第103話 着いて来てほしくないんだけど

 どうやらホームレス仲間に入れて欲しいから王様に会いたいと勘違いされたようだ。面倒になったな......

 しかもこっちの当初の目的は強い仲間を探すこと。王様何て仲間に入れても絶対に役に立たない。

「すみません。人違いだったみたいなので私たちはこれで!」

 私は背を向けてその場を去ろうとした。

「まあ、待て。遠慮するな。わしはお主たちに助けてもらった身、今こそその恩を返そう!」

 王様は私の肩に手を置いて誇らしげに言った。

 ......恩どころか迷惑以外の何者でもないけど。

「いえ、本当に結構ですから」

「遠慮深いやつだな。わしは心が広いからそんなこと気にしないぞ」

 必死に手を振り払おうとしたが執拗に何度も肩に手を置いて引き留める。

 仕方がない......いっそ正直に話をして解放してもらおう。

「実は私は魔王と共に闘う仲間を探しているんです......『キング』が強い人かもって思って尋ねてきただけなんですよ」

 これで解放してもら......

「そうか、ついにわしも戦う時がきたということか......」

 王様は立ち上がって準備運動を始めた。

 いや待って......冗談でしょ? 魔王軍幹部に手も足も出ない王様が魔王と戦えるわけないでしょ!! ともかく断らないと死人が増えるだけだ!!

「ほらここにいる人たち王様のこと尊敬しているみたいですし、王様がいなくなるとこの人たち困ると思うんですよ」

「『キング』! 行ってください! 俺たちは『キング』の足かせにはなりたくないんです」

 案内してくれた男は余計なことを言い始めた。

「タケゾウ......お前ってやつは......わしは皆のためにも魔王を倒してみせる!」

 王様は涙ぐみながら案内してくれた男(どうやらタケゾウというらいしい)の肩を掴みながら言った。

 何だろうかこの茶番は......早く帰りたいんだけど。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る