第31話 無事脱出できた
「マコトさん! 無事だったんですね!」
アヤナは私のもとへ駆け寄ってくる。
「心配してくれたんだ。ありがとう。それからチカちゃんのことも」
「マコトさんのためにあのクソガ......チカちゃんを守ってあげてましたよ」
ねぇ? 今さっきクソガキと言いかけなかった? 絶対言いかけたよね?
「マコトと言ったな。褒めてつかわすぞ。わしを守った褒美をいくらでも出そうじゃないか」
王様はふいに後ろから声をかけてきた。
ところで手ぶらで城を捨てて逃げてきたわけだからこの王様......というかこの家族全員一文無しじゃない?
いくらでもどころか何も出せないよね? 着ている服は渡せるかもしれないけどそんな追剥みたいなことしたくないよ......
チカちゃんのこと王様に相談しようと思ってたけど我が身の心配をするだけで手いっぱいな人に相談してもな......どうしたものか。
私はチカちゃんの目線にまでしゃがみ込んだ。
「チカちゃん、やっぱりしばらくうちに来る? お父さんやお母さんにしばらく会えないけれどいつか探してあげるから」
「うん。お兄ちゃんと暮らす!」
「私も暮らす!」
アヤナもなぜか割り込んで話しかけてきた。だが私の返事は決まっている。
「アヤナと暮らす気はないよ」
「そんなぁ......」
アヤナはガクっと頭を下げて沈んだように落ち込んでしまった。
私はアヤナちゃんの手を引いてこう言った。
「それじゃあ帰ろうか。ヤクモ、アヤナ、チカちゃん」
今度こそ安全に快適に暮らしてみせる。私は小さな決意を胸に一歩歩きだす。
「ちょっと待ってくれんか? わしらはここに放置?」
後ろから王様に呼び止められた。
「もう魔物はこのあたりまでは襲って来ないと思いますからいいかなと思いまして」
「ダメに決まっているじゃろう! なんて言ったってわしはこの国の王様だぞ! 護衛もなしに歩けるはずなかろう?」
あなたの言うこの国はもうありませんよ。王様......
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