第5話:襲来


「さあ、何が出るかな?」


 期待に胸を膨らませつつ、券売機に定期券を挿入する。


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 期限:+0-3-20  スキル:鋼ノ意思  アイテム:スパイクブーツ

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「『鋼ノ意思』は危機的状況で立ち上がる力を与えてくれる……。なるほど、HP1で生き残るみたいな感じか。良いスキルだな」


 Eランクダンジョン「蛮族の兵営」をクリアした俺は報酬を吟味していた。


 そして、今回もスキル合成をして自己強化に励む。


「よし、こんなもんかな」


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 武芸百般ノ癒シノ聖騎士⇔第六感ヲ持ツ手練レノ冒険者

 経由 揺蕩タウ鋼ノ幸運


 2-2-15 まで

 ガタン ゴウト様


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 この2ヵ月G~Eランクをひたすらクリアした俺は、とうとう期限を当初よりも伸ばすことに成功した。


 そして自分で言うのもなんだが、相当に強くなった。Eランクでも結構余裕でクリア出来てしまう。


 クリアした勢いのまま、そのまま駅で乗り換えて次のダンジョンを目指す。


「次は―……不沈の大戦艦ー……次はー……不沈の大戦艦ー……お降りのお客様はー……」


 電光掲示板をチェックして、溜息をもらす。


「流石にCランクは無理だな……。もし失敗したらどれだけの期限を失うか……」


 想像しただけでも恐ろしい。


 しかし……うーん、やはり出にくくなってるな。


 最近、『ダンジョン電車』の「意思」のようなものを強く感じる。


 同じランクのダンジョンばかり挑むとそれ以下のランクが出にくくなる。これは分かっていたが、最近は明らかに以前よりも出ない。Fランクも出にくいが、Gランクに至ってはもはや出なくなった。


 それに加えてどのランクも獲得できる期限が少しづつ減ってるような気がするのだ。


 まるで高いランクに行かせようとしているような……。いや考えすぎか?


 そんなことを考えていると、またアナウンスが流れる。


「次は―…………戦場となった街ー次はー……戦場となった街ー……お降りのお客様はー……」


 電光掲示板をチェックすると……「戦場となった街 Gランク」。


 Gランク? 本当に久々だ。出るには出るのか? 俺の考えすぎだっただけか。


 座席から立ち上がり、開いた扉をくぐり、改札へと歩いていく。


 改札を通り、無限ロッカーに向かおうとしたところで、ほんの小さな違和感を感じた。


 あれ? 電車の遠ざかる音が……聞こえない? 後ろを振り向く。


「死んでもらおう」


 黒いフードの男が立っていた。


「えっ!?」


 驚くと同時に身体に尋常じゃない震えが走る。『第六感』がなくても分かる。攻撃が来る……!


 そう思った瞬間には既に俺の身体は吹っ飛んでいた。咄嗟に攻撃を受け止めた剣が弾き飛ばされる。


 なっ!? 今何をされた……!? あいつは誰……? いや今は……あいつから目を離したら、殺される!


 フードの男はこちらに手をかざすと何かを呟いた。その瞬間黒い炎が押し寄せるように迫ってきた。


 俺は右手を地面に当てると魔法の防壁を作り出す。『聖騎士』スキルのマジックシールドだ。


「ぐっ……! うううっ」


 凄まじい熱気で地面に当ててる手が焼けていく。だが、手を離したらどうなるかはこの激痛が教えてくれている。


 だったら……! 俺は左手で再生魔法をかける。こっちは『癒シ手』のスキル。更に『武芸者』のスキルで息を整えて、心を鎮める。


 まずは武器だ。少なくとも最初の一撃は剣で受け止められるものではあった。逆に言えば次に接近されたら丸ごしの俺は確実に殺される。


 熱気が弱まるのを感じる。今だ! 盾を解除し、氷魔法を黒い炎にぶつける。水蒸気が迸り、辺り一面を霧が包み込む。


『冒険者』スキルで主要な施設の位置はなんとなく分かる。手探りで無限ロッカーに辿り着くと、すぐさま今まで手に入れたアイテムを装備する。


 右手にはレアアイテム『信義の槍』、左手には『鋼の盾』。まるであの時の首無し騎士のような装備になった。


「なるほど、やはりスキルの合成は厄介だな」


 霧の中から声が聞こえてきた。こいつ俺の定期券のことを……知っている……!?


「だが、貴様は弱い」


 悪寒が走った。これは『第六感』!? まずい!!


 瞬間、怒涛の斬撃が襲い掛かった。辺り一面全てを切り刻んでいく。


「あっけない。こんなものか」


 俺は……その声のする方向に槍を突き立てた! 金属の衝撃音が響く。


「大人しく死んでおけばいいものを」


 フードの男は俺の槍を鎌の刃で受け止めながら呟く。


「こっちは大人しくしてたら本当に死ぬんでな。みっともなくてもしぶとく生き延びるって決めてるんだ」


 とっさに定期券で解放した『信義の槍』は俺の身体に強大な防護膜を発生させていた。


 お蔭で生き残れたが……こいつは……やばい……!


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