴は大盾で一気に弾く!
で、たまに混ざってるでっかいのは小盾でピンポイントで弾く!
「あんた勝つ気あるの!? ゴニョゴニョ女の方はいつの間にかいないし! ってあれ……?」
なんだ? 急に動きが止まったぞ?
「おい! どうした!? そろそろやめとくか? 俺もここらでやめとくのがいいと……」
「何これ……複合魔法……? あっ……根暗男……あんた……そっか……」
何かを悟ったような少女はこちらに杖を構えなおす。
「遊びは終わり。速攻で決めさせてもらう。最期くらいは見てあげたいの」
「? 何の話……うおっ」
ブーメランのような軌道で側面から魔法弾が飛んでくる!
更に地を這うような軌道で向かってくる魔法弾も見える。
まっまずい! いきなり冷静になりやがった。こんなん全部防げないぞ!
「ええい! 『次元の盾』! 解放!」
定期券を盾にセット! 辺りの空間を捻じ曲げて魔法弾の軌道を全て逸らす。
逸らしたはず……だったが身体全体に衝撃が加わる。
「ぐはっ!」
魔法弾が直撃した!?
俺の見間違いじゃなければ……今の魔法弾、時間差で加速してたぞ!?
なんて器用な……。
「あら? 頑丈ね? でもこれはどうかしら?」
宙に浮いた黒ワンピは既に馬鹿でかい魔法弾を生成し終えていた。
なんだあのサイズ! 『次元の盾』で歪めても意味ないぞあんなん!
「バイバイ」
膨大な魔力の塊が放たれた。
ゆっくりと、確実に、こちらに迫ってくる。
「『
当然のように割られる。まだだ!
「『
くそっ! 全部割られる! 止まらない!
パっと視界が変わった。
さっきまで正面に居た黒ワンピの背中が見えるってことは……転送魔法! コウか!
「お兄ちゃん! 良かった……!急いで帰ってきて……正解だった……」
「ナイスだコウ!で、ちゃんと持ってきたな?」
コクリと頷くコウ、その背中には大きな鎧を背負ってきていた。
「命拾いしたわね? でも次はないわ」
黒ワンピは無数の魔法弾でこちらを足止めして、再び巨大魔法弾の生成を始めている。
「なんか……あの子……雰囲気変わった……?」
「ああ! やたらと大人びてやがる! つえーぞ!」
「コウ! 後は頼む!」
盾で魔法壁を張りながら、声をかける。
「任せて……!!」
コウは腰の斧を持つと一気に鎧を引き裂いた。
ダンジョンに長く潜ってる俺ら兄妹は無用の長物を大量に持っている。
全部無限ロッカーに放り込んであるが、この鎧もそのひとつだ。
『抗魔の鎧』……非常に高い魔力抵抗を持つが、余りにも重い。
背がでかい俺が着ても尚大きいし、戦闘スタイルには合わないしで長くロッカーの肥やしになっていた一品だ。
コウは怪力と斧の斬撃でどんどん鎧をバラシて、無理やり成型している。
「よし……! 出来た……! 傑作……!!」
コウは鎧を使って蓋のような物体を作り上げた。
それはさながら、作り置きのご飯に被せておくプラスチックのアレみたいな見た目だ……。
「あれ? な、なんか思ってたのと違うぞコウ!」
「いいこと……思いついたの……! 後は任せて……!」
「お、おう……」
そう、俺はこの鎧の存在を思い出してコウを駅に帰らせた。
そして、コウのスキルを『達人ノ鍛冶師』に変えて……この鎧を盾に作り直して貰うはずだったのだ。
が、蓋になってしまった。
コウがパっと消える。そして黒ワンピの更に上空に出現した。
「あんたも懲りないわね!」
カウンターで待機していた魔法弾が放たれる!
「やあっ!」
それを蓋で防ぐ!
一緒に転送した俺が『抗魔の鎧』改め、盾で全部防いで、コウの怪力で一撃だけでも加える。
ここまでは俺の考えてたプランだが……。
コウはそのまま自由落下に身を任せて、蓋を真下に向けて落ちていく。
「あ、あれ!? 魔法が通らない!? ちょ、ちょっと!?」
黒ワンピが魔法弾を連射するも全て弾く。そしてそのまま……。
「きゃあああああああああああああああああああああ!!」
ズドーン! と黒ワンピごと地面に蓋がされた。
なるほど。俺には到底思いつかない作戦だったな……。
こう……雑すぎて……。
「ちょっと!? 真っ暗じゃない! 外しなさいよ!」
蓋の中から黒ワンピの声が聞こえてくる。
「あなた小さかったから……スッポリ入りそうだなって……上手くいって良かった……!」
コウがこちらにVサインを向ける。
よし! 結果オーライだな! 俺もサムズアップで答える。
「さーて、ちびっ子。後で色々と聞かせてもらうからな? コウ! 急いでゴートを探すぞ!」
「あんたたち! それなり男がどこに居るか、あたし分かるわ! 何でもするから、今だけは私も連れてって! お願いだから!!」
え?
俺とコウは顔を見合す。
こんな状況だ。罠としか思えない。
だが……嘘を言ってる風でもない。
これでも元教師だ。嘘をつく子供くらいはすぐ分かる。
「本当……だな?」
「ついさっきまで闘ってた相手だから信じられないのは分かる。でも信じて! お願い!」
ふー……。仕方ねえか。
「コウ、頼む」
「……分かった」
ズボっと地面から蓋が取り去られる。
黒ワンピースの少女も無事だったようだ。
「……感謝するわ。あっちよ!」
俺達は大体の方角を教えてもらって、少女と共に転送魔法で飛んだのであった。
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