第118話 怒っちゃった

 王様に続いてハイレグ男も闘技場の上にあがった。

「み、皆様お待たせしました! 次の選手の準備が整いましたので試合を開始します! それでははじめ!」

 黒服の掛け声とともに王様は天に向かって指をさした。

「この勝負わしの華麗に勝つところを皆に見せよう!」

 相変わらず王様は自信満々に語り始める。

 ここまで自信満々な態度を見せられるともしかしたら王様は強いんじゃないかと淡い期待を持ってもいいのかもしれない。いや......そんなわけないか。

 私はそんな王様の態度を見て少し笑みを浮かべた。

「フン......汚いおやじ。触るのも嫌だわ」

 ハイレグ男はゴミを見るような目で王様を見下ろした。

「余裕を持っていられるのも今のうちだけだぞ! うぉおおお!!」

 王様はすごい気迫でハイレグ男に近づくが、ひらりとハイレグ男はかわした王様の足に蹴りを入れた。

「ぐぉおおお!! わ、わしの足がぁ!」

 王様が自分の足を押さえてうずくまる。

 そう、王様の足はあり得ない角度で曲がっている。ここから見ただけでもわかる間違いなく骨が折れている......

 ハイレグ男は王様に近づいくと追い討ちをかけるように今度は腕を踏みつける。

「あたし、汚いおっさんは嫌いなのよね。見てるだけで! ......本当に! ......ムカムカしてくるわ!」

「ぐふっ......うぐっ......がはっ」

 ハイレグ男は王様の腕を踏みつけたまま逆の足で数回にわたってお腹を蹴り続けた。

「ひどい......」

 カーミラは私の横で口元を手で押さえながら涙を流した。

「あの......キング選手......ギブアップされませんか?」

 黒服もこの状況はやばいと思ったのか王様に声をかけた。

「ま......だ......負け......て......ない」

 王様は苦しそううな表情でゆっくりと答えた。

「そう。だったらまだ遊べそうね!」

 ハイレグ男は場外に向かって王様を思いっきり蹴り飛ばす。

 よかった......これで王様の場外負け。

 しかし、私の期待は裏切られた。ハイレグ男は王様が場外に落ちる前に回り込んで今度は場内に向かってさらに蹴り飛ばしたのだ。王様はもうボロボロ、まいったを宣言することもできないかもしれない。

「それじゃあトドメといこうかしら......グッバイ! おっさん!!」

 ハイレグ男が王様に向かって踏みつけるように足を降ろした。

「やめてよ......」

 私は体が勝手に動いて闘技場の上でハイレグ男の足を掴んでいた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る