逆恨み《グレイソン side》②
シャーロット嬢との実力差を悟り、ダニエルは数歩後ろへ下がる。
これでようやく、決着がつく────かと思いきや、ダニエルはまだ足掻いた。
「……僕が子爵家の小娘ごときに負けるなんて有り得ない……こんなの絶対に間違っている……。だから────僕がお前より秀でていると証明してやる……!」
現実を受け入れられないのか、紺髪の男は半ばヤケクソになりながら、手を前へ突き出した。
怒りと言うより、焦りに近い表情を浮かべ、魔力を高める。
腐ってもコリンズ家の次男と言うべきか、それなりに魔力量は多いようだ。
中級魔法を撃ったばかりだというのに、まだこんなに魔力が残っているのか。完全に宝の持ち腐れだな。
『勿体ない』と呟く俺を他所に、紺髪の男は大きく息を吸い込む。
魔力の高まりに応じて発生した緩い風により、紺色の短い髪がふわりと舞い上がった。
「黒き炎の煉獄 闇を孕む影 立ちのぼる陽炎 純黒を欲する我は世界の破壊を望む者なり 今こそ地獄の炎を解き放ち 世界を混沌へと導こう」
なっ……!?長文詠唱!?ということは、まさか────上級魔法か!?
フリューゲル学園でも扱える者が少ない上級魔法をただの喧嘩のために使うつもりか……!?正気を疑う行動だな……!まともな人間とは思えない……!
いや、それよりも今はあいつを止めなくては!こんなところで上級魔法を放たれたら、学生同士の喧嘩では済まなくなる!
最悪の事態を想定し、信号弾を打ち上げようか迷うが……今はそんな時間すら惜しかった。
『魔法の発動を阻止するために手首を切り落とすしかない!』と判断し、急いで抜刀する。
漆黒の剣を片手に、ダニエルの元へ駆け寄ろうとする俺だったが────シャーロット嬢の方が少し早かった。
身体強化でも使ったのか、彼女は軽やかな身のこなしでダニエルの元へ行き、彼の腕を掴む。
「《テレポート》!」
「《デスフレイム》!」
紫髪の美女と紺髪の男はほぼ同時に詠唱を口にし────俺の前から消えた。
その直後、上空からドカンッと派手な爆発音が轟く。
嫌な予感を覚えながら、空を見上げれば────黒い煙と真っ赤な炎が見えた。
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