最終話 俺たちの戦いはこれからだ!

「もちろんです。アイネさん、あなたとの約束ですものね......ええっと、ダイスケさんは......ダイスケさんはっと......あれ?」

 ディオネ様は女神長の指輪を覗き込むように見た後に首をかしげた。

「どうしたんですか?」

 僕もディオネ様の女神長の指輪を見てみたが何も映っていない。おそらく女神長だけ使えるとかそういうアイテムなのだろう。

「ダイスケさんがどこにも居ないんですよ」

「は? いやいや、ディオネ様。ボケかましている場合じゃないですよ! いくらギャグ小説だからって状況を考えてよ。どう考えても今はシリアスシーンでしょ?」

 ディオネ様は僕の言葉にムッとした表情を少し浮かべたがいつも通り優しい表情に戻り口を開く。

「いえ、ボケているつもりはないです。私の担当する東のエリアにはダイスケさんの反応がなかったのです」

「マジ?」

「はい。おおマジです」

 僕とディオネ様の間に沈黙が流れる。

「いやいや! ディオネ様がダイスケ助けてくれるって言ったから今まで頑張ったのに何だよこの仕打ち!」

「そうだ! そうだ! 先輩はいっつもそう言って約束守らないんですよ!」

 僕の不満の声に便乗してアフロディテも悪口を言い始めた。

「アフロディテ! あなたはとりあえず黙ってなさい! ......コホン、ここで考えられる可能性をお伝えします。おそらくですがダイスケさんは私の担当エリア以外の場所に連れ去られたものと思われます」

「担当のエリア以外? よく分らないけどその担当者に連絡をとればいいんじゃないの?」

「いえ......そう簡単にはいかないんですよ。担当者と言うのはすべて私と同じ立場の女神長なのです。対等な関係である以上命令はできないですし、借りを作れば彼女らに何を要求されるか分かりません」

 ディオネ様は頭を抱えてうずくまってしまった。

 他の女神長って相当やばい存在なのだろうか......

「......ということで私には何もできることがありませんのでこの小説は最終回を迎えます」

 ディオネ様は立ち上がって指を立ててニッコリとほほ笑んだ。

「そうか、そうか、最終回......ってえぇ!? ダイスケを助けて終わるんじゃないのこの小説!?」

「いえ、これで終わりのようですよ」

 ディオネ様が不思議そうな顔をして、どこから取り出したのか台本のようなものをめくって確認していた。

「え? いやちょっと......」

 僕は必死に手を伸ばす中ディオネ様の最後のセリフを言うのだった。

「『俺たちの戦いはこれからだ!』ですよ!」

 よくある終わり方だけどいいのかこれ! あとさ! 僕の名前公表されずじまいなんだけど!



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