07 with ナミ猫①
「やっほーボクだよ!ナミ猫の配信へようこそ!今日はお待ちかね、ミナズキちゃんコラボの回だよ!」
:きたあああああ
:待ってた
:やっほー
「みんな待ってただろ?知ってるぜ。さあさあご紹介しましょう!こんばんわー」
「あ、どうもミナズキです。お願いします」
:きたあああああああああ
:声が若い
:ついに邂逅するのか
:伝説的
「おい、声が若いって言った奴。それは誰かと比べての話か?」
:草
:草
「まぁいい。ミナズキちゃんには色々聞きたいことがあるけど、一旦ゲームの方いこうか」
「分かりました」
スタートボタンを押すとマッチングが開始される。
今日は2人パーティでスクワッド戦に挑む予定だ。当然人数では不利だが、ナミ猫もエースを何度か踏んだことがある上級者だ。
早々に飛行機から降下し、マップ中央やや西寄りの山の頂上にある展望台へと向かう。ここは4人でアイテムを漁るには狭いが、ふたりならそれなりに揃う場所だ。
「ミナズキちゃんはさ、好きな武器ある?」
「……特に、ないですね」
「弘法は筆を選ばずかぁ。そういえばこの前P90使ってたよね」
「そういう日も、あるかもです」
:あったね
Bazz:俺が殺されたときな
:本人いて草
:Bazzもよう見とる
配信で度々ミナズキとマッチングし、毎回コメントで倒しにいけと言われる人だ。
「あ、Bazzさんだ。そうだよね。先月くらいのアーカイブで見たよ」
:Bazz瞬殺
:それ見た
「ちなみに私は……やっぱりAR(アサルトライフル)とセミSR(スナイパーライフル)の組み合わせかな」
このゲームにはたくさんの銃器が用意されている。拳銃からショットガン、サブマシンガン、アサルトライフルにスナイパーライフルなどがある。
メイン武器として2つの銃と、サブに拳銃を一つが装備できるようになっている。広いマップで戦うことになるので、遠距離用のSRと、近~中距離を戦えるARの組み合わせが一般的だ。
サブマシンガンやショットガンは近距離では使えるが、開けた屋外での中距離戦闘には向かないのでゲーム内ではあまり使われない。
ちなみにP90は、ベルギーのFN社が開発したサブマシンガンである。装弾数が多さと変わった形状が有名で、アニメ化もされたライトノベルの主人公が使っていたことでも知られている。
「いい武器あった?」
昨日の挨拶で美波がどういう人間か理解したのだろう。ナミ猫は気を利かせて色々話しかけてくる。
「とりあえずAKMとP90がありました」
「そうかぁ。ボクは
AKMとFAMASは共にARだ。近距離から中距離まで戦える主力武器としてそれなりに使われている。
Mk12はセミオート式のスナイパーライフル。ボルトアクションと違って連射が可能なため、ゲーム内ではかなり使われる。
「もうちょっと漁りたいけど、せっかくのミナズキとのパーティだ、戦って奪おうぜ!」
:いえええええええい
:それでこそ
:早くみたい
「安置はボクたち側に寄ったし、銃声の聞こえる所に行こうか」
「はい」
展望台にあった車に乗って山を下りる。西の海岸には漁村があり、ちょっと北に行けば町がある。東には学校と小さなスタジアム、その奥には大きなマーケットだ。どこへ行っても敵はいるだろう。
東に車を進めると、学校の方から銃声がした。少し高い丘に車を止めて望遠のスコープで様子を探る。
「学校の中だね。終わる前に突っ込もう」
「はい」
そう言うと車に乗って学校へ突っ込む。エンジン音を立てて近づいていくが、敵チームにも聞こえるが、目の前にも敵がいるので邪魔をすることが出来ない。
車を学校の横につけて窓から廊下へと侵入。
「足音は上だね。多分2階かな?」
「はい」
この学校は両端と真ん中に階段がある。ふたりは南側の階段から2階へ上がるり、廊下の様子を探る。
「警戒されちゃったね。銃声が止んだよ」
パン!というスタングレネードの音が聞こえる。やはりこの階に敵がいるらしい。
「敵さんは中央階段を挟んで向かい合ってるみたいだね。真ん中にスモークを炊いて手前から倒そう」
「はい」
ナミ猫がスモークグレネードを廊下の奥の方へ投げると、中央階段の手前に煙の壁が出来る。
続けて1番近くの教室にスタングレネードを投げ込み、一気に飛び込む。
敵は二人。片方は顔を手で覆っている。このゲームでは、強烈な閃光で視界を奪われると、そういうモーションに入っていしまう。
もう1人は後ろを向いて避けられていたが、後ろを向いているせいで銃を構えるのが遅れる。
美波とナミ猫は示し合わせたように閃光を避けた敵を狙う。2種類の銃声が敵を蜂の巣にし、続けてスタンを食らった方も倒す。
「こいつらは2人で終わりみたいだね。じゃああとは廊下の奥の……」
その時、窓ガラスを突き破って手榴弾が投げ込まれる。
ドン!という地面を揺らすような爆発音が響く。投げ込んだ場所が距離があったのでダウンまではいかなかったが、ふたりともライフが大きく削られる。
「ここで詰めてくるか。敵さんやるねぇ」
3人の敵が一気に教室へ飛び込んでくる。こういう時は、ひとりずつ入ってしまうと順番にやられてしまうため、同時に顔を出すのがセオリーだ。
しかし、敵からすると、教室に飛び込んだあとに「美波とナミ猫を探す」必要があるが、二人は入り口が限られるために敵の位置がすぐに掴むことが出来る。
この一瞬の差が勝敗を大きく分けた。
それぞれがひとりずつ敵を撃ち、敵をダウンさせる。残りひとりがナミ猫を発見して発砲するが、美波の持つP90はマガジン容量最大50発、リロードを挟まずに狙いを変えて最後の1人を撃ち抜く。
銃声が鳴り止んだ教室に静寂が訪れる。手榴弾の爆発から5秒にも満たない決着だった。
「危なかった〜サンキューミナズキちゃん」
「どうも」
コメント欄には賞賛の声が凄い速さで流れる。
「さてさて装備をいただきましょうか」
静かになった教室で死体から武器を漁る。これぞバトロワゲームというものである。
このゲームの舞台は、地中海に浮かぶ小島をテーマした架空の島だ。町並みや建物も欧風になっているので、教室の風景も海外映画のように見える。
装備を整えた2人だが、マップを見るナミ猫の隣で美波はボーっと黒板を見ている。何かが書かれているわけではないのだが……。
「どしたの?黒板に何かあるの?」
「いや、明日日直だなって」
「え……?」
「ちょっと!?」
椅子を倒しかねない勢いで英美里が立ち上がる。その姿を見て美波はハッとする。
「高校生って言っちゃいけないんだった」
「ミナズキちゃん!?言ってる言ってる!」
「あ」
:あ
:草
:JK?
:草
美波の顔から血の気が引いて真っ青になる。英美里の方を見てフリーズ。
「やばい」
「いいから。言っちゃったものはしょうがないから、落ち着いて」
あくまで、身バレ防止の為に個人情報を口に出さないという意識付けだ。高校生とバレたぐらいで家まで人が押しかけてくるわけはない。まだ大丈夫。慌てる時間じゃない。
「あ、車の音だ。こっちくるよ」
「ちょっと!フリーズしないで。大丈夫だから」
英美里が背中に手を当てて落ち着かせるが、思考停止中の美波は再起動しない。ゲームではどんな状況でも冷静さを失わない美波だが、現実世界ではすぐにポンコツになってしまう。
:落ち着け
:草
:敵やぞ
:えみりちゃんなんとかして
「あ、来てるよ。ミナズキちゃん?大丈夫?」
全然大丈夫ではない。英美里の方を向いて泣きそうな顔をしている。
スタングレネードが立て続けに投げ込まれ、視界が真っ白になり周囲の音も聞こえなくなる。もちろん機能停止中の美波に対応できるわけがなく……。
「あ、死んだわこれ」
ナミ猫の呟きとともに銃弾の嵐が二人を襲い、最初のマッチは5キル18位での終了となった。
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