第29話 王様たちを解放する

「さすがマコトさんだ......俺にはいったい目の前で何が起きたのかは分らないが、一方的にマコトさんがやつを倒したのは分かる」

 ヤクモは顔から汗を流しながら驚いた表情でこちらを見ている。

「ヤクモ! 王様たちの縄をほどいてあげよう」

「あ、ああ......そうですね」

 ヤクモは私の言葉で我に返ったかのように王様たちのもとへ向かい縄をほどき始める。

 私も一緒に縄をほどいて全員の縄をほどいたところで王様が口を開いた。

「ありがとう。助かったよ......お主はこの国の英雄じゃ。そうじゃバランに褒美を持って来させよう」

「あの、王様......残念ですがもうこの国は終わりだと思いますよ......街はもうすでに壊滅しています」

 私は王様に残酷な事実を告げた。今言うべきだと思ったからだ。

 というかバランさんもどっか行ったからもういないし。

「何じゃと......」

 王様は絶望のためかそのばに尻もちをついてしまった。

 私には想像できないけど自分の国がなくなるのってやっぱり心苦しいんだろうな。

「くそう! それじゃあ、わしこれからどうやって豪遊生活を送ればいいんじゃ!」

 地面を拳で叩きつけ王様は悔しがっていた。

 前言撤回......この王様もダメなほうの人間だ。

「そうです! 私にパンじゃなくてケーキを食べろと言うんですか?」

 王妃様はマリー・アントワネットの名言みたいなことを言っている。

 一応心の中で突っ込むけど......ケーキも食べられなくなるんですよ!

「えっと......とりあえず魔物たちが来る前に逃げませんか?」

 私は王様たちに提案する。

「そうだな。護衛をお願いできるか?」

「はい。任せてください」

 私はそう言って魔物たちが出てこないことを祈りつつ城を後にするのだった。

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