第123話 痛み

『聖剣デュランダルを所持していない状態で敵対勢力を感知しました......固有魔法[フィジカルアビリティアップ]を発動します』

 システム音のようなものが聞こえると体がかなり軽くなるのを感じた。

「行くよ! マコト君!」

 ユウは一気に距離を詰めてくる。そして私の腕を掴んで投げ飛ばすと私の体は宙を舞った。

 ッ! まさか......衝撃を伴う攻撃じゃないから跳ね返せないってこと!? ......あ、でも別に負けてもいいか。

「やっぱり、君も違うのか......」

 私は宙を舞いながら声のほうを見るとユウは冷たい目でこちらをじっと見つめていた。まるで先ほどまでの明るいイメージとは全く違う人のようだ。

『固有魔法[フィジカルアビリティアップ]中に地面から足が離れて3秒経過しましたので固有魔法[オートレビテーション]を発動しました』

 システム音のようなものが聞こえると私の体が落下せずその場に留まった。

「......おい。あれ浮いてねぇか?」

「間違いねぇ......浮いているぞ」

 観客たちが私を指差して驚きの言葉を口にしていた。

「へぇ......すごいね。そんなこともできるんだ......それじゃあまだ戦えそうだね」

 ユウは私のことを見上げるようにこちらを見た。そしてものすごいジャンプで空中にいる私に近づいてきた。

「君の盾と、私の矛......どちらが強いか勝負しよう。攻撃力100倍!!」

 ユウの言葉と同時に手が光り出した。そしてそのまま光った手でガードした私の腕に一撃を加えた。

「......痛っ! え? 痛い?」

 その痛みはそれほど強いものではなかったけれどこの世界に来て初めて痛みを感じたのだ。

『固有魔法[フィジカルアビリティアップ]中に敵からの攻撃を受けたため固有魔法[オートリベンジカウンター]を発動しました』

 システム音のようなものが聞こえた瞬間にユウの体が吹っ飛ばされた。

「防御力100倍!」

 ユウはそのまま防御姿勢を取って地面に叩きつけられた。

 今更突っ込むのも何なんだけど......ユウって私と同じで異世界から来た人だよね? だってなんか魔法みたいなの使ってたし......

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