逆恨み《グレイソン side》①
「────ダニエル様、最初で最後の警告です。今すぐ魔法を解除し、投降してください。今なら特別に見逃して差し上げます」
譲歩する姿勢を見せたシャーロット嬢は硬い表情を浮かべ、一歩前へ出る。
通常なら、殺傷能力の高い魔法を発動した時点で処罰を与えられるのだが、彼女は穏便な方法で済ませたいみたいだ。
助かる道を示した紫髪の美女に対し、紺髪の男はクツリと笑みを漏らす。
「ここまで来て、投降なんてする訳ないだろ!」
その言葉を合図に、ダニエルは顕現した炎の槍を一斉に放った。
その矛先にはシャーロット嬢の姿があり、殺す気満々なのが分かる。
────だが、今回は相手が悪過ぎた。
「《バリアサラウンド》」
飛んでくる炎の槍を前に、シャーロット嬢はただ冷静に結界魔法を展開する。
彼女の前に立ちはだかる半透明の壁は一旦炎の槍を全て受け止めると────突然大きくなった。
ムニョーンと伸びるように広がるそれは途中で角度を変え、炎の槍を包み込むように丸くなる。
燃え続ける槍を内側に閉じ込めた球体型の結界は『素晴らしい』の一言に尽きた。
完全に外部からの干渉を遮断しているのか、使用出来る酸素を制限された槍が徐々に小さくなっていく。
やがて、結界の中の酸素が完全に尽き、フッと炎が消えた。
さすがはシャーロット嬢と言うべきか……周りに一切被害を出さずに炎の槍を消してしまった。これは誰にでも出来る事じゃない……。
普通なら水魔法で相殺するところを水蒸気爆発を心配して、結界で受け止めた。そして、万が一にも周りに火の粉が飛び散らないように結界で包み込み、外部の干渉を完全に遮断する。
そうすることで周りへの被害を抑えると共に、炎の鎮火を測ったのだ。
「見事だな」
「恐れ入ります」
率直な感想を述べる俺に、シャーロット嬢はペコリと小さく頭を下げる。
驕り高ぶらず、謙虚な姿勢を貫く彼女には好感が持てた。
捕縛用の魔法陣を用意する彼女の前で、ダニエルはただ呆然と目を見開く。
「う、嘘だろ……?中級魔法だぞ……?それをいとも容易く打ち消すなんて……!」
『有り得ない!』とでも言うように首を左右に振るダニエルは動揺を隠し切れない様子だった。
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