18 決着!地獄のバスセンター!!
『確認しましょう。現在バスセンターには5チーム。元々整備場にいた
『そろそろ安全地帯からも外れるでしょうから、どのように決着が着くのか楽しみですね』
「美波。2階から撃てそう?」
「駐車場は無理。整備場はダウンなら取れるけどキルにはならない」
このバスセンター。ゲームの舞台として設計されているだけあって、廃バスや資材の置き方が絶妙だ。
本来、駐車場にバスを停めるのであれば向きを平行に揃えて並べるが、ここでのバスの役割は遮蔽物だ。あえてバラバラな向きに点在させてあるので、事務所の2階とはいっても好き放題に撃てるわけではない。
資材から頭ひとつ出てさえいれば、美波ではあればダウンを奪うことは可能だが、起こされてしまったり他の敵にキルを取られしまったりしたら、自分たちのポイントにはならない。
『僅かな膠着状態から第4の安全地帯が閉まりきります。そして次の安全地帯……やや南!駐車場が少し入ってますが、これは外れたと見ていいでしょうか』
『ですね。今なら整備場や事務所の裏手から車で抜けられますので、早く抜けないと次はないですよ。問題は誰が最初のダウン取るか。ですね』
複数チームの乱戦の場合、後から介入した方が有利だ。全てのチームが「誰か先に戦えよ」と考えている中、絵麻が決断を下す。
「さっさと駐車場を片付ける!そのあと整備場!美波、降りてきて。スモークで射線切って攻めるよ」
「おけまる水産」
「気に入りすぎですよ……」
『あ!Rainbow squad がスモークを投げてますね』
『そこが最初に動くのか。この決断はなかなか出来ないですよ』
これに驚いたのは駐車場のDOWADOWA だ。整備場の戦いが先だろうと思い込んでいて対処が遅れる。
「事務所来てる!」
近くのひとりが叫ぶが、すみれの近距離ショットガンがライフを削りきる。
ここで前にでるのが一年生ふたりの仕事だ。近距離武器で倒せればベスト、場所を特定して隠れればベター、倒されても美波や絵麻がカバー出ればヨシ!だ。
『前へでる前へでる!攻撃的だぞRainbow squad!』
その時、待ち構える敵の目が、煙と廃バスの隙間を横切る雫を捉えた。その雫を狙ってフルオートで乱射するが、流石に一瞬しか見えなかったため掠める程度しか当たらない。
仕方なくリロードをしたその時、雫の後ろを走ってきた絵麻と目があった。「あ」と言うとほぼ同時、絵麻の放った5.56mmの銃弾が全身に突き刺さりダウン。
『これで4vs2!』
『カバーが完璧です』
『整備場でも戦いが始まっているぞ!』
整備場での銃声を無視して残りの敵を探す。
雫とすみれがスモークを抜けたとき、敵がふたり眼前に現れた。美波と絵麻はまだスモークの中。つまり瞬間的に2vs2の状況になる。
「右!」
すみれの声に反応して、見えている右側の敵を撃つ。それぞれのショットガンは掠めた程度だったが、2つ当たれば倒すことも可能だ。
2人でひとりをダウンさせたが、敵はまだ残っている。その敵から銃撃をうけてすみれがダウン。敵がもうひとり──と狙いを変えたところで雫が後ろへ下がり、煙の中へ消える。
それとすれ違いに美波と絵麻が顔を出す。
「これは無理ゲーだわ」敵が呟く。
『DOWADOWAが全滅!これでRainbow squad は9キル!』
「整備場が静かになった!戦闘終わったかも」
その時、近くでカンッという音がした。
「っ!!グレネード!」
ドン!と爆発音。その後にいくつもの手榴弾が落下する音が続く。
整備場で勝ったチームが、ありったけの手榴弾を投げまくっているのだ。
『投げる投げる投げる!CHIBA saikyo の絨毯爆撃がRainbow squad を襲う!』
『単純な手ですけど、これが効くんです』
「うおぉう!近い近い!雫、一旦離れて!」
雫がすみれを起こそうとするが、この爆撃の中では散開した方が良い。なるべくバスに近づいて耐えるが、直撃しなくても少しずつダメージを受けてしまう。
「何個あんのよ!これマズイ?」
『さぁ耐えられるかRainbow squad !』
3チームが貯めに貯めた手榴弾が降り注ぐ。
すみれの確定キルが入り、雫もダウンしてしまう。
一方で投げるCHIBA saikyo はノリノリ──いや、ヤケクソだった。
「全部投げろ!」
「当たれ当たれ!」
「こんだけ投げりゃあ例えミナズキでも……あん?」
投げまくる一行の眼前、未だ視界を遮るスモークの中から浮かび上がるように、ひとりのプレイヤーが姿を見せた。
直感で分かる。ここで前へ出てくる奴は、絶対に強者である。
「っ──!!」
ミナズキだ。そう言葉に仕掛けた瞬間、自分のライフが溶けるように無くなった。
倒されたのだと、そう気が付いた時には隣の味方もやられていた。画面の左下にあるチーム分のライフバーが、信じられない勢いで消滅する。
生き残っていた3人のライフを削りきるのに、1マガジン30発の弾があれば事足りた。
「終わり。移動しよ」
『うおおおおおぉぉぉ!一瞬!CHIBA saikyo が一瞬で全滅!』
『うわぁ……』
「雫、起こせそう?」
「無理です。もう煙が晴れて射線が通ります」
「おけ。美波、回復したら整備場裏の車で移動ね。運転して」
「ん」
誰かが乗ってきた3Boxの車に乗り込む。助手席に絵麻が座ると、アクセルと踏む。
「近くの家は敵が見えたから、思い切って真ん中の家まで行こう!」
「おけまる水産」
「なんでそんなに余裕なのよ……」
現在地は安全地帯の12時方向だ。そこから外周沿いに時計回りに3時方向へ走る。
外国の車なので左ハンドル、つまり安全地帯の中心から撃たれた場合、まず助手席の絵麻に当たることになる。
ガガガガガと鉄と鉄がぶつかる音が響く。実際は家庭用自動車のボディでアサルトライフルの弾は防げないが、Last one の車は全て防弾仕様なのか、弾く。
わずかな起伏が車体が上下させ、そのおかげでいくつかの弾が逸れていくが、それでも何発かは窓から入ってくるので、絵麻のライフが少しずつ減る。
3時方向から中心の家へハンドルを切る。が、そこで絵麻が頭に致命傷を喰らって脱落。
構わずアクセルを全開にして家へ突っ込む。
『残りひとりとなったminazuki選手!向う先の家にいるのは茨城1位
『Mito ibaraki は生き残りが二人ですから、到着する前に倒せればいいんですけど』
美波は冷静に家を見る。
1階と2階にひとりずつ──。
走る車の運転席から上体を乗り出すと、マズルフラッシュが見える1階の窓へAKMをフルオートで放つ。
「は?」
まさか当たると思っていなかった敵がまぬけな声で倒れていく。
そのまま家に車をつけると中へ。回復を後回しにして2階へスタングレネードを投げる。
敵も閃光を避けようと後ろを向くが、これぞ完璧。というタイミングで美波が乗り込んでそのままキルを奪う。
これでチーム合計で14キル。
『おいおいおいおい誰か止めろおお!』
『これは、手が付けられないですね……』
ようやく落ち着いた美波は、ゆっくりと回復に徹していた。画面ではキャラクターが包帯をぐるぐる巻いている。
死んだあともVCで話すことができるので、絵麻が話しかけてきた。
「キリ良くあと1キルくらい欲しいね」
「うん」
「先輩!楽をしたいのでたくさん貯金作ってください!」
「お、可愛い1年生が言ってるよ?どうする?頑張っちゃう?」
「え?あぁ、うん」
「さっきまでの余裕はどうしたんですか……」
「善処します」
「そこはおけまる水産じゃないんだ……」
「そうだった!」
『さぁ残り6チーム!試合は終盤です!』
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