第14話:新たな力
「シッ!シッシッ!」
「ぐっ……!」
黒ジャンパーの鋭いワン・ツーを右手の剣でギリギリ受け止める。
素早く後方に下がって槍の間合いにしたいのだが……。
「遅いっ!」
剣の上から、衝撃が突き通ってくる! 助走がついた渾身の右ストレート。
俺はたまらず、吹っ飛ばされた。
くそっ! こいつ速過ぎる……! 何をしても一瞬で間合いを詰められてしまう。
今は『運命』と『超反応』で何とか対応できているが……段々と速くなってる……!
だが、それなら、近付けさせなければいい!
「はぁっ!」
俺は剣と槍に炎を纏わせた。更に『神聖』スキルで自身に自己再生魔法をかける。
これで相手に確実にダメージを蓄積させ……っ!
「つまらんことをするな」
もう、間合いに入られていた。
俺は素早く後ろにステップしたが……顔に再びストレートをかまされた。
「ぐ……うっうう……」
自己再生魔法で顔の形がどうにか戻っていく。今のは……かなり効いた……。
だが……手応えもあった。
「やるな。俺の身体に傷をつけるとは」
こちらも槍で突いていたのだ。カウンター気味に奴の肩を刺していた。
こっちだって『決闘者』スキルのおかげで武器の扱いと戦闘の勘が飛躍的に向上してるんだ。
これで少しは速度が落ちてくれればいいが……。
手元の定期券をチラと確認する。
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武芸百般ノ神聖騎士団長⇔決闘ニ運命ヲ分カツ冒険者
経由 幸運ヲ揺蕩ウ鋼ノ超反応
2-11-15 まで
ガタン ゴウト様
―――――――――――――――――――――――――――――
やはり……期限が削られてる。さっきの一撃で約半年くらいもってかれたか……。
「さ、2ラウンド目を始めようか」
血が流れる肩を全く気にせずに、奴は拳を構えてフットワークを刻み始めた。
そしてそのまま高速で間合いを詰めてくる!先程よりも……さらに速い……!!
「嘘だろ……」
ここまで予測した俺は、すぐさま定期券を槍にセットした。
歪な衝撃音が鳴り響く。俺の身体に張り巡らされた防護膜は、確かに奴の拳を受け止めたが……。
「が、は……」
衝撃までは殺し切れていなかった。
腹に響く余りの激痛をなんとか踏みとどまって、足払いをしかける。
更に奴がそれを躱そうとバックステップした瞬間を狙って、槍を突き出す!
……が、上体を逸らして器用に避けられてしまう。まだだ!
槍にセットしたままの定期券に剣を当てて解放する!
「これでどうだっ!」
光り輝く剣で、斬り下ろす!!
「甘いっ!」
なんてことだ。あいつ……アッパーで剣を受け止めやがった……!
「シッ!」
奴はそのまま剣を受け流すと、三度目の右ストレートを放った。
防護膜に守られてはいるものの、再び吹っ飛ばされた。
あいつ……速度が速くなるにつれて威力もどんどん強くなっている……!
「はぁ……はぁ……はぁ……」
肩で息をする。これは本当に……まずい……!
「お前、まだ何か手があるだろ? さっさと出せ。全力での勝負じゃないと、勝利に意味が無くなる。」
「な……!?」
「分かるんだよ。本当に追い詰められた奴がする眼じゃない。俺が殺す前にさっさと出せ」
俺は……両手の剣と槍をその場に落とした。
「なんだ? タオルでも投げたのか?」
「いいや、3ラウンド目だ」
懐から黒い定期入れを出した。
もう……これしかない……! 俺の予想が正しければきっと……!
「頼む……! 成功してくれよ……!」
左手で漆黒の定期入れを開く。右手には俺の定期券に黒い定期券の両方を持つ。
定期入れの片面それぞれに二つの定期券をセット!
そして……そのまま閉じた。
「解放っっ!!!」
瞬間、ジリリリリリリリリリリリリリリリリリ!!!!とけたましいベルの音が鳴り響く!
俺の身体に黒炎が迸る。だがそれは、徐々に形を為していく。
黒炎は黒フードがついたローブとなり身体を包んだ。そして右手には黒い鎌が握られる。
そう……まるであの時の黒フードのように。
「なっ……!? お前それは……!?」
……予感はあった。俺の定期券は期限、奴らが言うところの『可能性』を使って『スキル合成』をすることが出来る。
それなら、この黒い定期券を黒フードが俺に渡したのは……。燕尾服が定期入れを渡したのは……。
定期券同士を重ねられることを知っていたからだろう。
定期入れを開く。
―――――――――――――――――――――――――――――
武芸百般ノ神聖騎士団長⇔決闘ニ運命ヲ分カツ冒険者
経由 幸運ヲ揺蕩ウ鋼ノ超反応
2-5-14 まで
ガタン ゴウト様
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救世ノ死神⇔黒炎ノ大魔導士
経由 完全ナル気配遮断
-∞
クライス=ロア=フィールド様
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2-5-14、2-5-13、2-5-12……徐々に俺の期限のカウントダウンが始まる。これも……分かっていたことだ。
これがある種の『スキル合成』なら、当然期限だって減る。
時間がない。俺は左手に迸る黒炎を生成し、右手の鎌を握り直した。
「お前を倒して……俺は生き延びる!!」
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