第32話 宿屋に泊まる
王様たちにだだをこねられても面倒なのでとりあえず近場の街まで護衛することにした。
もちろん無一文の王様を護衛するのだから報酬はなしだろう。
私たちもさすがに歩いて帰るには距離があるのでその街で馬車を借りるつもりなのだ。
「マコトさん。街が見えてきましたね!」
ヤクモは前方に見える小さな街を指差しながら言った。
「今日はあそこで一泊して明日帰ろうか」
「はい! 了解です。マコトさん」
街に着くと早速宿屋に向かった。
「いらっしゃい。何名様だい?」
宿屋の受付にいたおばあちゃんは私たちに人数を確認する。
私、ヤクモ、アヤナ、チカちゃん、レイラの5人だな。
「5人のお部屋ありますか?」
「5人でいいのかい?」
「え? それはどういう?」
「だってほら」
おばあちゃんは私たちの後ろを指差す。その方向を目で追っていくと王様家族が後ろにいたのだ。
「王様......まだ後ろについて来ていたんですか......」
私はため息交じりに呟いた。
「わしらの部屋はスイートルームか?」
少し楽しそうに王様は話している。しかし、実際には無一文の王様は一般の部屋にも泊まれないからね。
「後ろの人たちは別なので私たちの分だけ部屋を貸してください」
そう言って私は5人部屋の一泊分の料金を払った。
「はいよ。205号室ね」
「ありがとうございます」
私は部屋の鍵を受け取りそのまま案内された部屋まで行きドアを開ける。
少し埃っぽいがゆっくりとできそうな広い部屋だった。
「わーい」
チカちゃんは真っ先にベッドの上に飛び乗ってトランポリンのように跳ねて遊びはじめた。
ヤクモはレイラをベッドに寝かせ自身はそばにある椅子に座り、アヤナはベッドの感触をたのしむようにゴロゴロ転がっていた。
各々くつろぎ始めたので私も少し休もうと部屋にあったソファーに腰掛けた。
同時に部屋のドアが勢いよく開かれる。
「マコトというもの! この宿の者が『お前さん......本当に王様なのですか?』と言って信じてくれないんじゃ。お前からも何か言ってくれんか?」
言うって何を? こちらは王様だから無料でスイートルームを貸し出せと脅迫するの?
嫌だよ。そんな悪党みたいなマネは......
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