第2章 ボッチ×コミュ障
幕間 水も滴るいい女子高校生
私は走る。
一人で走る。
雨の中を走る。
今日は本当についてない。新学期の初日だっていうのに、完全に寝坊だ。お母さんは何回も起こしたと言っているが、私は騙されない。なぜかって? そんな記憶どこにもないからだ。当事者の記憶は裁判でも重要視される証拠であり、その記憶がないのだから、お母さんが嘘を言っていることは明らかだ。恐らく、毎朝楽しみにしている某ニュース番組でグーを出すか、パーを出すか悩んでいたのだろう。まったく、正直に言えば許したのに。
朝の出来事を引きずりながらも私の脚色は衰えない。犬と一緒に散歩中のおじいちゃん、時間に追われているのか少し早歩きの会社員、コンビニ袋を片手に歩くジャージ姿のニート、そのすべてを追い越し私は走る。
その時、突然強い雨が降り出した。
嘘!? お母さん、今日は雨降らないって言ってたのに。また騙された!
突然の雨である。周りでは犬は吠え、会社員は折り畳み傘を取り出し、ニートは濡れたニートになる。
今朝に続き、母の虚偽報告は悪質を極め、もはや情状酌量の余地はない。判決―――ハーゲンダッツ購入の刑である。そんなことを考えながら、私は足の裏でコンクリートを蹴る。
最初のホームルームに遅れないように
雨にこれ以上濡れないように
過去の自分を振り払うかのように
新学期が始まった。私の運命を変えた新学期が。
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