第2話:Eランクダンジョン 廃都キャンベラ

 


 不思議な定期券を手に入れた次の日、俺は朝からダンジョン電車に乗り込んで、お目当てのダンジョンに停車するのを待っていた。


「次はー廃都キャンベラー……廃都キャンベラー……お降りのお客様はー……」


 電光掲示板に目を向けた。『廃都キャンベラ Eランク』。よし、お目当てのEランクダンジョンだ。


 意を決して、開いた扉をくぐる。


 到着駅で装備とスキルの確認をする。まずはスキルからだ。定期券を眺める。


 ―――――――――――――――――――――――――――――


 元見習イ武芸者ノ見習イ魔法剣士⇔第六感ヲ持ツ見習イ冒険者

 経由 揺蕩タウ小サナ幸運


 0-4-29 まで

 ガタン ゴウト様


 ―――――――――――――――――――――――――――――


 合成で作った新スキルと短くなった期限を見比べて、期待と不安の両方が入り混じる。


 次に装備だ。『見習イ冒険者』スキルのお蔭で、以前よりも多くのものを難なく持てるようになっている。


 いつもの剣に加えてあと何か……。駅に備え付けの無限ロッカーをごそごそと漁る。携帯食料、煙玉、回復薬……今までのダンジョンで手に入れたアイテムをバッグに詰め込む。


 これで準備は完了。さあ、攻略開始だ!



 歩いていくと周りは廃墟だらけ。どうやらこのダンジョンは滅びた街らしい。歩いているとメキ…メキ…と聞きなれない音がする。


 目を凝らすと前方の地面が盛り上がっているのが分かった。そして手のようなものが出てきた! 俺は剣を引き抜いて構える。


 人型の……ゾンビのような化け物が這い出てくる。1、2、3、4……まだ出てくる! 6体のゾンビが俺を取り囲むように接近してくる。


 と、その時全身に悪寒が走った。 後ろ!? 感情のままに剣を後ろに突き出す!


 突き出した剣は7体目のゾンビを貫いていた。音もなく背後から忍び寄っていたのだ。危ない……! 『第六感』に助けられたな。


 それと同時に6体のゾンビが同時に襲い掛かってきた。俺はステップを踏んで、ゾンビ達の連撃を躱す。


 身が軽い! 決して素早くないゾンビの攻撃なら余裕で躱せるぞ!


 今度はこっちの番だ!


「やぁっ!」


 一気に間合いを詰めて前方のゾンビの胴体を薙ぐ。その勢いのまま左手で炎を放ち、真っ二つになったゾンビを二つの炎の塊に変える。


「はぁーー……おらぁっ!!」


 脚に力を溜めて前方に二連撃。先程作った炎の塊を熱さを感じる間もなく蹴っ飛ばして2匹のゾンビの顔面にぶつける。


「もらったぁっ!」


 怯んだゾンビを2体同時に切り伏せる! 残り3体! 抜群の身のこなしで3体の攻撃を躱す。爪、牙、溶解液……右左右右! その全てを躱す。


 俺は、ゾンビの爪が仲間のゾンビの頭に引っかかったのを見逃さなかった。ラッキー……! 剣に炎を纏わせて2体共焼き切った。


「これで最後っ!」


 残った一匹の胴体に寸鉄を入れる。グチャッ! 嫌な音がしてゾンビはバランスを崩した。そこにすかさず剣を突き立てた。


 終わった……。完勝だ! 昨日までとは全く違う自分の強さに驚いていた。


 スキルの組み合わせでここまで変わるなんて……! スキルの合成はとんでもない可能性を秘めてるぞ……!



 勢いに乗った俺はそのまま廃都を突き進んでいった。



 そして教会のような場所に足を踏み入れると……ジリリリリリリリリリリリリリリリリ!!! けたましい音がなる。


 教会の奥では金属の塊の何かが膝をつき、祈りを捧げていた。


 その何かがこちらを振り向く……あれは騎士……? 甲冑に身を包んだ首なし騎士が、地面に置いていた槍と盾をとり、立ち上がる。


 お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"!!!!!!!!! 声を出す口も無いはずなのに、とてつもない咆哮が襲い来る!



 俺は剣を構えた! 来い! お前を倒して俺は生き延びてやるぞ!!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る