第8話 撃退魔王軍幹部

「ほぅ......なかなか強そうなやつだな」

 私はゴルドーの目の前に立つ。

 私がリナちゃんに教えてもらった唯一のBLの技......それは耳たぶ甘噛みだ。

 もっと凄い技をリナちゃんから聞いた気がするが、あまりにも意味不明すぎて私には理解できなかったから使えそうなのはこれくらいだ。

「その勇気に免じて1撃で殺してやろう!! ダークフレイムボール!!」

 黒い炎の球がかなりの速度で私に迫ってくる。

 よ、よけれない!!

『固有魔法[オートマジックカウンター]を発動します』

 システム音のような声が聞こえると私の周りにバリアが貼られ、そのバリアにあたった炎をそのままゴルドーに跳ね返した。

「ぎゃぁああああ!!」

「す、すげえ!! あの攻撃を跳ね返しやがった!!」

 周りにいる冒険者たちが驚きの眼差しで私を見ている。

「な、なかなかやるじゃないか......はぁはぁ......」

 ああ、よかった。ゴルドーの顔のほうにはあんまり被害がないな。顔が傷だらけだと絵にならないもんね。

 しかし、服が破けていると逆に腹筋がチラ見えしててこれはこれでいいな......

「なるほど......魔法が効かないということか!! それなら!!」

 ゴルドーは私の方に近づいて来て、両手で私に掴みかかってくる。

 私はそれを受け止めると両手を握りあうような体制になった。

「チャンスだ!!」

 私は一瞬のその隙を見逃さなかった。

「ハムッ」

「はぁあああん!!」

 私は耳たぶを甘噛みすると気が抜けたようにゴルドーはそのまま地面に倒れこんだ。

「な、何だ今の技は!! あんな強そうなやつを骨抜きにしやがった!!」

 冒険者たちの歓声が上がる。

「くっ......こんな辱めを受けるなんて......お、覚えていろぉおおおお!!」

 ゴルドーは泣きながら逃げていく。イケメンは泣いている姿もいいねえ。

「マコトさん、何で逃がしたんだよ......」

 ヤクモがそう尋ねるとコックのおじさんがなぜか隣に立っていてその問いに答える。

「お前さんには分らないのか? 他の魔王軍幹部や魔王に警告するためさ。『次はお前の番だ覚悟しな』ってな。生きて帰ってもらえなきゃ伝えられねえだろ」

「ば、馬鹿な。何て頼もしい方なんだ、マコトさん!!」

 尊敬のまなざしでヤクモは私を見た。

 すみません。ただ見とれてただけです......

「ところで、魔王軍幹部はだいたいあんな感じなの?」

 私はヤクモに質問した。

「はい。そうです」

「そっか......」

 つまり魔王軍を倒すというのはイケメンたちと仲良くすればいいのね!!

 しばらくニヤケ顔のままになってしまった。

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