第33話 悪魔の目覚め

 王様が相手ということもあり断ることもできずしぶしぶ私は後についてく。

 先ほどのおばあちゃんのところまでたどり着くと王様は偉そうに私に命令をする。

「さあわしが誰だか教えてやるのだ!」

 仕方なくおばあちゃんに王様のことを教えるのだった。

「この方は一応王様なんです......」

「一応とはなんじゃ。れっきとした王じゃ。まあよい老婆よ。王様なのだから金など払わずとも泊めるのじゃ!」

 本当に何という暴君なのだろうか。共犯者だと思われたくないから逃げ出してもいいなら今すぐに逃げたい......

「100歩譲って王様だと認めたとしてもお金を払わずに泊めろというのは少し横暴じゃないですかえ?」

 おばあちゃんはとても正論なセリフを言った。だって私もそう思うもの!

 だけど王様の方もぜった引く気ないよなぁ......

「はぁ......しょうがないか」

 私はいやいやながらもう5人分のお金をおばあちゃんに手渡した。

「これでもう1部屋貸してもらえませんか?」

「あいよ......お前さんもなんだか大変だの」

 おばあちゃんは私の耳元まで顔を近づけてこうつぶやいてくれた。

「今晩の夕食はサービスしておくけぇの」

 部屋の鍵をおばあちゃんは渡してくれた。

「あ、ありがとうございます」

 このおばあちゃんすごくいい人だ。どこぞの暴君とは大違いだよ。

 私は王様に部屋の鍵を渡したあと一礼をして部屋に戻った。

「マコトさん、何かあったんですか? さっき王様に連れて行かれたみたいですけど......」

 ヤクモは私の様子を気遣って尋ねてきた。

「気にしないでよ。大したことじゃないから」

 王様との手切れ金と思えば1泊の宿だいくらい安いものよね。

 私は再びソファーに腰掛けると嫌な気配を背後から感じた。

「おはよう。アタシの旦那さま......」

 レイラが起きてしまったのだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る