第111話 負けるって話だったよね?

 しばらくするとアヤナと巨漢の男が戻ってきた。

「マコトさん! 私勝ちましたよ!」

 アヤナが嬉しそうに満面の笑みで戻ってきた。

「いや......何で勝ってんの? 負けるって話だったと思うんだけど......」

 私はすかさずそう突っ込まずにはいられなかった。

「え? そうでしたっけ?」

 アヤナの頭はニワトリと同じで3歩歩くと忘れるようになっているんだろうか?

「うぅ......おらがまさか1回戦で負けるなんて......」

 巨漢の男は分かりやすいくらいに部屋の隅で縮こまって座っていた。

 ......可哀そう過ぎて声をかけられない。

 そんなことを考えていると私の代わりに王様が巨漢の男に近づいて声をかけた。

「お主は強い......だがまだまだ訓練が足りんようだ。もっと力をつけてもう一度このわしに挑戦するといい」

 いや......別に王様と戦ったわけじゃないんだけど。

「あんたいい人だな......おで決めたど! もっと訓練して挑戦するど!」

「よし! その意気だ! いつでもお主の挑戦を待ってるぞ!」

 何これ? というか何で巨漢の男のほうも突っ込まないの?

「それでは次の試合を開始します! 3番と4番の選手! 準備をお願いします!」

 黒服の掛け声でフードをかぶったすらっとした人とスキンヘッドでボディビルダーのような体をした男が闘技場へと向かった。

 あの体格差だとどう考えてもスキンヘッドのほうが勝つだろうな。見るからにかなり強そうなのが分かる。

 だけど試合が始まると予想に反して一瞬で勝負が決まってしまった。

 そう......フードのほうがスキンヘッドを腕を掴んで場外に投げ飛ばしたのだ。

「なかなかやるな......あやつも!」

 王様は感心したように呟いた。

 王様......いい加減もう突っ込まないからね。

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