第52話 おかえり

「とりあえず。もう1回落ち着こうか」

 私は再びアヤナを受付のお姉さんから引きはがした。

「ところでカーミラはいくら貰ったのよ?」

 アヤナは悔しそうにカーミラに尋ねた。

「僕ですか? えっと......言いにくいのですが5万ゴールドですね......」

「なんでよ! あんただって役に立ってなかったじゃないの!」

 アヤナの攻撃の標的が受付のお姉さんからカーミラに移ってしまった。

「落ち着いてアヤナ! 私の報酬少し分けてあげるから我慢してよ!」

「え? 本当ですか?」

 私の提案を聞いてアヤナの目がお金マークになったように見える。まあでもお金で解決するだけまだましと思うべきか。

「ところでマコトさんはいくら貰ったんですか?」

 カーミラが私に少し申し訳なさそうな顔で聞いた。

「500万ゴールドだよ」

「ご、ひゃく......まん......」

 アヤナが若干引き気味に驚いていた。しかし、すぐに様子を変えて私に近づいてくる。

「マコトさまぁ~」

 甘ったるい声で私に胸の脂肪を押しあててきた。

「アヤナぁ、欲しいバッグがあるんだけど買って欲しいなぁ~。マコトさまの報酬の1割のお金があれば買えるんだけどなぁ~」

「じゃあ頑張って貯金しないとだね。はい、さっき言ってた少し分けてあげる。報酬の一部の......はい、1万ゴールドあげる。これくらいで妥当でしょ」

 私は小切手を換金する前だったので財布から1万ゴールドを渡してギルドを後にして出て行こうとした。

「そんなぁ! というか置いてかないでくださいよぉ!」

 アヤナが半泣きで私の後について走ってきた。

 その後まずはチカちゃんに早く顔を見せてあげようと思いカーミラの家に向かった。

「ただいま」

「おかえり。お兄ちゃん!」

 満面の笑みでチカちゃんは私たちを迎えてくれた。

 両親の行方が分らないのにチカちゃんはたくましいな。

 お金もたくさん手に入ったしこれからしばらくはチカちゃんの親捜しをしようかな。

 そう、このときは考えていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る