17 激闘!地獄のバスセンター!

「車来ます。北から」雫の報告が飛ぶ。

「整備場で止めるよ!すみれはそのまま」


 南を警戒するすみれを残して、残り3人が北側の整備場へ向かう。

 安全地帯が狭まってきて、入る場所に迷ったチームがバスセンターを取りに来たのだ。


『始まりますよ!Rainbow squad のバスセンターに群馬2位のnebouねぼう mastersマスターズ が乗り込みます』

『minazuki選手は事務所にいましたから合流に少しかかります。整備場に乗り込むまではいけそうですね。さて、どう捌くか』


 バスセンターの正規の入り口は南側に2箇所と、東にある事務所裏手の従業員入り口だ。周囲はフェンスで囲われているのだが、何故か何箇所が穴が空いている。そのため、全部で10箇所ほど侵入できる場所がある。

 今回の敵は北側、整備場の裏手から攻めてきた。ここもにドアがあって侵入できるのだ。


 3台の車が乱暴に停められて、次々に人が降りてくる。

 整備場裏手のドアは4つ、そのうち1番近いドアは絵麻が投げた火炎瓶ですぐには入れない。


『いい時間稼ぎですね。火が収まるのを待つか他へ回るか、選択を迫りましたね。でも、迷っていると遠くから撃たれますよ』

『どうするかnebou masters。お、違うドアから侵入しますね。しかしそこにはショットガン!』


 隣のドアでは、雫がショットガンを構えて隠れている。ショットガンはすぐ近くで撃てば1撃で倒すことが出来る。


「雫、足音そっちに行ってるよ」

「はい」

「ブチかませ!!」遠くにいるすみれが叫ぶ。


 敵が侵入してくる。先頭がドアをくぐったところで、雫がショットガンを撃った。

 ベカス12M。ロシア製のポンプアクション式ショットガンだ。

 散弾が直撃し、ひとりをダウンさせたところで雫は少し下がる。ショットガンで複数人を同時に相手するのは難しい。

 次の敵が前へ出てこようとするが、絵麻の投げた手榴弾が近くに落ちて、その音を聞いた敵がすぐに下がる。

 腹の底を震わせるような爆発がする。新たなダウンは取れなかったが、雫がダウンさせた敵の確定キルまでは取ることができた。チーム初キルだ。


『これでRainbow squad1キル獲得』

『minazuki選手が整備場へ到着しましたね。これでnebou mastersは厳しくなりましたよ』


「まだ来るよ!警戒して!」


 敵は壁の向こうへ一旦引っ込んだが、壁からは着弾音が聞こえてくる。どうやら遠くから狙撃されているようだ。

 もう一度侵入してきたら美波の射線が通る。どうやら対処できそうだなと思ったその時──。


「別チーム西から!」


 すみれの報告が飛ぶ。

 リーダーの絵麻には素早い決断が求められた。戦いが長引いて別チームに介入されれば全滅まで有り得る。


「ちっ。全員事務所まで引いて」


『新たに群馬1位のDOWADOWAドワドワがバスセンターへ!それを見たRainbow squad は事務所へと戻っていきます』

『正解ですね。今の位置は挟まれた時に射線が通り過ぎます』


 事務所は大きな2階建てで、正確には1階にロッカーや休憩所、2階が事務所だ。

 別チームは南の入り口から駐車場へ、廃バスに車を付けて遮蔽物にする。そうすれば事務所と整備場から撃つことはできない。


「雫とすみれは1階にいてね。あたしと美波は2階。少しでも敵の数を減らしたい」


 美波はスナイパーライフルで駐車場を睨む。ボルトアクション式なら頭に当てれば一撃だ。

 廃バスの裏では4人のプレイヤーが回復アイテムを使っている。


「さっきのログ見たか?ミナズキがいるから頭を出すなよ」


 DOWADOWAの4人は伏せて息を潜め、nebou masters は整備場へ侵入して様子を窺う。

 これで3チーム……。


「膠着しちゃった……」

「安置変わります」


『4つ目の安全地帯は……やや南ですが、バスセンターはまだ入っています』

『北の外れたチーム、どこ行きますかね。一見バスセンターのようにも思えますが、そこは悪手です』

『今更入れないとうことですか?』

『そうです。あ、でも』

『行きましたね。埼玉1位のDARKSHOTダークショット


「北東から来ます」雫が気付く。

「そこで迎え撃って!うちらも降りるよ」

「わかった」

「おけまる水産!」

「了解です」


 絵麻が素早く指示を出して準備を整える。

 進路的に事務所の裏手から侵入するつもりらしいが、そこは従業員用の出入り口だ。狭いドアがひとつしかない。4人で構えていれば穴だらけだ。

 ドアの外側にスモークを焚くと、視界が遮られて更に侵入し辛くなる。

 だか適は南東の丘から射線が通っている。間を空けずに来るはずだ。


「ところで、おけまる水産ってなに?」

「月島先輩⁉」

「え!?今言わないで!!」

「来ますよ!」


 直後、煙の中からスタングレネードが投げ込まれる。直視してしまうと閃光で目の前が真っ白になってしまうが、後ろを向けば避けることができる。後ろを向いている間に攻撃されれば当然無防備だ。

 だが、美波ほどの実力者にもなれば、最小の動きと完璧なタイミングで前を向きなおすことができる。しかも敵は高校生だ。飛び出すタイミングは完璧とはいえない。

 美波が閃光を避けて前を向きなおしたとき、飛び出しの早かった敵が顔を覆って立っていた。仲間のスタングレネードが刺さったのだ。

 素早く左クリック。

 フルオートのAKMが瞬時にライフを削りきると、やや遅れて入ってきたもうひとりにエイムを向けてダウンさせる。


「2ダウン」


 さらに遅れてもう二人。

 だが既に4人全員が前を向き直している。2丁のMP5とAKM、FAMASからフルオートで100を超える銃弾が降り注ぎ、敵チームはなすすべもなく全滅となった。

 最初のスタングレネードからわずか5秒。


「うし!」

「整備場にも来てるみたいね。様子見て介入するよ」

「了解です」

「了解です」

「美波も大丈夫?」

「あ、そうか」

「どうしたの?」

「こういうときに、おけまる水産?」

「美波……いや、正解なんだけど……」

「月島先輩って、戦ってるときの方が冷静ですよね」


『さあ事務所は早期に決着。ですが整備場では2チームが突撃しています!3チームが大乱戦!そこに駐車場にいたDOWADOWAが嫌がらせのようにちょっかいを掛けています』

『これは地獄ですね……しかもRainbow squad も来ますよ』

『現在バスセンターは全部で5チーム!どこが勝ち抜けるのか!』

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