第93話 キャラ崩壊

「あの......聞き間違えだと思うんだけどさっき降参って言った?」

 私はローズに問いかけた。

「ああ、言ったぞ......というかこの魔王軍幹部っぽいしゃべり方疲れるわね。今からは普通にしゃべらせてもらうわね」

 なんだこの人自らキャラ崩壊を宣言したんですけど......でも戦意がなくなったのは本当そうだ。事実、今は敵意が全く感じられない。

 ローズはそのまま話を続けた。

「ごめんなさい。あなたの実力が知りたくて試させてもらってたの。あなたの実力は分ったから私の話を聞いてもらえないかしら」

「えっと、別にいいけれど......」

 向こうの2人(アヤナとカーミラ)の言い争いも続いているみたいだし話しくらい聞いてあげよう。

「実はね......私は元魔王なの」

 何だって!? 元魔王!? どうりで強いわけだ。他の魔王軍幹部みたいにあっさりとは倒せなかったわけだ。

「それでどうしてその元魔王が私の実力を試していたの?」

「今の魔王を倒せる可能性があるかを確認したかったからよ。今の魔王はとても強いの......私よりも圧倒的にね。普通の人間じゃ絶対に倒せないわ」

 もしかしてその強い魔王に人間たちが殺されないように、門前払い的な意味でローズは人間と戦っていたのかもしれない。たぶん今までもさっきみたいに手加減して戦っていたのだろう。

「今、話をしているってことは私なら勝てる可能性があるってことでいいのかな?」

「ええ。そう思っているわ。でも気をつけて......魔王は男なのに男が好きなの。特にあなたみたいに顔がいい男がね! 別の意味で襲われる危険があるわ!」

 超真顔でとんでもないことを言い出した。

 言っていることはまったくもって冗談にしか聞こえないけど......男なのに男が好きとか......だからそれ私もじゃないか!? この突っ込みを入れるのは2回目だ。

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