21 ReAtack
Last one の
「暇だなぁ……」
FPS上級者で、人気配信者のナミ猫。
「なんでみんなして反対行っちゃうかねぇ」
元プロゲーマー、
「ここ、敵が来そうな場所なんですけどね」
Vfan所属VTuber
「まぁ、そんな日もあります」
そして最後の一人。ExplosionZ、Last one部門への加入が決定している
「あ、そういえばレアくん。もうすぐ全国だよね」
現在ExplosionZはアジア大会に出場しているが、ReAtackは選手登録のレギュレーションの問題で参加できていない。今は「
試合に出られないくらいだったら、リーダーとしてチームを率いる経験をしてこいと送り出された形だ。
ReAtackはアマチュアチームのアタッカーとして実績を積んでおり、プロ・アマ混合の大会で最多キルを獲得したことがある。その活躍を見込まれてExplosionZ に加入。日本有数のアタッカーとして、世界での活躍を期待されている選手なのだ。
そんな選手であるから、高校の大会では敵無し……と思われていたが、出場締め切りギリギリでとんでもない選手が参加してきた。
「ミナズキが出るやつな」
「僕が解説するんですよ。いやぁ楽しみだなぁエース対決」
「せっかく北海道・東北大会で33キル取ったのに、ミナズキちゃんに39キル取られちゃったもんねぇ。残念残念」
「……」
ナミ猫はここぞとばかりにからかってくるが、どうせ本気で言っているわけではない(多分)ので適当に聞き流しておけばいい。
「やっぱり気になるか?」
「それ聞きたいですね。何か解説で話せることないですか?」
「気にならないですし、ないです」
全く気にならないといえば嘘になる。伝説的な正体不明のプレイヤーなのだ、戦ってみたいに決まっている。
だが、この人たち(特にナミ猫)に話すと面倒くさそうなので、ここでは沈黙こそが1番の正解だと思う。
どうせ全国大会で戦うことになるんだから、話すだけ無駄だ。
「ホントは今日Bazzじゃなくてミナズキちゃんを呼ぼうと思ったんだけどさ、英美里ちゃんに断られちゃって」
「そうなんですか?」
「全国前だしな、ライバルと仲良くできないってか?」
「いんや、もうすぐ期末テストなんだってさ」
「あぁ……なるほど。ん?」
「そういやそんな時期なのか……あれ?」
Bazzと望海誠が何かに気が付いた。
「レアくん。ミナズキちゃんと同い年なんだよね」ナミ猫が問う。
「そうですね」
「もうすぐ高校生の全国大会だよね」
「そうですね」
「期末テスト、どこに行った?」
「……勘のいい猫は嫌いです」
◇◆◇
その数時間前、虹巻高校。
英美里は日課のエゴサをしていて、美波はぐっすりと眠っている。机に突っ伏している姿から、隠しきれない陰のオーラが漂っている。あればっかりは消せる気がしない。
ふと良い匂いがするなと思って顔を上げると、英美里の前の席に絵麻が座っていた。髪、メイク、服装。完璧に決めた陽キャ姿をしている。
「つかぬことを聞きたいんだけどね。美波の成績はどのくらい?」
もうすぐ行われる期末テストのことを心配してきたらしい。赤点が多いと補習が入る可能性がある。全国大会を控えた今、それだけは避けたいのだろう。
「平均前後かな?赤点は取らせないよ」
「取らせない……?」
「放っておいたら赤点だらけになるから」
「そうか……。いや、その方が安心なのか……?」
1年生の最初の期末テストを半分赤点で終えた美波は、英美里による地獄の補習を受けることとなった。それ以降、一度も赤点を取っていない。自信がない場合は自ら申告するので対策が可能だ。
「じゃあ、美波の成績のことは任せたよ」
「今回も問題ないわよ。ところで、絵麻と1年2人は大丈夫なの?」
「あたしは平均ちょい上くらいかな。すみれと雫は結構賢いよ」
「そ、じゃあ安心ね」
絵麻が平均以上なのは意外だと思ったけど黙っていた。
「そうなんだけど、今回ちょっと数学が自信なくてさ……」
「大丈夫?」
「英美里は自信ある?」
「私はいつも平均90点超え」
「…………教えてもらってイイ?」
さては、こっちが本題だな?
美波のことを探りつつ、上手いこと英美里に教えてもらう約束を取り付ける。これもコミュニケーションスキルといっていいのだろうか。上手に話を持っていくなと感心してしまう。
「いいわよ」断る理由もない。
「よかったぁ。ホント補習は回避したいの」
「どこでやる?」
「教室でいいんじゃない?誰かの家でもいいし。まぁまた考えておくよ」
「わかった」
「じゃあまた放課後よろしく!」
こうして放課後、美波と絵麻に勉強を教えることになったのだが……。終礼後にやってきたのは、絵麻と、その友人3人だった。
「みんなも分からないトコあるらしいんよね。一緒に勉強してイイ?」
英美里の後ろでは、美波が蛇ににらまれたカエルにように縮こまっている。
絵麻の後ろでは、絵麻に負けず劣らずの派手なギャルが3人立っている。
英美里は知った相手なのだが、美波には全員同じ顔に見えている。
「まぁいいけど」
「え?」
断ってくれないの?という疑問の「え?」が、英美里にだけ聞こえる声量で届けられる。
絵麻の友達なんだから悪い人ではないだろうし、たまには他の子とも絡んでみるべきだ。というわけで美波の抗議を華麗に無視して、計6人での勉強会がスタートした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます