第125話 魔王を倒すのを辞める?
「ゆ、優勝は......マコト選手!」
ボロボロの黒服は細々とした声で私の優勝を宣言した。
会場からは盛大な歓声が上がる。
いろいろと闘技大会として残念な試合もあったけれどそれなりに観客も楽しめてくれたのだろう。
「さすがわしの一番弟子と言ったところだな」
王様は会場の入口の柱にもたれかかりながらこちらを見て言った。
......勝手に弟子にしないで欲しい。
「マコト君、おめでとう。君の優勝だ」
ユウが私に手を差し出したので、私はその手を握った。
「ユウだって本気出してないでしょ?」
「え、うん。まあね。私の本気は人間相手に使うものじゃないしね」
やっぱりユウは本気で戦ってなかったようだ。この人にならもしかすると――――
「私の代わりに魔王を倒してくれないかな?」
と私が言ったのに対して、
「魔王を倒すのを手伝ってくれないか?」
とユウが私とほぼ同時に言葉を口にした。、
「「え?」」
私とユウはお互いに顔を見合わせる。
「えっと.....お互いに何を言ったかもう一度確認してもいいかな? マコト君は何て言ったの?」
ユウは自分の顔を手で押さえながら尋ねた。
「私の代わりに魔王を倒してくれないかなって......なんだか成り行きで魔王を倒す感じになったけど、いざ会いに行こうと思ったらやっぱり怖くて。そもそも魔王を倒すのって勇者の役目だし! 私みたいな一般人がやることじゃないよ」
「そっか......そうだよね。でも、私は正確には勇者じゃないんだ......先代魔王にすら勝てなかった“元”勇者なんだよ。だから私と一緒に戦ってくれる新しい勇者が必要なんだ」
ユウの言う先代魔王......ああ! ローズのことか。あの人も結構強かったもんね......
「仕方がない......君と一緒に戦えないのは残念だけど、この大会に強い人が他にも居たからその人たちに声をかけてみるよ。次に会う時には魔王を倒した本当の勇者になってくるよ」
ユウはそう言って右手を上げた。
私はこの時その手が少し震えているような気がしたけど気付かないふりをした。
......しょうがないじゃない。私だって怖いよ......
「マコトさん......」
カーミラは私の名前を呼んでギュッと手を握りしめた。
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